「だって、イノシシは自然に生きているでしょ。
最近は、お肉屋さんで買ったお肉も、
どんな育て方されているのか、
何を食べて育てられたか、
わかんないものが多くて信用できないわよね。」
似たような話を
他でも聞いた気がする。
食べ物好きのイタリア人の
こだわりを語らせたら、
途切れることのない会話。
「スーパーで、1ユーロとかで売られているパネットーネあるでしょう？
あれ、何が入っているかと思っちゃうわ。」
値上がりが続くイタリアで、
必要以上に安いものたち。
確かに、そうだわ…と思う。
美味しいと噂される
パスティッチェリアのパネットーネなんかは
普通に
30ユーロとか、50ユーロとかで売られている。
今年は、バターが非常に高いんだそうだ。
「バターの代わりにマーガリンを使ってるところもあるそうだから、気をつけたほうがいいよ。」
とは、
別の人から聞いた話。
買う前に、ちゃんと考える必要が
ある気がする。
「で、どっちのソースが良いの？」
手打ちパスタ屋さんのおばちゃんが聞いてきた。
「あ、イノシシの方で。」
「そうよね、こんな話したら、
そう答えるしかないわよね。
正解だわ。」
笑いながら、おばちゃんが渡してくれた。
気がつくと、
後ろには長蛇の列ができていた。
イタリア人のこだわりを聞くのも、
満更ではない。
かくして、
手打ちのピチとイノシシ肉のミートソースを
美味しくいただいた
2022年のクリスマスの夜は、
こうして更けていった。
