あの子には二度と会いたくない。逮捕されて警察に留置されていた永い日々のさなか母親が私に言った言葉だった。それでも、母親として「あなたのことは心配しているから、お母さんはあなたが立ち直ることを信じているから」と2度ほど手紙を書いた。その言葉が聞こえたのか「ご迷惑かけて済みませんでした」と返事が来た。これで良かったのですか?と連絡があった。そして、数日が過ぎた今週の月曜日裁判が始まった。前日、母親から電話があり、やはり母親としてけじめをつけたいので裁判に出席してみたいと電話があった。私が「お母さんあなたがしたいこと。あなたが思うことをそのまま素直に出しなさい。行きたければ行ってあげなさい」と答えると母親は電話口で泣きながら「ありがとう」と言っていた。
懲役1年7ヶ月の求刑。入口から傍聴席を見上げると母親と被告の長女が目に入った息子は一瞬驚いた表情の眼をしていた。静かに頭を下げて被告席に座った。鋭い目つきで見つめる母親の前で裁判は進められ、前記の求刑が出て終了。引き上げるとき係員の手をそっとよけて母親に対して深く頭を下げて引き下がっていった。(裁判の中身は書けない)
その日の夜母親から電話があった。行こうか行かないか迷ったがやはり行って良かった息子も静かに反省していた様子で今後実刑が予想されることも驚かないで聞くことができる。今度こそはと反省し立ち直り事を願う電話の声は母親の声そのものだった。あれほど息子を嫌っていた母親、二度と会いたくない、自分の息子とも思わないと激しい声で言っていた時の母親の姿は電話口で聞こえてこなかった。やっと母親になれたね、素直になったときの母親はすがすがしい声だった。今月中に結審。たぶん実刑だと思う。だめな息子でも立ち直るきっかけを裁判所できっと見つけたに違いない。ありがとうかあさん・・・・てね