私がまだ若く、保育士をしてた頃。
4月から、4歳児の担任になった。
その前、3月に、そのクラスの前担任から子どもの様子の引継ぎがある。
一人一人について、発達の具合や好き嫌いや特徴などを聞く。
前担任は、保育経験25年以上のベテラン先生だった。
そのクラスには、今で言う、発達障害の疑いのある男の子がいた。
仮に太郎くんとする。
言葉はオウム返し。
室内ではゴロゴロ寝転んでいることが多く、友達との関わりはほとんどない。
時折パニックを起こすことがある。
太郎くんについては、特に丁寧に様子を聞いた。
ベテラン先生は言った。
「太郎くんの隣の席には、花子ちゃんにするといいわよ。
花子ちゃんは、穏やかだし、とっても面倒見がいいし。
頼りになるのよ。」
そうか!なるほど・・・ いいことを教えてもらった。
まだ経験の浅かった私は、いいアドバイスをもらったと思った。
発達障害の疑いのある子どもを一人で担当するのは初めてで、不安もあった。
太郎くんも気になるけれど、ほかの子ども達もいる。
集団の中で、太郎くんにも対応しなければならない。
一人で、両方きちんと見ていけるだろうか・・・
そんな中でも、ベテラン先生のアドバイスは、とても心強く感じた。
そうか、一人で見るんじゃなくて、子どもにも見てもらえばいいんだ。
4月になり、保育室の準備は整った。
私は、太郎くんの隣に花子ちゃんを配置。
一人一人のマークのシールを貼って、新学期を迎えた。
初日。
親子で登園してきて、新しい保育室に入る。
靴箱・道具箱・着替え袋の置き場所、そして座席を確かめていく。
花子ちゃん親子もやってきた。
座席を見て、花子ちゃんのお母さんが言った。
「あら、花ちゃん、また太郎くんの隣だね。
・・・去年から、いつも太郎くんの隣だよねー」
お母さんは朗らかだったけれど、
私は、背中にサーっと冷たいものが流れたような気がした。
そうか、花子ちゃん、いつもずっと、太郎くんの隣だったんだ。
いつもずっと、太郎くんのお世話係、させられてたんだ。
ベテラン先生の言葉がよみがえる。
安易に、その言葉の受け売りのようなことをしてしまった自分が、本当に情けなくなった。
花子ちゃんが太郎くんの隣だって、そりゃ構わない。
そんなときもある。
でも、いつもいつも、そうだったら?
それは、助け合いとか協力じゃない。
ただの押し付けだよ。
花子ちゃんには、花子ちゃんの友達との出会いや関わりがあるべきで、
それは、どの子も同じ。
大人の都合で、花子ちゃんの大切な機会を奪っていたんじゃないか?
自分が情けなく、腹が立ってしょうがなかった。
なぜなら、同じようなこと、私自身が経験してきたから。
*****
私が小学6年生だった頃。
私は、いわゆる「おりこうさん」だった。
ある時、クラスに転校生が入ってきた。A子さん。
担任のベテランの男の先生に「頼むな。」と言われた。
私は学級委員なんかもやっていたので、それでそう言われたんだと思った。
クラスのことを説明しようと、色々話しかけたけれど、なんだかヘンだった。
何を言っても、何の返事もない。
掃除の時、「机運んでね」と一緒にやろうとしたけれど、全然、動こうとしない。
算数の時間、6年生なのに3年生の計算ドリルをやってる・・・
何かヘンだと、皆気にし始めた。
そんな中、私は、あらゆるグループがA子さんと一緒にされられていた。
クラスの班も、宿泊体験のグループも、縦割り学級のグループも、
あらゆることが、A子さんと一緒の1年になった。
その1年間、何を話しかけても、A子さんから返事が返ってくることはなく、
結局、A子さんと会話することはできなかった。
まだ、子どもだった私は、それをそのまま受け入れるしかなかった。
何かヘンだと思いつつ、先生に問うこともできず、
辛いとか、大変だとか、感じることもできなかった。
後になって、A子さんは、知的障害などがあったんだなと理解した。
そして、担任の先生は、学習以外の諸々を、全て私に丸投げしたんだなと、自覚した。
何が正解だったのかは、わからない。
私だって、助けあったり、協力したりするのは、大事って思っている。
だけどそれは、全て、私一人で、背負うことだったのか?
担任に、体よく利用されてたんじゃないか?
そんな想いが、ずっと残ってる・・・
*****
こんな体験をしてきた私だったのに、
同じことを花子ちゃんに負わせてしまうところだった。
幸い、新学期初日に気付いたので、
当初は1学期中はこのままいこうと思っていた座席は、
1ヶ月ほどで席替えして、それから、色々な組み合わせを心掛けた。
でも、私の中では、本当に苦い思い出になってる。
大人の都合で、子どもに特定の役割を押し付けてはいけない。
面倒見が良くても、面倒見なくてもいいし、見てもらってもいいんだ。
どの子も、いろいろな友達を親しくなる機会が与えられるべきなんだ。
しっかりした子を、先生のミニチュアに仕立てちゃいけない。
自分を戒めてる。
同時に、
学級運営が上手とされるベテラン先生の中に、
「子どもの利用が上手」なだけの先生は混じっていないか?
得意げに、その方法を若手に伝授してはいないか?
私は、密かに、ずっと警戒してる。
そして、悲しいことに、時々、実際そういう先生に会ってしまうんだよね・・・
*****
花子ちゃんのこと、そして、この自分の体験。
この二つは、ずっとずっと心の片隅にあって、ジクジクとしていた心の傷。
今日、やっと、外にだすことができました。
もしも、もしも、何か心当たることのある方がいたら、
ちょっと振り返ったり、考えてみたりするきっかけになったら、
と、思って、書きました。
最後まで、読んでくださって、ありがとうございます。
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※わかっていただけてると思いますが、これは障害のある子をクラスに入れないでって話ではないです。全然。
大人の都合で、子どもを利用してはならないって話ですので。
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