Facebook投稿記事より㊴ーBroken BRICs by Foresight Report | 蓮華 with にゃんこ達

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専ら、マーケットや国内外の政治経済ネタが多くなってしまいました。
母と愛しい我が子達を護りつつ日々闘う中で思う事をアップしていきます。

http://www.foreignaffairs.com/articles/138219/ruchir-sharma/broken-brics

Foreign Affairs誌は、「文明の衝突」とか、注目されるような論文を載せますよね。これも、驚くべき内容では無いけれど、改めて正に、という指摘で、結構話題になっています。

●2000年以降、先進国は低成長で、新興国が高成長だった。中国がアメリカを抜き去るなどと言う事が、今では真面目に語られている。しかしここへきて、ブラジルやロシアやインドの成長率は低下している。そもそも高度成長が10年を超える事は滅多にない。低金利の金が溢れていた2000年代には、新興国経済が一斉に急成長して皆が勝ち組であるように見えた。が、これまでの10年が異常だった。でも世界経済は、ノーマルな状況に回帰しつつある。

●新興国と先進国が一緒になる、などというのは神話である。IMFがウォッチしている180カ国のうち、先進国は35カ国に過ぎない。そして1950年から2000年までは、双方の格差は拡大しつつあった。西側にキャッチアップ出来たのは、産油国と南欧、それにアジアの虎たちだけであった。

●それが2000年以降にキャッチアップが始まった。ところが2011年になってみると、先進国と途上国の一人当たり収入は1950年代の昔に戻っている。これが現実なのだ。1950年以降でいうと、年平均5%以上の成長を10年続けられた国は1/3しかない。それを20年続けられた国は1/4だ。30年以上となると1/10に過ぎない。そして40年続けたのはマレーシアとシンガポールと韓国、台湾、タイ、香港の6か国だけだ。かつてマレーシアとタイは、先進国になろうかという勢いであったが、1997-98年の通貨危機でこけてしまった。1960年代にビルマやフィリピンやスリランカが有望だった時代もある。向こう10年は、新興国の失敗が続くだろう。

●エマージング市場の概念は実は新しく、1980年代半ば以降である。台湾、インド、韓国などが矢継ぎ早に外資に門戸を開放し、1994年まではブームが続いた。新興国市場は世界の証券市場の1%から8%にまで急増するが、1994年のメキシコ危機でブームは終焉する。そして2002年までは途上国のGDPシェアは下落する。中国だけが例外だった。エマージング市場、などというのは、ほんの1か国で起きたに過ぎない。

●第2次ブームは2003年に始まった。新興国のGDPシェアは20%から34%に駆け上がった。2008年の国際金融危機の落ち込みは、2009年に大方盛り返したものの、そこからが低成長になっている。過去10年のような手軽なマネーと底抜けの楽観主義がなければ、新興国市場は今後は低迷する公算が高い。、

●BRICsという概念ほど混乱を招いたものはない。4か国に共通するものは殆どない。ブラジルとロシアは資源国、インドは消費国だ。中国を除けば、互いの貿易の結びつきも少ない。2000年代が例外であっただけで、1950年代のベネズエラ、1960年代のパキスタン、1970年代のイラクのような成長は、いずれも長続きはしなった。最近流行の経済予測は、中国とインドが世界のGDPの半分を占めていた17世紀を振り返って、「アジアの世紀が来る」と言っているようなものだ。

●向こう10年、日米欧は低成長だろう。が、中国経済もまた3~4%に成長は鈍化する。農村部の過剰労働力が消える「ルイスの転換点」はもう近づいている。中国がアメリカを抜き去るという懸念は、かつての日本がそうであったように杞憂に終わるだろう。中国や他の先進国の成長が減速すれば、ブラジルなどの輸出主導型成長も止まる。今後、新興国市場が一斉に伸びるということはないだろう。

●新興国市場の成長がばらつき始めると、国際政治も変わることだろう。西側は自信を回復し、ブラジルやロシアは輝きを失う。中国の統制主義的、国有資本主義の成功も怪しくなるだろう。人口動態による配当という考え方も疑問を持たれる。かつてはアジアは日本を、バルトやバルカン諸国はEUを、そしてすべての国がアメリカを目標としたものだ。しかし2008年危機はこれらのモデルの信頼性を失わせた。今では韓国のほうが日本より有望に見える。チェコやポーランドやトルコは、いまさらEUに入るべきかと悩むだろう。そして1990年代のワシントンコンセンサスは不人気になった。

●つくづくこの10年が異常であり、こんなことはもう起きないだろう。一人当たり所得2万~2.5万ドルの世界で、今後10年で伸びそうなのはチェコと韓国だけだ(※これは同意しかねるけど)。1万~1.5万で期待できそうなのはトルコと、ひょっとしたらポーランドくらい。5000~1万ドルではタイがほぼ唯一の有望株で、あとはインドネシア、ナイジェリア、フィリピン、スリランカ、あとは東アフリカくらいか。先進国の水準に到達する国はほんの一握りであろう。

BRICsブームは、ちょうど10年で終わったかも、というこの論文を書いたのは、モルガンスタンレーのRuchir Sharma。ちなみにBRICsという言葉を発明?したのはゴールドマンサックス。どちらも正に落日の下にある投資銀行ですね。

個人的には、インドネシア(特に最近面白い)、マレーシア辺りの中進国はまだ十分面白いとは思いますけど、大枠の見方としては間違い無いのでしょうね