Facebook投稿記事より㉟ークアルコムやARMに見る企業価値を生む戦略について | 蓮華 with にゃんこ達

蓮華 with にゃんこ達

専ら、マーケットや国内外の政治経済ネタが多くなってしまいました。
母と愛しい我が子達を護りつつ日々闘う中で思う事をアップしていきます。

下に添付したグラフ↓は、端末別出荷台数です。まあ予想通りスマホの圧倒的な伸びを示していますね。

2004年から2009年までの5年間で150万台だった販売台数は、2009年から2012年のたった3年間で550万台を売り上げています。
iPadなどタブレットについてはまだ導入期、今後の成長に大きな期待が、という所でしょう。一方で、PCは完全に成熟期。

この状況下で、一体どの企業が勝ち組となり、負けていくのか? というBarron'sの記事もありましたが、先日の日経にもこんな記事↓が・・・

『米半導体クアルコム、時価総額でインテルを逆転 スマホ・タブレット時代を象徴』
 http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM10013_Q2A111C1NNE000/

このクアルコムと一緒に、もう1社例として取り上げたいのは、ARMホールディングスですね。
ここは、ちょうど米国株運用をやっていた頃にIPOがあったので、
『なんちゅーカッコ良い会社が出てきたんだ!』とコーフンしたものでしたね~(笑)

で、その前に、記事について一言だけ言っておきますが・・・

あのね~クアルコム発展の理由は、『成長著しいモバイル分野に携わってきたから』じゃないっちゅーの。

あまりにも表面的、だから日経は・・・と言われる。間違い&ミスリーディングが多いだけじゃなく、レベルがね~・・・それならモトローラ(グーグルが買収)は何で?って突っ込まないのが駄目なんですよ。

投資する時の判断に『成長している領域だから』と言うのがありますが、それだけでは、企業価値上は何のプラスにもならないんですよ。キャッシュフローが出て初めて、企業価値は生まれるのですからね。

という訳で、中身を詳しく・・・

消費電力を抑える特徴を持つARMアーキテクチャは、低消費電力設計のモバイル機器で支配的となっていて、現在、全世界の組込み型32bit RISC CPUの約75%という圧倒的なシェアです。

高性能化に伴って、ARMコアの出荷数も200億個以上と加速度的に伸びていて、昨年末には待望の64bit拡張アーキテクチャも発表、対応力の柔軟さ、迅速さも際立ってます。

2社に共通する事、そしてアップルもですが、ファブレスです。

クアルコムは、設備(「Property, plant and equipment, net」)が29億ドルしかないのに対し、インテルは工場などで約272億ドル、9倍超ですね。

ARM(本社はイギリス)に至っては、固定資産(Property, plant and equipment)は、たった3,210万ポンド!しかも、15億ポンドの資産の殆どが、現預金や有価証券、買収時に発生した「のれん」(goodwill)という内容。

クアルコムについては、ファブレスながらチップを製造して製品に責任を持つ部分もありますが、ARMは、ライセンス的な仕事に絞り込んでいるので、従業員数も少数精鋭の技術者や知財関連の従業員で十分なのです。

以前はクアルコムも、携帯電話の電話機製造とか基地局(通信設備)もやってましたが、1999年に、携帯部門は京セラ、基地局はエリクソンに売却しちゃいました。という事で、現在は携帯電話用チップに特化しています。

現在、iPhone5などもLTEを使い始めてますが、下りにOFDMAという通信方式が採用されていて、この辺り、クアルコムがかなり技術や特許を押さえているそう。

同社の10Kを見るとCDMAやLTE関係の知財をライセンス部門の利益率(税引前利益/売上高)は88%。同社売上の3分の1、税引前利益の85%は、この部門が叩き出しています。

LTEやWiMAXにはOFDMAの技術が使われており、110以上の携帯電話会社で既に採用され、300以上の会社で採用が決まっているそうです。

ARMのGross Profitも常に85%以上と高水準を維持している事は有名です。

要は、携帯電話機や基地局ビジネスを1999年にとっとと捨てて、チップとライセンスという知財ビジネスのコアに集約しちゃった訳ですね。

携帯電話という機器は一見、一般消費者相手の最終製品に見えますが、キャリアに紐付いていたり、そのキャリアが世界各地域で寡占(少数)になっていて、携帯電話メーカーはお客を選べない、その分 交渉力が弱い、取り合いでパイを益々小さくしている、と思います。

Appleは、単に『性能のいい携帯電話』を作っている訳じゃなく(そこを日本のメーカーは勘違いして、こんな技術ならウチで直ぐ作れるとかアホな事を言っちゃう)、iTunes、AppStore、iCloudなどのサービスで『ネットワーク外部性』を生み出し、ユーザーがAppleから離れにくくしている訳です。

クアルコムについても、その携帯電話の通信方式が、『ネットワーク外部性によって一つの方式に収斂』していく方向性に乗せている。

世界中でバラバラの通信規格が乱立していると、それぞれの規格に払うライセンス料や、基地局側なども含めた量産効果で、やはり方式の数が収斂する程効率が良くなります。

そして、3G以降は、CDMAやOFDMAといったクアルコムの得意な通信方式に収斂してきつつある訳です。
この為、同社は、キャリアを超えて世界の携帯電話メーカーに製品やライセンスを供給できる立場を保てているのです。

世界が一つの通信網で繋がるという事は、完全情報で鞘の抜けない利益ゼロの競争に叩き込まれる為、こうした『儲かる構造』を作れるかどうかは非常に重要です。

アホみたいに市場のデカさなんて素人臭い事をドヤ顔で言ってたら駄目です。

どちらにしても、再三主張している通り、世界の流れはMinimization。既に保有している膨大な生産設備をスクラップしていく事が最優先、世界的な経済規模の縮小は必然、という前提で、戦略的に勝てる所を探さねばなりません。

蓮華 with にゃんこ達