ある日リチャードは、二人の娘のうちの一人を連れて、
海に出かけようとしたが、タイヤにちょっとしたトラブルが起きたので、
ガソリンスタンドに寄って修理してもらうことにした。
修理を待つ間、リチャードと娘は、近くの公園で遊ぶことにした。
しかししばらく遊んでいるうちに、
リチャードは落ち着かなくなってきて時計を眺めはじめた。
その日の予定を━海に行くことを考えていたのだ。
リチャードは、「早く車に戻って海へ行こう、楽しいぞ」と
娘を急かしはじめた。
このようなことも言った。
「さあいい子だから。すごく楽しいんだぞ、海は」。
それに対する娘の答えに、最初リチャードは驚いたが、
あとで考えてみると、なるほどと思えた。
娘はきっぱりと、
「行きたくない。ここで遊んでる」と答えたのだ。
正直なところ、彼女はこう感じていた。
「どうして、またあの暑い車に戻って、
これから二時間もかけて遊びに出かけなきゃいけないの?
こんなに素敵で、日陰もある公園で、
パパやほかのお友達とも遊べるっていうのに」
最初に立てた計画に固執することが、不適切で、
意味のないことだと言いたいのではない。
あなたが本当に望んでいたり、子どもに体験させたいと考えているなら、
それはそれでよい。
しかし、ちょっと考えてみてほしい。
二歳の娘が嬉しそうな顔で砂場に立ち、
ほかの子どもたちと遊んだり笑ったりして、夢中で楽しんでいる。
砂の城をつくり、水をかけて遊び、ジャングルジムによじ登っている。
それより楽しいことがどこにあるだろうか?
それでも父親は、海へ行く計画のことを考えずにはいられない。
途方もなく楽しげな目の前の娘と一緒に楽しむこともせず、
それよりずっと楽しいはずの何かについて考えているのだ。
一般に、子どもは今を生きる達人である。
しかし、その芽を摘み取ってしまうのは簡単だ。
「いつかいいこともあるさ」とか「今はまだ、うまくいかないけど」
といった言葉を、わたしたちは無意識のうちに、
何の罪も感じずに子どもたちに対して言っている。
これは、リチャードの娘が父親から受け取ったメッセージと同じである。
今現在に、その場に集中することによって、不思議な力が湧いてくる。
今までとは違う、感謝の心や畏怖の心が表に出てくる。
「今」に集中して生きることによって、心配や気がかり、
欲求不満や後悔が軽減されることをわたしたちはすでに知っている。
そして、今の例からわかるように、その場に集中して生きることは、
余暇を楽しみ、味わうための鍵でもあるのだ。
リチャード・カールソン、ジョセフ・ベイリー著
あくせくするなゆっくり生きよう!―人生に不満を持たない生き方 (角川文庫)
より
物事の視点を変え、「今」に意識を集中することで、
人生のあらゆる場面がずっと平穏なものに見えてくる。
オススメの一冊です。
人生、ゆっくり生きよう!
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