スープとポタージュの境目とは 1月の料理基礎講座にて | 塚本有紀のおいしいもの大好き!

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フランス料理とお菓子の教室を開いています。おいしいものにまつわる話し、教室での出来事など、たくさんお届けします。
 



農耕者風ポタージュ potage cultivateur

ベーコンと野菜がぎっしりのスープです。学校で習って以来、大好きでずっとご紹介を続けている料理です。だしを使わなくてすむのも、便利。

ところでポタージュというと、私たちはなんとなくとろみのあるスープを意味するようなイメージがありませんか。たとえばカボチャのポタージュやコーンスープなど。
でもフランス料理には、澄んだポタージュpotage clairとつないだ(=つまりとろみのある)ポタージュpotage lieの2通りあるのです。澄んだポタージュはお肉のブイヨンやコンソメのこと。つないだポタージュは野菜の裏ごしがはいった、つまりカボチャのポタージュのことです。
(ちなみに私たち日本人が思う「ポタージュはとろみがあって、コンソメはさらっとした液体」というイメージはアメリカから来ているのだそうです。)

スープとは野菜や肉の入った液体状の料理をさしますが、もともとは固くなったパン切れに液体をかけて食べやすくした料理をさしていたのだそうです。つまりパンの歴史と同じくらい古い料理ということに。

庶民は「スープ」という言葉を使い続ける中、18世紀には富裕階級はスープという呼び名が下品という理由で(!)、ポタージュと呼ぶようになった、と辞書にあります。
しかしポタージュpotageとはポpot(鍋)という言葉から来ていて、もともとは煮込み料理の一つのことであり、つまりポタージュは煮込みと液体料理の2つをさすようになったのだとか。

別の辞書には「スープはこさないし、とろみもない。田舎っぽい、家庭的な特徴がある液体料理」とあります。ポタージュは洗練されたイメージがあると書かれている本もあります。
スープは水ベースで、ポタージュはだしベースともあります。

ということは、水とベーコンと野菜で作るこの料理はポタージュではなくて、分類としてはスープなのでは!?
それにどちらかというと洗練されたイメージではなくて、家庭的で素朴な料理ですから、イメージはどちらかというとスープ・・・。
長年の疑問です。
野菜がいっぱいだから「農耕者風」なのでしょうが、もしかしてわざわざそう言うところを見ると、富裕層からの「上から目線」!?  (たしかに安くはないので、やっぱりスープと呼ぶには、忍びないのかも・・)



メインは牛肉の赤ワイン煮込み、ブルゴーニュ風  boeuf bourgugnons

赤ワインと仔牛のフォンで煮込んだ強い味わいの地方料理ですが、作る人によってかなり味に個性がでるように思います。自分で作るもののなかでは、たいがいしっかりした味だと思っていますが、いつだったかディジョンで食べたブルギニヨンは相当濃かったけど、おいしかったな・・などといつも思い出しながら、作ります。


デザートはサバランsavarin ラムでびちょびちょにして、冷たくしていただきます。

「こんなお菓子、日本人で好きな人なんかいない」という悪口から、「一番好きなお菓子はサヴァラン」という人まで幅広い評価のお菓子ですが、私はとても好きです。
サヴァランの話しはまたいずれ(長い)。

アミューズの「生たこマリネ」に使った水たこ。

じつはフランスではあまりたこは食べません。イカは食べるのに! おいしいのに!