フランスのクロワッサンを大阪で! ボン・ルパにて | 塚本有紀のおいしいもの大好き!

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心斎橋ボン・ルパのクロワッサン
大阪市中央区南船場3-5-26

ボン・ルパはワインだけでなく、生ハムやチーズ、オリーブなど上質な食材が揃うお店です。頻繁に出かけます。
少し前に店内が改装になり、レストランができたり、配置が変わったりしました。
改装後すぐのある日、自動ドアが開いた瞬間、ぶわん!といい香りが。
新たにオーヴンを設置したようで、焼きたてパンコーナーができています。
「わあ、いい香り!」
なんともいえず、おいしそうなにおいです。混じりけのない、まっすぐに良い香りで、その表現を頭を巡らせいろいろに考えてみたのですが、一言でいうならそれはやはり
まっすぐ!
その日はとても急いでいたので、買わずに大急ぎで教室に戻りました。次は絶対に買うぞ、と思いつつ。

後日お買い物に立ち寄ると、そのクロワッサンはフランスから輸入された冷凍生地を店内で焼いたもののだと分かりました。
1つ買ってみました。120円
囓った瞬間から、なんともフランスのクロワッサンを感じます。しゃくしゃくとした食感。
甘みがあり、かつ塩味もきちんとして、あっという間に食べてしまいます。
これが120円だなんて! 
もちろん職人が夜中に起きて真っ当に作っている、真のクロワッサンとは違うものですが、でも冷凍生地で120円なら、これは十分すぎるほどの価値があります。

ところで日本のクロワッサンとフランスのクロワッサンの味はちょっと違うように思います。日本の職人さんの技はとても素晴らしいので、その違いは材料、気候、そしてそれぞれの民族の求めるおいしさの違いではないかしら、と私は思っています。
フランスに行くと私はクロワッサンを何個も何個も食べ続けます。着いた翌朝一番に食べるのもクロワッサン。帰国前の空港でも、最後まで未練たらしく食べているのはクロワッサンです。
フランスに行く一つの楽しみは、クロワッサンと言ってもいいくらい。
これはオススメです。120円で一瞬フランス旅行ができるかも!

まっすぐなにおいで思い出しましたが、パン屋さんのにおいは同じようで、でもお店によって違うと私は思います。いかにもパン屋さんに特有の良いにおいのようでいて、でもじつはちょっと違う。
香ばしいよい香りに混じって脂が蓄積したような、酸化したような臭いがふわっと漂うお店と、非常にクリアなよい香りのお店があるように思うのです。
こんなことを思い始めたのは、ずっと前「おいしいパン屋さんの秘密(洋泉社)」の原稿を書いていたとき、神戸のフロインドリーブに取材によせていただいた時のこと。
社長さんの上原さんは応接室でお話を聞かせて下さった後、広い工房に案内してくださいました。
莫大なお金をかけて清掃がしやすいように工房を大々的に改造し、かつ換気のシステムも構築したとのことでした。ご自慢の工房です。

「におい、嗅いでみて。パン屋のにおい、しないでしょう?」
と言われて、びっくり。ほんとにそれらしいにおいが一切しないのです。清掃も徹底的にしているとの話しには納得です。
恐れ入りました、と私は心底思いました。


それ以来、考えながらパン屋さんのにおいを嗅ぐようになり、今ではもう無意識です。
べつに嫌なにおいというほどではないのですが、まっすぐなにおいのパン屋さんのほうが心地よいものです。
もちろんお店や設備が新しいうちはまっすぐきれいなにおいです。ただしまれに「あれ、このお店、最近開店したばかりなのに!」と思う店もあれば、相当に年季が入っているお店なのに、クリアな香りがするお店も。以前「パンは大好きだが、パン屋のにおいが嫌い」という人に会ったことがありますが(珍しい!)、こんなところに理由があるのかもしれないと、今は思います。いったい何から来るのでしょう。




今日もまたにおいの話しになってしまいました・・・。