
コメルシーのマドレーヌ
Madelaine de Commercy
マドレーヌの発祥はフランス・ロレーヌ地方です。
諸説ありますが、ポーランドの王位を追われたスタニラス・レクチンスキーがコメルシーCommercyにいたときに、お城の菓子職人が宴会の途中で喧嘩をして辞めてしまい、デザートにだすものがなくなり困り果て・・。召使いの少女マドレーヌが、あるいは女料理人のマドレーヌが、即興で作ったのが、マドレーヌと言われています。このお菓子にいたく魅了されたレクチンスキー王はヴェルサイユに住む娘であるマリー・レクチンスキー(ルイ15世妃)にも送り届けたのだそう。
コメルシーでは長い間このレシピは秘密とされ、お菓子屋の間で高い値段で売り買いされていたのだとか。
以前調べ物をしていたら、辞書にコメルシーのマドレーヌのレシピを見つけました。
「これかぁ、売り買いされていたレシピというのは!」
通常マドレーヌは卵を泡立て、溶かしバターを加えるのが普通かと思いますが、これはポマードバターからスタートするやり方。さっそく焼いてみると素朴なバターケーキのような味わい。
ところがつい先日、また別の探し物をしていたら、ラルース料理事典Larousse gastronomiqueにまた別のコメルシーのマドレーヌのレシピを発見したのです。
「えぇぇ、一つじゃないの!?」
探してみたら、ルノートルの地方菓子の本Desserts de traditionnels de Franceにも別のコメルシーが! こちらはポマードではなく、普通に溶かしバターです。こうなるとどれが本当のコメルシーの定義なのかが分からなくなってしまいました・・。
写真はラルースのやり方のコメルシーです。むっちりもっちりとした味わい。ベーキングパウダーなどもちろん入れていないのに、ぷっくりと愛らしいおへそがでます。
これは近々製菓の講座でご紹介したいと思っています。
今もマドレーヌはこの町の特産品として作られていて、パリでも木箱に入ったコメルシーのマドレーヌを買うことができます。お菓子屋さんの奥の棚やデパートの食品館の地方銘菓コーナーにあります。ぼそっとしていますが、素朴に味わい深くおいしいものです。旅行で行かれるのなら、ぜひお試しを。
こうなったら、次のフランス旅行ではコメルシーに行って、本当のコメルシーのマドレーヌの定義についてどうしても調べなければ!