鴨のコンフィを作ろう! 4月の料理基礎講座で | 塚本有紀のおいしいもの大好き!

塚本有紀のおいしいもの大好き!

フランス料理とお菓子の教室を開いています。おいしいものにまつわる話し、教室での出来事など、たくさんお届けします。
 

4月14日15日
4月の料理基礎講座の日です。

$塚本有紀のおいしいもの大好き!
トマトの「ショコラ」。黒っぽいトマトです。



ひとまずアミューズにはグジェールgougereを。砂糖を入れないで作ったシュー生地にチーズを混ぜ込んで焼きます。ブルゴーニュの地方料理で、酒蔵での聞き酒のときに口直しに使われます。パン屋やお菓子屋さんにも並んでいて、そのあまりの大きさにびっくり。ざっくりとしたそのおいしさにもびっくりでした。
ブルゴーニュに限らずレストランのアミューズグールにもよく使われます。ある年の夏フランスに滞在中様々にレストランに行きましたが、2軒に1軒くらいの勢いでグジェールが登場し、「もしかして流行っているのか!?」と思ったくらいです。



$塚本有紀のおいしいもの大好き!


アペリティフには赤ワインにクレーム・ド・フランボワーズを混ぜて。
$塚本有紀のおいしいもの大好き!
赤ワイン+クレーム・ド・カシスで、コミュナールcommunardというアペリティフになりますが、これをちょっと変形してみました。



$塚本有紀のおいしいもの大好き!
サーモンのリエットRillettes de saumon
そもそもは豚肉やがちょうで作るリエットから派生してきた料理です。リエットは脂肪の中で長時間煮て、ペースト状にしたもの。これは保存食ですが、魚のリエットは保存からは離れ、レストラン料理です。あちこちのレストランの前菜に登場します。みんな味も使っている材料も少しずつ違い、私は大好きです。他には、かつて連続講座では鯖でリエットを作りましたが、こちらも相当好きです。

$塚本有紀のおいしいもの大好き!
まずはサーモンを蒸します。ぱさつかないよう、ぎりに火を入れます。サーモンは、少し臭みのあるキングサーモンよりも、アトランティックサーモンをお勧めしています。上品に仕上がります。

玉ねぎやシブレット、生クリームなどなど合わせて冷蔵庫でしばらくなじませます。皮はパリっとさせて添えに。今回もおいしくできあがりました。



$塚本有紀のおいしいもの大好き!

鴨のコンフィ confit de canard
コンフィは脂肪の中で低温で長時間煮たもので、フランス南西地方sud-ouestの特産品です。そのあたりを旅行すると瓶詰めがあちこちで売られていておいしそうなのですが・・・、あまりに重たそうなのでなかなか買えません。
砂糖漬けのオレンジもコンフィと言いますし、ほかにはエシャロットやにんにくのコンフィ、トマトをオリーヴ油で煮たコンフィも。マグロのコンフィは私たちのよく知るシーチキン!
なぜこんなにいろんなコンフィがあるのかといえば、そもそもコンフィとはconfire:「保存のためにつけ込む」という動詞からきているからです。だからお肉のコンフィも、オレンジのコンフィもあり、さらには派生してconfiture(ジャム)もできたというわけです。
$塚本有紀のおいしいもの大好き!

前の日から鴨の腿肉に塩をしておきます。今回使ったのは、フランス産バルバリー種メスの小鴨の脚。

$塚本有紀のおいしいもの大好き!
これをガチョウの脂graisse d'oieでゆっくりと煮ていきます。
本当はコンフィとは、本人の脂の中で煮るものです。つまりこの場合は鴨の脂であるべきなのですが、なぜか鴨の脂よりも圧倒的にガチョウの脂のほうが手に入りやすいのです(日本で鴨の脂を見たことはありません。なぜか?)
蓋を開けると独特の強いにおいがありますが、これがコンフィの独特の味わいにつながります。煮ているときはかなり強いにおいがぷんぷん漂ってきますが、食べると「おいしい!」

コンフィは低温で長時間調理することによってほろっと繊維がほぐれるような食感になります。

コンフィのおいしさの理由は、いくつかあげられます。まず水には溶け出しやすい旨味成分ですが(だからブイヨンがおいしくなるのです)、じつは脂には溶け出しにくいのです。水分がゆるやかに蒸発しているため、うまみが凝縮しています。
そしてなんとなく脂ぎった料理のようにイメージされがちですが、じつは脂肪は脂の中で煮た方が、水で煮るよりも落ちやすいのです。昔から「油は油で落とす」と言うでしょう? 
ですからコンフィは見かけほど脂が残っているわけではない、ということです。

ただしフランスのカフェでは定番スタイルとして、ジャガイモのフリットが添えられます。しかもこんもり山盛り状態です。コンフィで脂を落としたとしても、こっちで油がいっぱいなんじゃ・・・。
マスタードをたっぷりつけていただきます。油のことはさておき、やはり「これ、これ!」と言ってしまうおいしさです。


$塚本有紀のおいしいもの大好き!
セロリと胡桃のサラダ
フランス人はどうあれ、私たちはどうにも一緒にサラダが食べたくなります。これは定番のお総菜。学校で働いている時、繰り返しまかないに登場した思い出深いサラダでもあります。セロリと胡桃がこんなに合うなんて! と思ったことをよく覚えています。

$塚本有紀のおいしいもの大好き!
ワインはコンフィに合わせて、サン・シニアンSaint Chinianを。しっかりした骨格がよく合います。チーズはミディ・ピレネーのペライユPerailです。羊乳から作られているのですが、かなり強く羊が口中を跳ね回るよう。かつての生徒さんで
「幼稚園に来た、移動動物園の味!?」
と言った方があります(この方は幼稚園の先生)。言い得て妙。気持ちはよく分かります。


$塚本有紀のおいしいもの大好き!
さてデザートを作ります。これはフィロ生地。コーンスターチや小麦粉でできた薄い生地です。そもそものオリジナルはフランスではないためフランス語の料理辞書にはのってきませんが、ブリックbrickやカダイフCadaifと並び、頻繁にフランス料理に使われる素材です。ぱりっと軽く焼き上がります。

$塚本有紀のおいしいもの大好き!
今日はランドのパスティスを作ります。フィロを円形にくり抜き、

$塚本有紀のおいしいもの大好き!
りんごをソテーして

$塚本有紀のおいしいもの大好き!
溶かしバターを塗りながら、積みあげてオーヴンへ。ひらひらっと花びら状に焼き上げます。
アプリコットをピュレにしてオレンジの果汁と合わせてクーリに。


$塚本有紀のおいしいもの大好き!
仕上げのプチフールは、今日もやっぱり復活祭の仔羊を。