仔牛のフォン fond de veauの取り方 | 塚本有紀のおいしいもの大好き!

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フランス料理とお菓子の教室を開いています。おいしいものにまつわる話し、教室での出来事など、たくさんお届けします。
 

料理講座の皆様に向け、フォンの取り方を解説します。



*仔牛のフォン、鶏のフォン、魚のフュメは、それぞれ時間がかかるため、授業と平行して作るということがなかなか難しいものです。そこで通常は私が先に取り、冷蔵・冷凍保存したものを授業で使っています。基礎講座2年の間にすべての方に少なくとも1回は直にご覧いただけるように考えておりますが、それまでのつなぎとしてご利用ください。

仔牛のフォン fond de veauの取り方
(写真は2倍量)

500g d'os de veau仔牛の骨(5cm角)500g
1/2 oignon 玉ねぎ 1/2個
1/2 carottes にんじん 1/2個
1 branches de céleri セロリ 1本
50g poireau ポワロー 50g(なくても可)
2 gousses d’ail にんにく 2かけ
1 gros tomate トマト 1個
1 c. de tomates concentrés トマトペースト 大さじ1
1 bouquet garni(thym, laurier, queue de persil) ブーケ・ガルニ1本
1 clou de girofle クローヴ 1個
5 grains de poivre noir 黒粒胡椒 5粒
2.5 L d’eau 水 2.5L

1. まずは仔牛の骨を500g準備します。500gの骨があれば、最終的に500gのフォンが取れると覚えておけば便利です。もし仔牛がないときは牛骨200g+牛すじ肉300gで代用できます。牛すじ肉500gでもできますが、コクに乏しくとろみも少し弱いものになりがちなので、少し多めに。仔牛の骨については授業のときにお問い合わせください。


2. フォン用の大鍋を充分に熱してから油を敷きます。コツ:充分に熱してから油を敷けば、不本意な焦げにはなりません。


3 骨を入れます。
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4. 240℃のオーヴンに10分入れ、色よく焦がします。
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5. 裏返してさらに10分焼きます。鍋底に脂がにじんでくるのが確認できます
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6. この間に、香味野菜(玉ねぎ、にんじん、セロリ、ポワロー)を大きめのミルポワ(角切り)に切っておきます。にんにくは半割にして芯を取ります。
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7. 香味野菜と、にんにくを骨の上に置き、さらに10分焼きます。
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8. オーヴンから出しガスで充分に鍋底をキャラメリゼさせ、余分な油を捨てます。
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コツ:キャラメリゼcarameliserはほどよく焦げ目をつけることです。ブリュレbrulé(焦げ焦げ!)状態とは違います。ただしこの段階でキャラメリゼが足りないと、できあがりの色と味が薄すぎる結果となり、裏技的にガスで真っ黒に焦がした玉ねぎを入れなければならなくなりますので、ご注意!



9. トマトペーストを加えて少し鍋底で炒めます。
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10. トマトを横割りにして種を出し、ざく切りにして加えます。皮ごとでOK。
種は周囲のどろんとした部分を漉し取ってフォンに加えます。じつはこのどろどろは栄養価が高い部分です。残った本当の種のみ捨てます。
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11. ブーケ・ガルニ(香草束)を作ります。ポワローの緑の部分2枚に、タイム、ローリエ、パセリの茎を抱き合わせにはさみこみ、たこ糸でくくります。ポワローがない時はガーゼで代用します。スパイスも準備。
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12. まず水を、最終的に取れるであろう量(つまり500g)だけ加えます。そして煮上がりの水位を自分の目で「このくらい」と確認します。つまりここまで煮詰めたらだいたい適正値という目安を先に知っておくということです。
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13. そして残りの水を加え、ブーケ・ガルニ、クローヴ、胡椒も入れてて、弱火で4時間ほど煮ていきます。
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火加減はぽこぽこと周囲が沸く程度です。ぼこぼこに沸いてはいけませんし、また逆に上面がかすかに震える程度では、だしはでてくれません。
*実験によると70℃、80℃で煮出すよりも92℃で加熱したほうが溶け出るタンパク質(=うまみの量)は3割も多いのだそうです。かといって100℃でぼこぼこに長時間沸かすと、にごりのもととなるばかりか、旨味成分であるイノシン酸が減ってしまいます。



14. 2時間くらいたったところ。
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もちろん途中アクをよくすくいますが、前半は泡として浮いてくるアクを中心に。途中から脂をすくっていきます。後半に脂をすくう理由は、芳香成分は水よりも油にこそ溶けやすいからです。
臭みのないフォンにするために、徹底的にあくはすくってしまいます。




15. そろそろ煮上がり。
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16. シノワで漉す。最後はしっかりと押して、うま味を残さず漉し取ります。ぎゅうぎゅう押して構いません。
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*写真の色は表面の脂の黄色です。


17. 氷水にかけてなるべく早く冷まします。
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もし効率よく浮いている脂を取りたかったら・・・
粗熱が取れたら表面にラップをぴたっと張って、冷蔵庫に一晩。


18. 翌朝ラップをはがすと、べろんと表面の脂が取れてくれます。うまくいくと感動的、かつ実用的。
ただしそもそもの脂の量が多いと、うまく行きません。冷蔵庫で2.3日。あるいは密閉できる保存袋に入れて冷凍します。$塚本有紀のおいしいもの大好き!
スプーンで掬うとぶりんぶりん。たくさんのコラーゲンが溶出しています。牛で作るよりも、仔牛のほうが圧倒的にコラーゲンは多いようです。香りももちろん違います。

できあがったらぜひカレーを作ってみてください。せっかくですから、化学調味料の入らないルーかスパイスで。深い味わいになります。
ただし家庭で仔牛のフォンを取るのは本当に大変です。フォンを取るだけでいやになり、本来の料理に手がつけられなかったら本末転倒! 面倒なら、缶詰や粉末を上手に利用してください。ただし缶詰はすでに塩分がかなりあり、あまり煮詰められないので少なめに。キスコという会社の缶詰はなかなかです。