家離(いへざか)り旅にしあれば秋風の寒き夕(ゆふへ)に雁鳴き渡る
巻7 1161 読み人知らず
なつかしい家を離れてひとり旅空に身を過ごしていると、秋風がひとしお寒く吹く夕暮れ時に、雁が鳴きながら渡って行く
この歌は「吉野」「山背(やましろ)」「摂津」への旅を詠んだ歌の後に配置された「羇旅(きりょ)の歌」50首の最初の歌です。「家離り」の「離」は(さく)と呼んでいますが(放く、割く、裂く)と同音で(引き裂かれるようにして離れた)の意味と取りました。
吉野・山背・摂津の歌はそれぞれ冒頭の1首を紹介します。
(吉野)神さぶる岩根こごしきみ吉野の水分山を見れば悲しも
神々しい大岩の根のごつごつと切り立つ吉野の水分山を見ると身が引き締まってくる
(山背)宇治川は淀瀬なからし網代人舟呼ばふ声をちこち聞こゆ
宇治川には歩いて渡れる緩やかな川瀬がないらしい。網代人が岸に向かって舟を呼び合う声があちこちから聞こえる
(摂津)しなが鳥猪名野を来れば有馬山夕霧立ちぬ宿りはなくて
猪名の野をはるばるやって来ると有馬山に夕霧が立ち込めてきた。宿を取るところもないのに
最近「脳トレ」の「(四字)熟語消し」にはまっており2,000問(ステージ)近くクリアしました。
「人生羇旅」もしばしば登場します。人生もまた「旅」のようなものなのでしょうか。