「ほとぎす」③ | 雪太郎の「万葉集」

雪太郎の「万葉集」

私なりの「万葉集」解釈
カレンダー写真は「鴻上 修」氏撮影

 有名な俳句に 目には青葉 山ほととぎす 初がつお(山口素堂)があります。 あの声で蜥蜴(とかげ)食らうか時鳥(ほととぎす)(室井其角)という俳句もあるそうです。

 春を告げる「ウグイス」と同じように初夏の到来を告げる鳥として「ホトトギス」は珍重されました。「万葉集」でも(田植えを促す鳥)として詠まれています。「時鳥」(時を知らせる鳥)と表記されるのはそのためです。夜に鳴く鳥は珍しいのでホトトギスの初音(「忍音(しのびね)」)を他の人よりも先に聞くために徹夜する話が『枕草子』に載っているそうです。

 「不如帰去」は、次のような逸話からです。

 昔、「」(古蜀)という傾きかけた国に「杜宇」という男が現れ、一生懸命に農耕を指導し国を再興させ「帝王」となり「望帝」と呼ばれました。帝位を長江の氾濫を治めるのを得意とする王に譲り自分は山中に隠棲しました。死後に霊魂は「ホトトギス」に変身し、民に農耕を始める時期を告げるため鋭く高い声で鳴くようになりました。後に「蜀」が「」に滅ぼされてしまったことを知ると「不如帰去(帰り去るに如かず)」と鳴きながら血を吐いて悲しんだというような話です。

 「遠野物語」によると盛岡のある地方には次のような話が伝わっているそうです。

 ある姉妹がいて、姉が焼芋の周りの堅い所を自分が食べ、中の柔らかい部分を妹に食べさせようとした所、妹は誤解して姉は自分が先においしい部分だけ食べ、自分には不味い部分を食べさせようとしたとして「包丁」で刺し殺してしまいました。姉はカッコウになり「ガンコガンコ(堅いの方言)」と鳴き、過ちを悟った妹はホトトギスになり「包丁欠けた」と鳴いて悔いたというような話です。「欠けた」の意味が不明ですが、その地区では、今もホトトギスのことを「包丁かけ」と呼ぶそうです。