「大津皇子」を偲んで | 雪太郎の「万葉集」

雪太郎の「万葉集」

私なりの「万葉集」解釈
カレンダー写真は「鴻上 修」氏撮影

 磯の上に生ふる馬酔木(あしび)を手折らめど見すべき君が在りと言はなくに

  巻2 166 大伯皇女

 

 磯のほとりに生えている馬酔木(アセビ)を手折って、あなたに見せたいけれど誰もあなたがいると言ってはくれません。

 謀反の嫌疑をかけられ処刑された「大津皇子(おほつのみこ)」を偲んで姉である「大伯皇女(おほくのひめみこ)」が詠んだ歌。「君が在りと言はなくに」というのは、当時の人々は亡くなった人の夢をみたり気配を感じた時には「魂」が近くに戻ってきていると考え縁者に話すことで慰めていましたが、周囲の誰もが魂を感じたとは言ってくれないということ。罪人として処刑された大津皇子の魂を感じたとは言いにくかったと思われます。

 「馬酔木」の枝葉には「グラヤノトキシン」という毒が含まれ馬が食べると酔ったように(足がしびれて)ふらつくことから名付けられたというのが一般的ですが「悪し実」からという説もあります。春の彼岸の頃に咲くことから「ヒガンノキ」と呼ぶ地方もあるそうです。

 家の庭では今咲いています。毒があるので手折ってきて花瓶に飾ろうとは思いません。写真を撮りに行ったら近くでウグイスが鳴いていました。

家の東側の生垣の近くに植えた「馬酔木」