「潮騒(しおさい)」 | 雪太郎の「万葉集」

雪太郎の「万葉集」

私なりの「万葉集」解釈
カレンダー写真は「鴻上 修」氏撮影

 潮騒(しおさゐ)に伊良湖(いらこ)の島辺漕ぐ舟に妹乗るらむか荒き島廻を

  巻1 42 柿本人麻呂

 潮ざわめく中、伊良湖の島辺を漕ぐ舟に今頃あの娘は乗っているだろうか。あの風波の荒い島のあたりを。

潮騒」は潮が満ちてくる時に波が騒ぎ立てる音で「波の鼓」とも呼ばれます。「伊良湖岬」は愛知県渥美郡渥美町にあり、伊勢湾をはさんで「伊勢」の対岸の場所です。「島廻」は、島の周辺を巡ること。

 持統天皇が「伊勢」に行幸された時、都(飛鳥京)に残った柿本人麻呂が詠んだ歌。「妹」は人麻呂の妻ではなく親しい女官のことだろうといわれています。伊勢行幸に従駕した女官の夫たちのために宮廷歌人であった人麻呂が無事を祈った「呪術的な言霊の言葉」であるという解説も目にいたしました。その土地を歌に詠むことにより「土地の神」のご加護を得る「土地誉め」の歌ということなのでしょうか。

 伊良湖岬の西の海上に伊良湖水道をはさんで「神島」(三重県鳥羽市)があります。ここを舞台に書かれたのが三島由紀夫の「潮騒」です。