Side N
翔ちゃんの手が鎖骨をかすめて、さらに下へ這っていく。
「あっ…んっ…翔っ…」
思わずびくっと体を揺らすと、翔ちゃんの手がぱっと離れた。
「やべっ…ごめん、ニノ…」
え…
「いきなり…こんな…ごめん!」
翔ちゃんは真っ赤になって、ぱっと俺から離れた。
「せっかく第一の誘惑を振り切ったのに…第二の誘惑に負けるところだった」
はあぁ、とため息をつきながら、翔ちゃんは運転席に深くもたれて天井を仰いだ。
「第一とか第二って…なんすか?」
俺も急に恥ずかしくなって、わざとぞんざいな口をきく。
「さっき…俺の部屋来たいとか…言ったでしょ?…あれが第一」
「へ?」
「自分の部屋で、大学に受かったニノと2人きりとか…俺は自分の理性を信じきれない」
「え…そんな…」
理性おさえるとか…
俺的には、いらないけど…
「第二はこの…車の中ね…ニノがかわいすぎて…我慢できなくなっちゃうんだよな…」
頭をかきながら、さらりと言われて、俺は自分の顔の温度が急上昇するのを感じた。
「なっ…別に…我慢なんか…しなくたって…」
「また、そんな俺を惑わせること言って…」
翔ちゃんはふーっと息を吐きながら、乱れたシートベルトの位置を修正した。
「今日まで、先生だからな。俺はちゃんとお前を親御さんのとこ送り届けないと」
「先生って呼ぶなって言ったくせに」
「…ん、まあ…な」
翔ちゃんはエンジンをかけて、前を見つめたまま考え込んだ。
「…じゃあ、今日は送るけど…また今度、補習…でもしますか」
鼻の頭をかきながら、ためらいがちにぼそりと言った翔ちゃんの頰に俺はちゅっと口付けた。
「ニノ…」
「補習はどこですんの?えろセンセ」
「えっ…ろくないわ…いや、エロいか、ごめん…」
しどろもどろになる翔ちゃんに笑って、俺は言った。
「補習は…翔ちゃんの部屋がいい」
「ん…いいけど…」
俺はシートベルトを伸ばして、顔を翔ちゃんに近づけた。
「俺…何するかわかんな…」
今度は俺から翔ちゃんの唇を塞いでやった。
唇の隙間から侵入してみると、翔ちゃんはそれに応えて、ゆっくりと俺の唇を吸った。と思うと、翔ちゃんはぐっと俺の肩を押して俺を離した。
「…あー、ダメっ!ダメだって…Uターンして…連れて帰りたくなるだろ?」
「Uターンしよ?」
「バカっ…帰るぞ」
翔ちゃんは、真っ赤な顔で周りを確認すると、俺に有無を言わさぬようになのか、素早くアクセルを踏んで車を走らせ始めた。
「…あー、ダメっ!ダメだって…Uターンして…連れて帰りたくなるだろ?」
「Uターンしよ?」
「バカっ…帰るぞ」
翔ちゃんは、真っ赤な顔で周りを確認すると、俺に有無を言わさぬようになのか、素早くアクセルを踏んで車を走らせ始めた。