朝から、荒れた天気だった。
強風と共に横なぐりの雨で、気温も低い。
休日だったが、これではどこにも行けないね、と家族でトランプをしていたら、インターホンが鳴った。
画面に表れたのは、 近所に住む息子のお友だちである。
「ゆきん子くん遊ぼー!公園行こー!」って。
正気か!?
この荒天で公園!?
思わず笑ってしまった私。
画面の向こうで雨に打たれているその子を、とりあえず、玄関の中へ招き入れた。
この天気では息子もすぐに誘いを断るだろうと思ったが、本人は「うーん・・」と返事をしかねている。
迷う要素がどこにある!?
お断り一択ではないのか?
そして最高におもしろかったのが、相手の子の誘い文句だった。
今日は雨だしなぁと渋る息子へ、彼はこう言ったのだ。
「ゆきん子くん!こういう雨の日にこそ、全身で自然を感じながら遊ぶのが楽しいんじゃないか〜!」
つまりはずぶ濡れになって遊ぼうぜということだが、それをあんなセリフで、芝居めかしてお友だちが言うもんだから、聞いてた私はもう吹き出してしまった。
しかしこの一言が、とうとう息子の心を動かしたのである。
「お母さん、オレ公園行くわ!」と。
ウソやろ!?
レインコート着て行くと言う。
いやいやいや、あの100円のレインコートじゃこんな大雨防げないって。
今風邪でもひいたら、修了式に出られないまま3年生が終わってしまうで。
と私は思ったんだけど、それは息子の問題であって私の問題ではない。
混同してはいけない。卒業式でもないんだから…
そんなわけで私も、親として正解かは分からないが、どしゃ降りの公園行きを止めることはしなかった。
ヤフーの雨雲レーダーによれば、そこから5時間は雨が降り続けるもよう。
もし寒くて遊べなかったとしても、もし風邪を引いてしまったとしても、本人が経験しないと分からないこともあるだろう、(と必死に思考を整理して)送り出したところ、なんと。
息子たちが出かけてわずか30分後に、雨がピタリと止んだのだ。
この展開は前にもあった。
つくづく、公園行きを親が止めなくてよかった。
その後帰宅した息子によると、公園へ行く道すがら、 他の友人たちのことも誘って回ったらしい。
そしてその全員が雨の中の公園行きを了承したという。
計6人で、砂場で泥団子をぶつけ合いドロドロになって遊んでいたら、そのうちに空が晴れてきたのだと。
友人たちと一緒にその奇跡の瞬間を味わえた息子は、きっと最高の気分だったと思う。
「こういう雨の日に、全身で自然を感じながら遊ぶのが楽しいんじゃないか〜!」
っていう、お友だちのあの誘い文句。
大人の私は冗談半分に聞いていたが、あれって真実だったんだ。
それを息子は知ってるからこそ、あれで誘いに乗ったんだ。
雨に濡れながら遊ぶという選択肢は、私の中には無い。
私の中に無い選択肢をこうして時々連れてきてくれる 「お友だち」って、子ども本人にとっても、それを見守る親の私にとっても、かけがえのない存在だと思う。
彼らのおかげで息子の心は、雨の日も、風の日も、雪の日も、天候なんて無関係に、毎日めいっぱい満たされている。
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