夫はコロナ前、海外出張に度々行っていました。各国回っていましたが、特にタイに行くときにお土産として買って帰ってくれていたのが、タイシルクのブランドである「ジムトンプソン」の小物です。

 

 

 

 

ハンカチやポーチなどがすべすべのタイシルクで作られています。日本ではあまり見ない象柄なんかも個性的で、手触り良く、所有欲も満たされ、何かを買ってきてくれるのを私も楽しみにしていました。

 

 

 

 
しかし私は、夫にもらった「ジムトンプソン」のいくつかのポーチの内の1つを、夫の目の前でゴミ袋に突っ込み捨てたことがあります。
それは数年前、断捨離に目覚め、なんでもかんでも捨てていた頃のことです。
 
 
私が断捨離に目覚めたきっかけは、ワンオペで苦しむ私を横目に好きに飲み歩く夫に、殺意が湧いたことでした。
 
夫と私「二人の思い出」としての気配を感じる物から順に、私は「こっそり」と、しかし手あたり次第に捨てていきました。
 
最低限のマナーとして、夫のいる日に「二人の思い出の品」を捨てることはしませんでした。そういう日は私も自分のものだけゴミ袋に突っ込んでいたのですが、うっかりしたことに、夫がいる日に無意識に手に取り突っ込んだものの中に「夫からのタイ土産」がありました。
 
貰った時は嬉しくて、私も目を輝かせた紫色のポーチです。鏡も内蔵されていて、しばらく気に入って使っていました。そんな私の様子をかつての夫も嬉しそうに見ていた、夫婦としての思い出の詰まったポーチを私は勢いでその日、ゴミ袋に突っ込み、その一部始終を夫が隣で見ていたのです。
 
「そのポーチ、捨てるの?」
 
そんなセリフは夫から聞こえてきませんでしたが、彼の目はたしかに、そう私に訴えていました。
 
私は私で、まずい、こっそり捨てるはずのものを、夫の眼前で捨ててしまったと内心焦っていました。
 
しかし一度ゴミ袋に入れたものを、夫が見ているからと助け出すのはさらに不自然です。私はそのポーチに何の思い出も詰まっていないフリをして、堂々とそのまま袋の紐を結び、玄関に放り投げました。そしてその後しばらく、夫の顔を見ることができませんでした。
 
私は気まずく思いながらも、結婚後いつでも夫最優先だったはずの私の微妙な心境の変化を、捨てられたポーチから夫に察してほしいという気持も新たに湧いてきました。
私をないがしろにした夫なんて、もう私の一番じゃない。そのことに、鈍い夫が気付いてくれればいい。そのきっかけになればいい。
そんなおかしな理屈で自分を正当化しながら、翌朝私は、お土産のポーチをそのままゴミに出しました。
 
 
夫とは19歳で出会い、もう20年近くを共に過ごしています。大体のことは昔話として何でも笑って話せるのですが、そうできないことも中にはあって、この「捨てたお土産」の話題も私の中では間違いなく笑って話せないことのひとつです。
 
夫はこの出来事をもうとっくに忘れているかもしれません。しかし、感情を表に出さない夫が珍しく目で何かを私に訴えた、私はあの時の光景を忘れることができません。
 
捨てる理由、そうさせた私の気持ち、あのとき夫に何かを言葉で伝えていたら、悲しそうな目をした夫の姿をこうも引きずることは無かったろうと思うのです。
 

 

★ランキング参加中★

にほんブログ村 その他生活ブログ 家計管理・貯蓄(30代)へ
にほんブログ村