「ほら。」
伸ばした俺の手を、嬉しそうな笑顔で取る。
歩きだすと同時に、今日あった事を楽しそうに話しだす。
話してる内容はぶっちゃけどうでもええような話ばっかりやけど、俺の顔は自然に笑顔になる。
学校から真帆の家へ帰るまでの時間は、俺にとってはなにより幸せな時間で、ドキドキする時間や。
「真帆」
「ん?」
別れ際、ちょっと切な目な声で名前を呼ぶ、
真っ直ぐと・・・・ちょっとだけ熱っぽく見つめながら。
「謙也?」
ゆっくりと距離を詰め、顔を近づける。
クリッとした真帆の大きな瞳に俺の顔が映りこむ。
真帆の両肩に手を置き、キュッと唇を結びながら瞼を閉じた―――――
「普通さ。ここまできたらわかるやろ?」
「まぁな・・・。」
「そやのにアイツ『どうしたん?眠いん?』とか言いよるねんで?ありえへん。」
「ほんまはわかっとったけど、謙也さんとキスすんのが嫌ではぐらかしたんちゃいますん?」
「あほか!真帆は俺にベタ惚れや!」
「うわ・・・・。自意識過剰男とかイタ過ぎやし。」
真帆と付き合いだしてもうすぐ2ヶ月。
そろそろキスがしたい。
いや、ずっとキスはしたかったけど、付き合ってすぐっていうのもがっついてる気がして、今日まで耐えてきたわけや。
そやけどもう2ヶ月やし、俺もそろそろ我慢の限界。
それとなくキスするタイミングを伺ってるんやけど、どうにもうまくいかへん。
俺が悪いんか?
けど普通は、真剣な目で見つめながら顔近づけたらキスするってわかるやろ。
真帆が鈍感すぎんねん。
そんなとこも可愛えなと思って好きになったわけやけど、キスだけでこんなに悩まされるとこの先がもっと不安になる。
「なぁ白石。どないしたらええと思う?」
「なんで俺に聞くねん。」
「お前のバイブルで調べてくれや。」
「そんなもんないわ。」
あぁ・・・キスしたい。
欲求不満でおかしくなりそうや。
「直球でキスさせてって言えばええんちゃいますん?」
「それが言えたら苦労せんわ。」
「ほんまヘタレやし。」
「誰がヘタレじゃ!俺はロマンチストなんや!」
「俺耳おかしなったみたいっすわ。耳鼻科行くんで帰らしてもらいます。」
「おう。気ぃつけて帰れや。」
「おい!誰かツッコめや!!」
あかん。こいつ等に相談したんが間違いやった。
けど・・・・。
辺りを見渡してみるも、他に相談できそうなヤツもおらんし・・・・・。
項垂れるように机の上に倒れこむ。
その俺の頭上で、白石がじゃーないな・・・とでも言うような溜息をついた。
「悩める謙也に、俺のとっておきの秘技を一つ教えたるわ。」
「マジで!?」
「そのかわり、来週1週間の昼飯は謙也の奢りな。」
「・・・・せこいな白石。」
成功したら奢るという条件付で、俺は白石のとっておきの秘技を教わった。
いつものように、伸ばした俺の手を嬉しそうな笑顔で取り、歩きだすと同時に今日あった事を楽しそうに話しだす真帆。
その会話がふと途切れた時、俺はさり気なさを装って話を切りだした。
「なぁ、今度の休み遊園地行けへんか?」
「遊園地?」
「真帆と乗りたいアトラクションがあんねん・・・・・・」
「なになに?どんなアトラクション?」
きっとジェットコ-スターとかの絶叫系を想像してることやろう。
真帆も好きやっていうとったしな。
ワクワクした顔でその先の言葉を待つ真帆に、緊張が高まる。
俺は1度咳払いしてから、少しだけ繋いだ出に力を込めた。
「観覧車に・・・・乗りたいねん。」
「え?観覧車?」
「あ・・・・ほら、ようあるやんけ。その・・・・ジンクスみたいなん。」
「ジンクス?・・・・・・・・・あぁ。・・・・・え!?」
鈍感な真帆やけど、こういう事はやっぱ友達同士でも話してるんやろう。
すぐに思いあたったようで、サッと顔を赤く色付かせた。
俺の言いたい事を理解したんか、真帆のおしゃべりがピタリと止まる。
告白した時のような、初めて手を繋いだ時のような、くすずったい空気が辺りを包んだ。
「その・・・・・お前さえ嫌やなかったら行かへんか?」
「そんな誘い方・・・・・ズルイわ謙也。」
そりゃそうや。
『行く=キスOK』ってことになるわけやからな。
反対に断られたらキスも拒まれたってことになる。
期待半分不安半分で真帆の返事を待つ。
しばしの沈黙後、空耳かと思うほど小さな声で返事が返ってきた。
「そんなん・・・・・ええに決まってるし。」
顔を真っ赤にして恥ずかしそうにモジモジとする真帆が可愛くて、「それってどっちにたいする返事?」と思わず意地悪しそうになる。
けど、そのせいで返事を撤回されたら困るから、ニヤケそうな顔と共に必死に堪えた。
一石二鳥
(誘いの返事もキスの返事も同時に聞ける。ほんでデートもできるしキスもできる。さすが白石!!)
(せやろ。俺って絶頂っ!!)
(あほな先輩ばっかりで頭痛いっすわ)
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こんなんなりましたけど・・・・・。エヘッ。←
ご希望通りになってますでしょうか?
謙也を弄くり倒すのが大好きなので、カッコいい謙也をお求めでしたらスミマセン。
これ書いてて思ったんですけど、私観覧車のてっぺんでチューとかしたことないや。
わお。王道なのに!!
真帆さんリク頂きありがとうございました!