4周年ありがとう企画 氷羅さんリク柳生SS | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

肝っ玉かあちゃんのひとり言

妄想の世界に逝っちゃってるヤツの戯言

年が明けて中学生生活最後の学期が始まった。

「悔いの残らないように」と、どの先生も口を揃えて言う。


悔いの残らないように・・・・




「ひろちゃんは何かやり残した事とかあるの?」

「やり残した事ですか?」

「うん。これをやっておかなきゃ悔いが残る!っていうの、ある?」




私はなにかあるかな?

考えてもこれといった物が浮かばない。


うちの中学はエスカレーター式だし、ほとんどの子がそのまま持ち上がるわけで、高校に行ってもあまり変わらないように思うんだよね・・・・。

だから『悔いが残らないように』って言われても、まだ高校生活3年間あるし、その時でいいじゃん。って思ってしまう。




「そうですね。私はありますよ。」

「え?なに?なに?」

「氷羅さんに言えば、協力してくださるのですか?」

「私にできる事なら協力するよ!」




なんでもそつなくこなしちゃうひろちゃんにも、やり残した事があるんだ。

しかも私に協力を頼むなんて・・・・。

滅多に人を頼らないひろちゃんに頼られた事が嬉しくて、「で?やり残したことってなに?」と身を乗り出した。




「好きな人と・・・・手を繋いで一緒に帰りたいです。」




え?

ちょっと待って。

好きな人?




「できるなら朝も一緒に登校したいですね。」

「へぇ・・・・・」

「お昼も一緒に食べて・・・・あぁ。手作り弁当を作っていただきたいです。」

「なるほど・・・・・」

「あと・・・・。好きと言う気持ちを抑える事無く伝えたいです。」




なんか・・・・・超語ってるんですけど?


そっか。

ひろちゃんって意外に情熱家だったんだ。

そしてけっこう乙女なみに夢見がちなんだ。

知らなかったなぁ。


ひろちゃんのやり残した事がこんなことだったなんて予想外でちょっとびっくりだけど、ひろちゃんも恋愛とかしてこんな風に悩むんだと思うと可愛く思う。




「けどさ、それって全部高校でもできるよね?」

「そうですね。」

「なら高校に入ってからでもいいんじゃないの?」




悔いが残るって、「あの時にあれやっとけばよかった・・・・。」って思うことでしょ?

中学の間にどうしてもやっておかなきゃいけないってほどじゃないような気がするんだけど・・・?




「クラスメイトとしてですが、今は他の異性よりは親しい関係だと私は思っています。」

「ふーん。」

「ですが高校になればクラスが離れてしまうかもしれませんし、そうすると今のようにお話もできなくなってしまうかもしれません。」

「え?じゃぁ好きな人ってこのクラスなの?」

「ええ。」




まじで?

ひろちゃんが好きな子・・・・誰だろう?




「ねぇ。誰なの?教えてよ。」

「・・・・・・・。」

「もう。協力して欲しいんでしょ?なら教えてくれなきゃ協力もできないじゃん!」




それっぽい言い方をしてるけど、これはただの好奇心だ。

ひろちゃんの好きな人が誰なのか知りたくてウウウズしてる。


きっとそれが顔に出ちゃってるんだろう。

ひろちゃんは呆れたような溜息を一つついて、「やはりけっこうです。」と私から顔を背けてしまった。




「えー!!なんで?」

「どうやら告白しても見込みがなさそうなので。」

「わかんないじゃん!まだ告白もしてないのに。」

「いいえ。わかります。」

「でもさっきは・・・・・。」




告白してもいいって思ったんじゃないの?

だから協力してくださるのですか?って聞いたんでしょ?

なのにどうして急に考えが変わったんだろう?




「それじゃあ・・・悔いが残ったままになっちゃうよ?」

「いえ。彼女の気持ちがわかった分、少しスッキリしました。」

「え?」

「私に好きな人がいると聞いても顔色一つ変えない。それどころか喜んで協力すると言う。答えとしては十分でしょう?」




ん?

どういう事?


喜んで協力するって・・・私以外にも協力要請してた?

いやいや。

この話の流れで普通に考えれば、それって私・・・・だよね?




「えー!!??ひろちゃんの好きな人って私!?」

「知りません。」

「ちょ。放置プレイはやめてよ。」




ただの自惚れなら超恥ずかしいけど、YESともNOとも言ってもらえない宙ぶらりんのままってひどすぎる。

「ひろちゃ~ん」と情けない声を上げながら腕に縋りつくと、困ったような、少し恥ずかしそうな顔で私を見つめてきた。




「もし私の好きな方が氷羅さんだと言ったら、あなたはどうするのですか?」




どうする・・・・・?

どうするだろう?


ひろちゃんが私を好き・・・・。

嬉しいか嬉しくないかなんて、考えるまでもなく嬉しい。

でもそれはひろちゃんだからなのかな?

告白なんて初めてされたから、ただ舞い上がってるだけ?




「とりあえず・・・・・真剣に考えるための実感が欲しいんですけど・・・。」

「あなたはどこまでも酷い人ですね。」

「嫌いになった?」

「いえ。そういうところも含めて、氷羅さんが好きですよ。」




「好き」という事葉を聞いた瞬間、答えはあっさりと出た。


なんだ。

私も好きだったんじゃん。

だってこんなにもドキドキしてる。


ひろちゃんと付き合ってる自分を想像する。

今度は他の男の子と付き合ってる自分を想像する。


うん。やっぱりひろちゃんだから嬉しくて、ひろちゃんだからドキドキするんだ。




「今日から一緒に帰ってあげてもいいよ。で、でも、手を繋ぐのはもう少しお預けだからね!」

「それは・・・・・どう受け止めればいいのですか?」



悔いが残らないようにって話から、まさかこんな話に発展するとは・・・。

なにかのテレビで『人生はタイミング』なんて偉そうな評論家だったか政治家だったかが言ってたのを思い出す。

私がこの話をひろちゃんに振らなければこんな展開にはなっていなかったのかもしれないと思うと、タイミングって確かに大事かも・・・・・。


戸惑いの表情を浮かべるひろちゃんを前にそんなことを思った。



「朝も迎えに来てくれるなら一緒に行ってもいいし、お弁当も作って来てあげる。」

「氷羅さん。」

「だから・・・・・もっと好きって言って。」




悔いは残さず、タイミングは大事に

(友人に彼女だと紹介して、自慢してみたいですね。制服デートもしたいですし、あと・・・・・・)

(ひろちゃんって意外と貪欲だね)

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久々の柳生かも?

自分のミスで1回消えちゃってかなり凹んだけどなんとか出来上がりました!

こまめな保存が大切だと改めて思いました。ww


氷羅さんリクありがとうございました!!