雪が俺の事を好いてくれとる事は俺が一番わかっとるし、それを疑うような事もない。
じゃが、たまにはこう・・・・ヤキモチなんかも妬いて欲しいと思う。
ヤキモチを妬かせて喜ぶなんて最低。と雪の声が聞こえてきそうじゃが、そういう刺激も時には必要じゃろ?
それに、無防備な雪を見ていつもヤキモキするの俺の気持ちを少しはわからせたいという思いもある。
雪も俺と同じ気持ちを1度味わえば、少しは周りの男へ警戒心を持つじゃろう。
姉貴が貸してくれた雑誌に書かれた『彼氏(彼女)にヤキモチを妬かせる方法』ってヤツを、これから実践してみようと思う。
①他の異性とメールをしているかのように、目の前でメールする。
雪の部屋でまったりとした時間を過ごしている時に、テーブルに置いてあった携帯が震える。
寝た振りをしてベッドへ寝転ぶ俺を、「携帯鳴ってるで。」と雪が揺り起こした。
ダルそうにしながら携帯を取り、「メールじゃ・・・・」なんて呟いてみる。
・・・・雪の反応はなし。
適当にメールを打ち、送信し終えた携帯をさっきと同じテーブルへ置く。
すぐに返信が来て、またダルそうに携帯を取る。
メールを打ち携帯を閉じる。今度はテーブルに置く間もなく返信が来る。
メールを打つボタン音とメールの着信音が交互に響く中、雪は相変わらず漫画を読んどる。
俺がこんな頻繁にメールをするなんて珍しいことやのに、気にならんのか・・・?
言うとくが相手は姉貴。
「この礼は高くつくから」と言われたが、雪を妬かせるためなら安いもんじゃと頼んだんじゃが・・・。
まったくの無反応に空しくなってくる。
反応なしと姉貴にメールを送れば、いくつかのアドバイスが返って来た。
「はぁ。しつこいのう・・・。」
「ん?誰からなん?」
おお!さすが姉貴じゃ!
初めて反応を見せた雪に嬉しくて笑ってしまいそうになる。
じゃがこれからが勝負じゃ。
「姉貴の友達にメアド教えてくれって言われての。姉貴の友達じゃし断れんで教えたんじゃがしつこくてのう。」
俺が簡単に携帯の番号やメアドを教えたりせん事は雪もわかっとるから、怪しまれんために『姉貴の友達』を強調する。
チラッと雪の顔を見れば特に怪しんではおらんようじゃ。
困った口ぶりをしながらも、少し楽しげにメールを打ち続ける俺を、雪がじっと見つめている。
これは効果ありか・・・?
「ふーん。大変やな。」
「・・・・・・それだけか?」
「なに?『お気の毒に』の方がよかった?」
「・・・・・・・・。」
雪の言葉にメールを打つ気力もなくなる。
俺は携帯を投げ捨て、雪に背を向けて不貞寝をした。
③元カノが美人に(可愛く)なっていたことを話題にする。
雪がよく読んどるファッション雑誌をコンビニで購入し、ついでにアイスもつけて雪へ渡す。
突然の訪問に驚きながらも、アイスと雑誌を嬉しそうに受け取り、俺を招き入れてくれた。
会話もそこそこに、アイスに食らいつきながら雑誌を読みだす。
俺は雪の背中に回り、後から抱き締めるようにして雪の肩に顎を乗せた。
そこから雪の見とる雑誌を覗きこむ。
「そのモデルええ体しとるのう。」
「そうやな。」
「胸もでかいし、このラインがたまらんぜよ。」
「確かに・・・・。」
雑誌やテレビに出とるヤツをいくら褒めても雪が気にせん事はもう知っとる。
このモデルで雪を妬かせようと思ってわざわざ雑誌を買ってきたわけやない。
「そうじゃ。この間偶然元カノに会ったんじゃが。」
「元カノ?」
「なんとなくこのモデルに似とったのう。」
雑誌を見ていた雪が俺の方を振り向く。
少し眉間に皺が寄ってるように見えるのは気のせいではないはず。
俺は追い討ちをかけるように元カノを褒めるような言葉を並べた。
「もともと綺麗な顔しとったが、数年でさらに磨きがかかったようじゃな。それにあの身体は男からするとたまらんじゃろな。」
「あんた元カノとか覚えとったん?」
「・・・・・・・・・」
怪訝な顔をしとったんはそのせいか。
元カノの話に妬いてくれたんかと思ったのに・・・・。
ほんまに思い通りにならん女じゃ。
「頭からは消えさっとったが、身体が覚えとったんじゃろな。」
「ふーん」
「雪もあれくらいのフェロモンがあればええんじゃが・・・・。まぁ、まな板に干しブドウじゃどうしようもないがのう。」
ムッとしたせいで飛び出した言葉。
ガキ臭い感情に自己嫌悪が広がる。
言った後に言い過ぎたと思ったが、思った時にはもう遅い。
「フェロモンのない私に欲情するあんたはかなり奇特な人間やねんな。」
「お、おい。」
「乳もくびれもない幼児体型で悪かったな!!」
俺を突き飛ばして雑誌を投げつけてくる雪。
妬かせるつもりが、怒らせてしもたようじゃ。
じゃが、怒るところがズレとると思うのは俺の気のせいか?
昔の女の身体を覚えとる事に関しては気にならんのか・・・・?
なんだか釈然とせんが、今はとにかく雪のご機嫌をとる事が大事じゃ。
食い終わったアイスのゴミをゴミ箱に投げ入れ部屋を出て行こうとする雪を、俺は慌てて追いかけた。
②友人から合コンに誘われ、楽しみにしていることを告げる。
昼飯を食っとる時に、ふと思い出したかのように声を上げた。
「あ、そうじゃ。」
「なに?」
「さっき合コンに誘われてのう。」
ふりかけの胡麻を唇につけたままの雪が、すっと視線を上げて俺を見る。
なにを考えとるのかまだ感情は読めんが、その先の言葉を待っとるようじゃ。
「どうしても人数合わせに来て欲しいんじゃと。」
「合コンとかウザイんちゃうかったん?」
「まぁのう。じゃが全て奢りじゃ言うし、たまには友達付き合いっちゅーのも大切にせんといかんじゃろ?」
いかにもらしい言い訳を並べる俺を、箸を咥えながらじっと見つめる雪。
今まで断り続けとったのに急に行くなんて、何か理由じゃあるんやないかと普通なら疑うはず。
なのじゃが・・・・・・・
「タダで飲み食いできるなんてええな・・・・。」
「・・・・・そうくるか?」
「何が?」
「なんでもなか。」
彼氏が合コンに行く事よりも、ただ飯食える事の方が大事なんか?
ムカつきをぶつけるように雪の唇に噛みつき、唇についた胡麻を舐め取ってやった。
【3】動物をかわいがって見せつける。
人間でダメなら動物ならどうじゃ!
論点がズレとるなんて事はもうこの際気にしない。
とにかく雪のヤキモチを妬くところがみたい。
親戚の家で飼っとる家で子猫が生まれたと聞き、早速雪を連れて邪魔させてもらうことにした。
雅治が家に来るなんて珍しいと言いたそうな叔母さんの視線を無視して、雪と子猫の元へ向う。
まだ小さな子猫に、雪が「可愛いー!!」と普段聞く事がないような甲高い声を上げる。
それくらいの声で「雅治カッコイイ!」と言って欲しいもんじゃ。
雪が1匹の猫を抱き寄せ頬擦りをする。それを横目で見ながら、俺も足元に擦り寄ってきた子猫を抱き寄せた。
耳の後ろや顎を撫でてやればゴロゴロと喉を鳴らしながら目を細める。
こう言う顔をされるともっと苛めたくなるのはなぜじゃろう?
「気持ちよさそうな顔しとるのう。ほれ、もっと鳴いてみんしゃい。」
「ちょっと。言い方がなんかエロイ。」
顔をしかめる雪を他所に、さらに子猫とじゃれあう。
柔らかい体とつぶらな瞳に段々可愛さが増してきて、本来の目的を忘れてしまいそうになった。
じゃが、隣から聞こえてきた雪の声に、すっと気持ちが冷めていく。
「やっ・・・もう。そんな舐めたらくすぐったい。」
「・・・・・・・・・。」
「あはは。もうあかんて・・・。」
「・・・・・・・・。」
「なぁ、見て見て雅治。私の膝の上気に入ったみたいやで。」
唇ばかりを狙ったようにを舐める子猫。
手の甲に薄っすらとついた爪後。
我が物顔で雪の膝で眠る姿。
ムカムカとした感情が湧き起こってきて、俺は雪の腕を引いて立ち上がらせた。
驚いた子猫達がちりちりに走り逃げて行く。
「何すんのな!」
「行くぜよ。こんなところで猫とじゃれあっとる暇はない。」
「はぁ?別に急ぎの用事もないやん。」
「猫とじゃれあうくらいならもっと俺をかまいんしゃい!!」
「・・・・なにそれ。あんた猫に妬いてんの?」
雪を妬かせるはずが、俺が妬いてどうする?
なにをやっとるんじゃ俺は・・・・?
「はは。あんたも可愛いとこあんねんな。」
「だまりんしゃい。」
「まぁまぁ。拗ねんな拗ねんな。」
愉しそうに笑いながら腕を絡ませ身体を寄せてくる雪。
こんなはずやなかったのに・・・・・・。
またしても失敗じゃ。
うまくいかんのぅ。
雪の楽しげな笑い声と子猫達の鳴き声に紛らせるように、俺はこっそりと溜息をついた。
ヤキモチを妬かせる方法
(次はどの作戦で行くかのう?)
(あんた必死やな)
(何がぜよ?)
(べっつに~。なんでもない)
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仁王がヤキモチを妬くという話ならズラズラ書けるんですけど、妬かせるために必死になる姿っていうのはなかなかむつかしかったです。
いつものごとくヘタレ仁王になっちゃいましたが、私はこういう仁王も好きです。
ヤキモチを妬かせる方法で検索して出てきた物をいくつかピックアップしてみました。
でもこんなことでやきもち妬く?って私は思いましたが・・・。
妬かせようとしてるのに気づいちゃうと意地でも妬いてやるか!って気になりますよね?
リアルなら「ウザッ」って思いますが、仁王なら「可愛いヤツめ♪」って思うんだろうな・・・。ww
仁王と雪でのリクを頂いたこと、めっちゃ嬉しかったです。
まぁちんさんリクありがとうございました!!