恋の予感?
「ありがとうね麗華!」
「うん。ええよ。」
「じゃぁ早速渡してくる!!」
「頑張って~。」
頬を赤く染めながら走り去っていく友達の背中を見送りながら、そっと溜息を吐き出す。
友達の小脇に抱えたバッグから覗いて見える真っ赤なラッピング。
それは、数分後には我が家の裏に住む幼馴染に手渡されているだろう。
きっとデレデレした顔で「ありがとうな」なんて言いながら受け取るんだろうな・・・。
そんなあいつの顔を思い浮かべ、クスリと笑いを漏らす。
だけど一人で笑ってる自分の姿が虚しく思えて、「あほらし」と呟きながら家の中へと入った。
今年は誰にもチョコをあげる予定がない私に、「お願いチョコ作って!」と頼み込んできた親友。
「教えて」とか「手伝って」じゃ無くて、「作って」なんだと苦笑いしながらも、ま、いいかと軽くOKしてしまったんだけど・・・・
その相手がまさか謙也だとは思わなかった。
中学に上がってから急にモテ出して、あいつの事を好きだと言う女の子は私が知ってるだけでも10は超える。
あんなヤツのどこがいいのだろうと思うのは、私が幼い頃からあいつを知りすぎているからだろうか?
謙也の為のチョコを作るのは数年振りだ。
毎年謙也ママからだけだと可哀想だと思って渡していたけど、
それも必要なくなったようなので、私はあげるのをやめてしまった。
こんな形で再び作る事になるなんてなぁ。
謙也にあげるチョコだけど、あげるのは私からではないわけで・・・。
適当に作るわけにもいかず、できたチョコケーキは我ながら上出来だと思えるほど立派なものになった。
これをあいつにあげるなんてもったいないと思わなくもないけど、やっぱりダメなんて言えるはずもなくて、
「すごいよ麗華!」と興奮する親友に乾いた笑みを返したのだった。
張り切ってチョコを作ったせいか、ソファの上でいつの間にか眠ってしまっていたようだ。
がやがやと騒がしい声に目を覚ます。
「うるさいな・・・・・」
「やっと起きたか?」
まだはっきりしない思考の中に飛び込んできた声に、私は目をしばたたかせた。
この耳障りな声は・・・・・一人しかいない。
「お前、寝てても起きとってもブサイクやな。」
「・・・・・・あんた人ん家でなにしてんの!?」
「あ・・・・・・ちょぅ、お前に用あってな。」
「用?なんの?」
寝転んでいた身体を起こし、首をコキコキしながら訪ねれば、なぜかキッチンにいるお母さんを気にするようにチラチラと見る。
なんか言い難いことなんやろか・・・?
「お母さん、ちょっとコンビに行って来るわ。」
「ならいつものアイス買って来て。」
「はいはい。」
ソファの背もたれに掛けてあった上着を羽織り、謙也に「行くで」と目で合図して外に出た。
「なんじゃこれはー!!!」と叫びたくなるよな寒さに、身を縮こませる。
片付けていない部屋に入れるのがいやで外に出たけど、相手は謙也やし気にせんでもよかったかも。
カーポートに止めてある車を風除けにするように、2人並んでしゃがみ込んだ。
「で。なんなん?」
「え?」
「なんか用あんねやろ?」
「あぁ・・・・・」
用事があってきたって言うたくせに、言い難そうに頭を書く謙也。
これが部屋の中なら謙也が言い出すまで待ってあげなくもないが、この寒さの中『待つ』なんて無理。
はよ言えよと言わんばかりの態度で「なんなんよ!?」と言葉をきつく問い詰めた。
「今日お前の友達がバレンタインチョコ持ってきてんけどな・・・・・。」
「あぁ・・・・。」
なるほど。その話か。
もしかしてあの子、告白したとか?
そして付き合う事になったとか?
謙也の様子からしてそういう話に違いないと思った私は、ちょっとウキウキしながら謙也の話を待つ。
「あのチョコケーキ。・・・・・・・お前が作ったんやろ?」
「・・・・・・え?」
予想外の言葉。
不意打ち過ぎる問い。
寒さのせいもあってすぐに反応できない私に、謙也はさらに言葉を続ける。
「食ってすぐわかったわ。あれ、お前やろ?」
「いや・・・・・・それは・・・・・・どうやろ・・・・?」
「わからん思ったんか?俺がお前の味わからんはずないやろ?」
妙に真剣な謙也に戸惑う。
なにをこんなにマジになってんの?
それにお前の味がわからんはずないとか・・・・ちょっと恥ずかしいんやけど!!
「お、お前の味って・・・・あんた、そんな私の料理食ってへんやろ!!」
「せやけどわかってまうねんから仕方ないやんけ!」
「意味わからんわ!」
「俺かて意味わからんわ!なんでお前みたいなん好きになったんか!」
「・・・・・・・え?そうなん!?あんた私のこと好きやったん!?」
「あ・・・・・」
コイツほんまにアホや・・・・・。
ついうっかり告っちゃいました。なんてベタなことするなんて・・・・。
お前は少女漫画の主人公か!
顔を真っ赤に染めながら頭を抱える謙也を、心の中でアホアホと貶す私やけど、たぶん私の顔も相当真っ赤に染まってるはず。
だって、さってさっきまでの寒さが全然感じひんもん!
「はぁ・・・・ばれてもうたもんはしゃーない。どうせ今日言うつもりやったし。」
「あ、そうなんや・・・・・・」
「もうちょい可愛い反応せーや!」
「そう言われてもな・・・・。」
いきなり告られて、しかもその相手は謙也とか、可愛い反応しろとか言われても困る。
いや、ほんまはどういう反応したらええんかわからんだけ。
告白とかされたことないし・・・・。
ムズ痒いようなくすぐったいような・・・・・
なんとも落ち着かない空気が2人の間に漂う。
意識なんてした事なかったのに・・・・・
異性なんて思ったことなかったのに・・・・・・
隣にいるのはただの謙也のはずやのに・・・・・
胸がドキドキしてる。
これが恋?
・・・・まさかなぁ。
ただ告白されて舞い上がってるだけやろ?
告白してきたんが謙也やなくても同じ様な反応してたはず。
けど・・・嬉しいと思う気持ちは嘘じゃない。
「えっと・・・・」
「返事はまだええから。」
「え?」
「どうせ俺の事男として見た事ないやろ?」
さすが幼馴染。ようわかってらっしゃる。
好きな相手に異性として見られてへんってめっちゃ切ないよな・・・なんて他人事のように思いながらも、
これからは嫌でも意識してまうんやろな・・・・・と思うとまた胸がドキドキした。
「とりあえず・・・・今から俺の家けーへん?今日はお前と一緒にいたいし・・・・。」
「ええけど・・・・。」
一緒にいたいとか、めっちゃ恥ずかしいんやけど!!
こんなドキドキさせられとったら、すぐにでも謙也のこと好きになってまうかも。
・・・・・なんて単純過ぎるやろか?
「うまいチョコケーキ食わしたるわ。」
「それ私が作ったやつやろ?」
「細かい事気にすんなや。」
「お返しは3倍返しやで。」
「いやいや。お前から貰ろたんちゃうし。」
「作ったんは私や!」
来年のバレンタインは、初めての本命チョコを作る事になりそうや・・・・。
そんな予感を抱きながら、謙也の家へ続く道を歩いた。
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友達はどうすんねん!?ってツッコミはなしで。ww
Happy Valentine!!
あげる方も貰う方もドキドキの日ですね。
せっかくのバレンタインなので短いですが夢を書いてみました。
謙也相手だとどうも甘くならない。困ったもんだ。ww
昨年のバレンタインは雪やったんですけど、今年は雨です。
傘を差しながらチョコを渡すシーンっていうのも、なんかですね♪
さて、うちの長男はいくつチョコを貰えるのかな?