このお話は高校2年という設定です。
そういうのが苦手な方は観覧にご注意ください。
続き物となっております。 こちら↓を先にお読みください。
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Just for you
部活が嫌いなわけじゃないけど、放課後自由な時間がいっぱいあるって言うのは嬉しいもので・・・
「今日から部活休みだろ?ボーリング行こうって言ってんだけどこいよ!」
なんて誘いを受ければ断るはずもない。
仁王はあんまこういうのには来ないけど、今日は珍しく来るらしく、
男約10人ほどで駅向こうのボーリングやカラオケなどが入ってるアミューズメント施設へと向った。
ボーリングは久しぶりだけど結構得意だったりする。
たまには違う球遊びもいいよなぁ~なんて気軽に遊ぶつもりだったのに
やり始めるとなんか真剣になってきて、そのうち1番成績悪いヤツが夕飯奢り!とか誰かが言い出し
やけにヒートアップしたボ-リングとなった。
負けらんねーとみんな必死になる中で、仁王はムカつくほどスカした顔でストライクの連続で、
横のレーンにいた女子大生っぽいお姉さん達にキャーキャ言われてた。
あいつって何やらしても様になるし、それなりにできちまうし
悔しいけど男の俺から見てもカッコイイと思う。
遊び癖はあるけど女にモテるのもわからなくはない。
今んとこ本命の女がいるわけじゃなさそうだけど・・・・
仁王が本気で本命を好きになったりしたらどうなるんだろう?
けど女の事で頭悩ましたりする仁王って想像つかねぇかも・・・。
なんだかんだで5ゲームほどやり終えて、
最下位のヤツの奢りで同じ施設内のラーメンを食いに行き、
「んじゃ帰るか!」ってなった時には夜の10時半頃になっていた。
なんか久々に『遊んだ!』って感じで、今晩はよく眠れそうだな・・・なんて思いながら
ぞろぞろ駅に向って歩き出した時、誰かの「あれ西崎じゃね?」と、いう声が聞こえた。
西崎・・・って歌織?
まさかと思いながらも、そいつの視線を辿ると、駐車場の隅に立つ人影が二つ・・・。
暗いし、けっこう離れてるし、はっきり顔が見えるわけじゃない。
だけどその人影は・・・・間違いなく歌織だった。
こんな時間にこんな場所で何してんだよ?
しかも・・・・・・アイツは・・・・誰だ?
歌織の横にいたのは見知らぬ男。
タバコを吸ってる所を見ると成人してるんだろう。
誰だそいつ?
何でそんなやつと一緒にいるんだ?
「あれ、西崎の彼氏かな?」
「年上だよな・・・・どう見ても。」
「そういや西崎ってなんか噂あったよな?」
「ああ・・・誰とでもヤルとかって話だろ?」
「あれホントなのかな?」
「さぁどうだろ?でも俺西崎なら1発お願いしたいかも。」
「あはは。俺も俺も!」
いつもの馬鹿な冗談・・・・。
わかってっけどそいつらの言葉を聞くたびに怒りが湧き上がる。
自分だってちょっと前まで同じ事思ってて、同じように冗談言い合ってたくせに・・・
だけど今の俺は、歌織がそんなヤツじゃないって思ってるし、
そう信じてる。
でも・・・・
もしかしたら歌織の兄ちゃんとか・・・?
他にも連れがいてそいつの彼氏とか・・・。
いくらだって考えようと思ったら考えられるけど、
どう見ても歌織とその男は2人っきりで・・・
それに歌織は「金曜は用事がある」って言ってた。
だから土曜にしようって言ったんだろ?
なのになんで・・・?
歌織の用事ってそいつと逢う事だったのか?
俺との予定を断ってまで?
楽しそうに談笑しながら、時折その男が歌織の頭をコツいたりして・・・・
じゃれあってるようにしか見えねぇ・・・・。
何笑ってんだよ?
何でそんな楽しそうなんだよ・・・。
俺の知らないところで、歌織はこうやって俺の知らない男と逢ってたのか・・・?
やっぱあの噂は本当だったって事?
俺はすっかり騙されてた?
なんだよ・・・・・なんなんだよ・・・・。
目の前の光景に『裏切られた』の文字が頭を掠め、握り締めた手が震える。
もうこれ以上見ていたくなくて俯くと
「勝手な想像で盛り上がるんじゃなか。ほれ、行くぜよ。」
と、仁王がみんなに声をかけ歩き出した。
みんなが仁王に続き歩き出す。
数歩歩けば今の事なんか忘れたかのように全然違う話をしだすヤツら。
そいつらの後ろで、俺は抑え切れない感情に下唇を噛み締めた。
歌織の噂を面白おかしく話し、それをネタに笑うコイツらも・・・
俺じゃない男の前で笑っていた歌織も・・・・・全てがムカつく・・・・。
駅についてそれぞれが帰路に着く時、不機嫌モードのまま挨拶もそこそこに背を向けた俺に、
仁王が声をかけてきた。
「丸井。」
「・・・なんだよ?」
「お前さんの信じるもんはなんじゃ?」
「はぁ?」
いきなり何言ってんだコイツ?
機嫌の悪い時に謎かけみたいな事を言われムッとしたけど、
仁王の顔がいつものようなからかう顔じゃなくて、怖いくらいに鋭い目をしていて背筋が冷たくなる。
「目に映るもんばかり追いかけとたら、大切なものを見過ごすぜよ。」
「・・・・・何が言いたいんだよ?」
「さぁの。ただの独り言じゃ。」
それだけ言うと仁王はさっさと自分の帰る道へと歩いて行ってしまった。
仁王は何が言いたかった?
俺に何を伝えたかった・・・?
目に映るもんばかり・・・・?
それってさっきの歌織とあの男の事・・・?
仁王は俺と歌織の事・・・・どこまで知ってんだろう?
何も言わねーけど、仁王がまったく感づかないはずもない。
アイツはすでにもう全て知ってしまってるのだろうか?
だとしたら・・・今の言葉は・・・?
俺の信じるもの・・・・?
そんなの・・・・・・・そんなの俺自身わかんね-よ・・・・
結局よく眠ることもできねーままに、土曜日の朝を迎えた。
一晩色々考えたけど、考えれば考えるほどにわかんなくなってきて、
ぐちゃぐちゃ考えるくらいなら聞いてしまおうと思った。
約束の時間にとりあえず歌織の家の前まで来たものの、
チャイムを押す指が動かない。
覚悟決めては来たけど、今歌織に逢って普通に話す事ができるんだろうか?
昨日よりかは落ち行いてるものの、怒りのままに歌織に心ない言葉をぶつけてしまいそうで怖い。
まずは話を聞こう。
そうだ。
何か理由があったかもしんねーし・・・・
意を決してチャイムを押せば、インターフォンが使われる事なく歌織が玄関扉から顔を出した。
「いらっしゃい。」
「お、おう・・・。」
いつもと変わんねー歌織。
いや・・・少し嬉しそうに見える。
そうだよ・・・こんなに俺を思ってくれてる歌織が・・・俺を裏切るはずがない。
歌織の後について部屋の中へと入る。
2週間ほど前に来て以来の歌織の部屋には、
あの時はなかった小さなローテーブルが置かれていて、
そこに教科書やらノートが積まれていた。
「勉強する気満々だな・・・」
「勉強しに来たんでしょ?」
クスクス笑いながら床に座った歌織に続いて、俺も腰を下ろす。
向かい合ってまっすぐ顔を見る勇気はなくて、歌織の右斜め横に座った。
それほど大きなテーブルでもない為、手が触れ合ってしまうほどの距離。
これなら向かい合ったほうがよかったかも・・・・と少し後悔した。
歌織はそんな事気にもせず、「まず何からしようか?」と俺に聞いてきた。
このまま勉強を始めたとしても絶対頭に入るはずもない。
いきなり本題に入るのもどうかと思ったけど、回りくどいのは性にあわねぇ。
俺は手にグッと力を入れて、思い切って心にある疑問をぶつけた。
「あのさ・・・・」
「ん?」
「昨日・・・・夜何してた?」
「夜?家にいたけど?」
「ずっと・・・?」
「ちょっと用事で出ててたけど・・・どうして?」
特に動揺を見せるでもなく、不思議そうに首をかしげる歌織。
本当に何もないのか?
だけど歌織は絵梨の前でも平気な顔ができるくらいだ。
俺に嘘をつくくらい容易い事なんじゃ・・・・?
そんな事を考えてしまう。
「用事って?」
「どうしたの?何でそんなこと聞くの?」
「言えねーの?」
「え?」
聞けばすぐに答えてくれると思ってた。
だけど俺が望む答えは何一つ聞けなくて・・・・それどころか誤魔化されてるような気さえして・・・
「俺に言えねー事してたのかよ!?」
吐き捨てるように、怒気の含んだ声があがった。
ダメだ・・・・もう抑えきれねえ・・・。
ちゃんと話そうと思うのに、荒げた声と共に込み上げた興奮を鎮める事ができなくて
激昂で脳内が熱くなり、自分で自分をコントロールできそうにない。
「あの男誰なわけ?」
「男?」
「とぼけんのかよ?」
「ちょっと待って・・・何の話?」
俺の腕を掴もうと伸ばしてきた歌織の手を払う。
パンッ!と乾いた音がして、俺は咄嗟に息を呑んだ。
驚きと戸惑い・・・・そして悲しみが浮かんだ瞳。
そんな目で俺を見んな・・・・。
お前が・・・・お前が悪いくせに!!
俺は横に置いてあった鞄を掴み立ち上がった。
「今日は帰るわ・・・」
「ブン太!!」
「悪い・・・ちょっと考えたい・・・。」
ちゃんと話を聞こうと思ったのに・・・・口から飛び出る言葉が止まらない。
これ以上居てはダメだ。
これ以上いたら俺、何言うかわかんね・・・・。
「ブン太・・・・。」
小さく漏れた悲しそうな歌織の声を背に、俺は振り返ることもなく歌織の部屋を出た。
ちゃんと聞けばわかると思ってた。
ただの俺の勘違いだって・・・・・そう笑えるはずだったのに・・・・。
怒りなのか、悲しみなのか・・・・?
罪悪感のような・・・・・喪失感のような・・・・・
自分でもよくわかんねぇ様々な感情が渦巻き、
なんだか無性に泣きたい気持ちになった・・・・・・・。
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ブンちゃんが見たのは歌織ちゃんと見知らぬ男の人でした。
これはそう長く引きずるつもりはないので、次回解決させたいと思います。
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