丸井vs仁王連載  Vol.10 | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

肝っ玉かあちゃんのひとり言

妄想の世界に逝っちゃってるヤツの戯言

このお話は高校2年という設定です。
そういうのが苦手な方は観覧にご注意ください。


続き物となっております。 こちら↓を先にお読みください。


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歌織と付き合い始めてもうすぐ1ヶ月になる頃。


俺達の関係は・・・・少しづつ変わりはじめていた。








Just for you











ありえねぇメンバーで弁当を食ったあの日から、

絵梨はしょっちゅう教室に来て、歌織や仁王達と一緒に弁当を食う事が多くなった。


絵梨はかなり歌織を気に入ったようで、最近じゃ俺に、というより

歌織に会いにクラスに来るまでになった。


俺としては絵梨と歌織が仲良くなられると色々困るわけで、一人色々とテンパってたんだけど、

歌織は学校じゃどんな事があってもクラスメイトとしての態度を崩さなかった。


絵梨が俺とのデートの話とか、目の前でイチャついたりとか・・・
そんな事をしても、一切何も言っては来ない。


この間だって、絵梨が日曜に俺と一緒に行った映画の話を歌織に聞かせていたけど、

動揺したのは俺だけで、歌織は「そうなんだ。」と、笑って聞いていた。



最初は何も言ってこない歌織にラッキーって思ってたくらいだったけど、

今の俺はそんな歌織を見ると胸が苦しい・・・・。





歌織に告白された時、俺は軽い気持ちで言ってきたんだと思ってた。
だってあんな噂聞いたとこだったし?
高等部なってから全然話した事もなかった俺と、たった1日カラオケで再会しただけで
告白とか、マジだなんて思わねえだろぃ?


だから絵梨の事も、別に真剣じゃないから何も言ってこないんだ。とか、
俺との付き合いを黙っとくって言うのも、歌織的にもその方が他の男と遊べるから都合いいんじゃねえの?とか
そんな風にも思ってた・・・・。




歌織とは毎日メールや電話をするわけじゃねーし、デートなんてした事もないけど、
週に数回、夜にいつもの公園で逢っていた。


その時の歌織は、学校とは全然違って、なんていうか・・・・すっげえ可愛い。


嬉しそうに話したり、俺のちょっとした言葉で照れたり・・・・
公園で話してる間は手を繋いで欲しいって言われたのはいつだっけ・・?


その時もめちゃくちゃ顔が赤くて恥ずかしそうにしてた。


繋いだ手を離したくないって言ってるかのように、ぎゅっと握ってきて、
帰り際に手を離す時は寂しそうな顔するし・・・・


そんな歌織を見ていると、こいつマジで俺の事好きなんじゃねーの?って錯覚してくる。


いや、こうやって男を落とすのが手なんだ!なんて頭で否定してみても、
なぜか心が「そうじゃない。」って言ってるようで・・・・否定しきれない。


でもならなぜ絵梨の事平気で見れるんだ?
本気で好きなら、付き合ってる彼氏が他の女といちゃついてるとかありえねーだろ?


考えれば考えるほど迷宮入りして頭がごちゃごちゃしてくる。
そしてそのうち面倒になって考えるのをやめる。


そんな日々が続いていた。




俺達の関係が・・・・いや、俺の気持ちが変わったのは、

それから数日後の、俺の誕生日だった日。



もちろん俺が過ごしたのは絵梨と。


歌織の事は気になったけど、歌織は何も言ってこなかったし
俺の誕生日とか知らないんだと思ってたから・・・。



だけど絵梨とのデートを終えて帰ってると、もうすぐ自宅ってところで携帯が鳴った。


電話の相手は歌織。


歌織から電話とか珍しくて、どうしたのかと慌てて出ると、
「今から少しだけ会えるかな?」と、遠慮気味の声・・・。


もう帰るだけだったし、絵梨とデート後って事でなんか後ろめたい気持ちもあって
すぐにOKの返事をした。


おなじみの公園まで来ると、歌織は「お誕生日おめでとう」と、小さな紙袋を渡してきた。


マジで驚いた。



「知ってたのかよ?」
「うん。」
「けど何も言わなかったじゃん?」
「・・・・・もし私が知ってるって知ったら・・・」
「え?」
「うんん。なんでもない。」
「はぁ?」
「さっき知ったの。だからこんな時間になって・・・ごめんね?」




バカな俺は、歌織の言葉を真に受けて、
「なんだそうだったのかよ。ってか彼氏の誕生日くらい知っとけって!」なんて笑ってた。


歌織が「彼氏って思ってくれてるんだ・・・」と呟きながらホッとした顔をしていた事にも気づかずに・・・・。



歌織の言葉が嘘だって気づいたのは家に帰ってからだった。


紙袋の中身は帰ってから見てと言われたから、部屋で袋を覗けば
小さな箱が1つと、それより1回りほど大きな箱が1つ。


大き目の箱には焼き菓子が詰め合わされていて、
小さ目の箱には、俺がこの間壊れたから新しいのが欲しいって言ってたiPod が入っていた。


さっき知った・・・?
さっきって・・・・・いつ?


この色のiPodはどこも品切れでなかなか売ってないはず。
しかもこの焼き菓子・・・綺麗に包装されてっけど、市販品じゃない。


歌織は・・・・俺の誕生日を知ってた?
それもかなり前から・・・・・・



さっき歌織が言いかけた言葉を思い出す。


「・・・・・もし私が知ってるって知ったら・・・」


確かそう言っていたはず・・・・・


『もし私が知ってるって知ったら・・・?』


その後に続く言葉はなんだ?



いくつもの言葉が頭を過ぎる。



私と過ごしてくれた?


絵梨ちゃんより私を選んでくれた?



いや・・・そんなニュアンスではなかった。




――もし私が知ってるって知ったら・・・ブン太心から絵梨ちゃんと楽しめなかったでしょ?――




ふいに浮かんだそのセリフが、なぜかぴったりとおさまる様な気がした・・・・。




歌織は俺の気持ちも、絵梨との関係も完全に気づいてる。


じゃぁなぜ何も言わない?



何度も考えた疑問が再び頭に浮かぶ。



やっぱ遊びだから?


遊びの相手に、こんなプレゼント渡してくるのか?

前から知ってた誕生日をさっき知ったなんて嘘をつく必要がどこにある?



2人きりで逢う時の歌織は、本気で俺を好きなんじゃないかと思わせた。

あれが・・・・・男を落とすテクじゃなくて・・・・・歌織の素顔だとしたら?



歌織が俺と絵梨の事を知っても何も言わないのは、俺との事は遊びだからと思ってたけど・・・・


そうじゃない・・・・?


歌織は・・・・俺と絵梨の事を気づかぬ振りをしてでも・・・・俺と付き合い続けたかった・・・・?


それはなぜ・・・?




いつもならこの辺で投げ出していたけど、今日は最後まで考えなきゃいけないような気がした。


面倒だとか言ってたけど、本当はただ逃げてただけかもしんねえ。

気づいてしまったら、どうしていいかわかんねーから。



そう思ったら、答えは簡単に出てきた。




歌織は・・・・・・・・




歌織は・・・・・本気で俺が・・・・・・・・・・・・・好きなんだ・・・・・・。




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ブンちゃん歌織の気持ちにようやく気づきました。


気づいて何か変わるのでしょうか?



明日は連載お休みで、連載ではないお話をUP予定です。