丸井vs仁王連載  Vol.7 | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

肝っ玉かあちゃんのひとり言

妄想の世界に逝っちゃってるヤツの戯言

このお話は高校2年という設定です。
そういうのが苦手な方は観覧にご注意ください。


続き物となっております。 こちら↓を先にお読みください。


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Just for you









歌織と同じクラスになり、パニクッていたわけだけど・・・・・・。


もともと楽天家の俺。

悩むのは得意じゃない。


放課後になって部活でラケットを振ってると、なんだか面倒くさくなってきて、

もう全てなかった事にしちゃえばいいじゃん?とか思えてきた。


だけど歌織がもし口外したら・・・・・

それが絵梨の耳に入ったら・・・・


そう考えると、やっぱ口止めしなきゃ落ちつかねえ。


それに1年間クラスメイトとして過ごすわけだし?

自然消滅で・・・とかって誤魔化すには苦しすぎる。

ここはきっちり別れて白紙にするのがいいだろう。



そう決めた俺は、善は急げ!って事で、部活後歌織に「今夜会えねえ?」とメールした。





歌織からの返事で、昨日も来た公園に再びやって来た。


街灯に照らされたベンチに、ポツンと座る歌織の姿に緊張が走る。



少し距離をとって腰を下ろし、自分自身に気合を入れた。



歌織も別れ話されるって察してそうだ。

そりゃ教室であんな態度とられたら何かあるってわかるよな・・・。


付き合って次の日に別れるとかありえねえけど、仕方ない。

今までだって付き合った女と別れ話くらい何度もしてきた。

それと同じと思えばいい。



そう思いはしても、やっぱ事情が事情なだけに、そんな簡単にはいかなくて、

膝の上で握った手が震えていることに気づいた。


俺どんなだけ緊張してんだか・・・・

早く言っちまおう。

このままこの沈黙を続ける方が辛い。



俺は意を決して「あ、あのさ・・・」と、声をかけたが、

歌織はその俺の言葉を遮るように、「まさか同じクラスになれるなんて思わなかったね!」

なんて言い出して、とっさに「え?・・・あ・・・そうだな・・・・・」なんて答えちまった俺は

すっかりタイミングを逃してしまった。



1度削がれた意気を再び奮い立てるのは難しく、

その後やたらと話し続ける歌織に俺は頷く事しか出来ない。


やべぇ・・・このままじゃ言えずに終わっちまうかも・・・・。


そんな焦りが段々と出かかった時、歌織が「あ、そう言えば・・・」と、

俺の顔を覗き込んできた。




「ブン太って意外と恥ずかしがりやさんなんだね。」

「はぁ?」




なんだいきなり?

俺が恥ずかしがりや?

そんなわけねーだろ?

目立つのは嫌いじゃねーし、注目浴びんのだってけっこう快感。


そんな俺が恥ずかしがりやなんて・・・・・・



だけど、次の歌織言葉に、俺の心臓は飛び跳ねた。




「ふふ。大丈夫だよ。誰にも言わないから。」

「え・・・?」

「大丈夫。誰にも言わない。言わないから・・・・・」




なにを?


そんなの聞かなくったってわかってる。



歌織は、俺達が付き合った事を、誰にも言うつもりはないと言っているんだ。



俺が教室で罰の悪そうな顔をした事、それは俺が恥ずかしがっていたからだと思ったのか・・・?

今俺が別れ話をしに来た事、気づいてるって思ってたけど・・・もしかしてただ口止めに来ただけだと思ってる?




歌織の様子、表情、ほんの少し震えた声。

そして俺の手を握り、何かを伝えようとしていた事。


ちゃんと見てやっていれば、歌織がどんな気持ちで言ったのか気づけたかもしれない。




だけど、『誰にも言わない』その一言が、俺の不安や緊張を一気に解いてしまい、

『それなら別に付き合い続けたって問題ないんじゃね?』

なんて思っちまって、一気に浮かれモードになった俺は、

「じゃぁあらためてよろしくな!!」と、馬鹿みたいに握られた手をぶんぶんと振った。







ほっとしたおかげで、昨夜はよく眠れたし、今朝の朝練も絶好調!!



朝練後で、腹減ったな・・・なんて思いながら教室に入ると、

自分の席で一人雑誌を読む歌織が目に入った。


近づく俺にまだ歌織は気づいていない。


昨日黙ってくれるって言ってたわけだし、もう身構える必要もない。

だけどやっぱ昨日の今日で、変に緊張しちまう。


どうする?

声をかけるべきか?

それとも素通り?


もう席は目前。


あぁ~どうしよう!?



なんてグルグル考えていると、人の気配気づいたのか
本を読んでいた歌織が顔を上げた。




「ぁ・・・・・・・」

「おはよう」

「お、おう・・・・。」




歌織は一クラスメイトに挨拶するのと変わらぬ態度で、

「おはよう」と軽い微笑みを浮かべて、また雑誌に視線を落とした。


その笑顔と態度に、俺はほっと肩だの力が抜けていく・・・・。


そうだよな!

普通にすればいいんだよ!!



歌織のおかげで変な緊張も解けた俺は、解放的な気分で

鞄から取り出したパンに齧りついた。










それから数日たった昼休み。


さぁ飯だ飯!!と、鞄から弁当を取りだそうとすると、

「ぶーんちゃん!!」と、後ろから絵梨の声が聞こえた。


振り向けば、弁当片手に手を振っている。




「絵梨!?」

「やっほー!」

「なんでお前・・・?」

「いつもブンちゃんが来てくれてるから、今日は絵梨が来ちゃった。」




クラスが離れちまったから、休み時間ごととか行くのは無理だけど、

じゃぁ昼飯は一緒に食おうぜ!!って事で、昼飯は絵梨のクラスで食っていた。



「来ちゃった。」とかいう絵梨が可愛すぎて、ぎゅーって抱きしめてやりたくなったけど、

俺はハッとして後ろを振り向いた。



このクラスには歌織がいる!!



隠してるとはいえ一応俺と歌織は付き合ってるわけで・・・・

違う女と飯食ってるとかいい気はしない・・・・・・よな?


歌織は絵梨の存在を恐らく知らない。

まぁ・・・知られない為に俺が絵梨のクラスに行ってたって言うのもあるんだけど・・・・



恐る恐る歌織を見ると、歌織は何も気づいていないのか、

机の上を片付け、鞄から弁当を取り出しているところだった。



ほっ・・・・。

とりあえず今のうちに教室を出て・・・・・・




「あっ!ニオ君だぁ!!」




絵梨!?


コッソリ教室を出ようと思っていたのに、絵梨が仁王を見つけ

仁王の机に駆け寄っていってしまった。



嘘だろ・・・・・。



歌織の席は仁王の隣。

この状況で気づかれないわけもない。



俺だけ教室から逃げちまおうか?

そんな事できるわけねーけど・・・・・



なんとか絵梨をここから連れだしたいが、自分から仁王の席に近づく事も出来なくて

どうか変な会話だけはしてませんようにと心の中で祈る俺。



すると絵梨が「ブンちゃん!!」と、俺を呼んだ。




「ねぇ、今日はニオ君も一緒にこの教室でお弁当食べよ?」

「はぁ?」

「なんじゃ?俺がおったらお邪魔かのう?」

「ち、ちげーよ!!」




ニヤニヤした笑みを浮かべる仁王を殴りたくなる。


もう最悪だ・・・・・。


怖くて歌織の方を見ることもできない。



そんな俺の心情を知るよしもない仁王は、なんと事もあろうか歌織に声をかけた。




「そうじゃ、西崎も一緒に弁当食わんか?」




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区切りどころが見つからない。


中途半端なところ終わってしまいました。


次回は『仲良く4人でお弁当!!の巻き♪』←