丸井vs仁王連載  Vol.26 | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

肝っ玉かあちゃんのひとり言

妄想の世界に逝っちゃってるヤツの戯言

このお話は高校2年という設定です。
そういうのが苦手な方は観覧にご注意ください。


続き物となっております。 こちら↓を先にお読みください。


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そっか・・・そうだったんだ・・・・・



ブン太がなぜ私と付き合ったのか・・・・


ブン太がなぜ絵梨ちゃんと付き合いだしても私の手を振り払わなかったのか・・・・



そっか・・・・そうだったんだ・・・・・






Just for you








テストが終わった週の土曜日。


他校との練習試合があるという話をブン太から聞いた。


ブン太のテニスをしてる姿は中等部の頃はよく見に行ったけど

高等部になってからは見に行かなくなったし、付き合いだしてからも1度も見に行った事はない。


見に行きたくないわけじゃないけど、見に行けばそこには必ず絵梨ちゃんがいるはずだから・・・・

だからどうしても行くのを躊躇ってしまっていた。



だけど、ブン太がバイト先に来たあの日。

私を初めて好きだと言ってくれた。


どういう想いがあっての言葉なのか、そこまではわからないけど、

真剣な目で伝えてくれたブン太の言葉は、とても強い私の心の支えとなった。



ブン太の試合している姿が見たい。


「行く」と言えば絵梨ちゃんの事もあって困らせるだろうと思ったから、

私はコッソリ見に行く事に決めた。


テニスコートの脇に立つ校舎からなら隠れてみる事もできるだろう。


見つかった時の言い訳として図書室に来たとでも言おうと勉強道具を鞄に詰め

休日の学校へと向かった私。


休日と言えど部活でけっこうな生徒が来ていて、がやがやと騒がしい校舎を歩いていると、

ちょうど裏庭に出る扉から、ユニフォーム来た生徒が数名校舎に入ってきた。



何気なく顔を上げた私は、久しぶりに会ったその人物に歩みを止めてしまった。




「歌織・・・・。」

「・・・・・・・。」




去年の12月の始めに、友達の紹介で出会った1つ上の先輩。


クリスマス前という事もあって色めき立つ周りの友達に押されるように

ま、いっか・・・と、付き合いだした。


向こうもそんな感じだと思っていたんだけど・・・・・・・彼はとても手が早かった。


人前でいちゃつく事も気にしない彼は、すぐに私の身体に触ってくる。

2人っきりになれば押し倒さんばかりに迫ってくる。


友達の紹介って事もあって、付き合ってぐに別れるのも申し訳なく、

なんとか誤魔化しながら、身を守り続けていた。


そんなある日。


彼の友達と、その彼女さんと一緒に食事に出かけた時、

友達に見せ付けるようにいちゃついてくる彼氏にウンザリで、

「もういい加減にして。気持ち悪い。」そう思わず言ってしまった。


プライドの高い彼は、友達の前で恥をかかされたと激怒して

「ベッドの中では乱れまくるくせに純情ぶってんじゃねーよ!」と叫んだのだった。


彼と身体の関係を持った事は1度だってない。

彼と・・・・・どころか、私はまだそういう事をした事すらない。


キスくらいは何度かあるけど、身体を許す事はなかった。

心のどこかで、本当に好きな人とだけ・・・・・・そう思っていたんだろう。



彼の怒りは収まる事無く、あっという間に私のあらぬ噂が立てられた。


最初聞いたときはびっくりしたというか勘弁して欲しい・・・って思ったけど、

噂なんて気にする事ないと、友達はみんな言ってくれたし、

紹介してくれた友達も「本当にごめん」と謝ってくれて、信じてくれる人がいるらないいや。

そう思うようになり、どんどんと尾びれのつく噂が時折耳に入ったり、

心無いからかいを受けた事もあったけど、そんな事は気にしないようにしていた。



あれから会う事もなかった彼と数ヶ月ぶりの再会。

何もないように通り過ぎればいいのに・・・・・立ち止まってしまった自分を悔やむ。



しばし見つめあう私達に、彼の周りにいた友達が騒ぎ出した。




「あれ?この子どっかで・・・・」

「あー!!元カノじゃん。えっと・・・確か・・・・・」

「西崎歌織ちゃん!!」




その声とともに、私はあっという間にその人たちに囲まれた。


驚いた顔をしていた先輩も、友達の囃し立てる声に一瞬にしていやらしい笑みを浮かべ私の前に立った。




「久しぶりだな。今日は休日だってのにわざわざ学校?」

「関係ないでしょ?」
「なに?男漁りに練習見に来たのかよ?他校もいるし選り取り見取りだもんな。」

「・・・・・・・。」

「本当に男好きな女だよな。誰にでも股開くような女だもんな、」

「女の子は自分を大事にしないとだめだよ~。」

「あはは。お前が言うなっての。」

「でもこんな可愛いんだし俺遊びでもいいわ。」

「マジかよ?そしたらコイツと穴兄弟だぜ?」

「うわ!それは勘弁!!」

「やめとけって。ガバガバで絞まりもしねーし。」

「ちょ、そこまで言ったらかわいそうじゃん。」




バカみたいな笑い声と、からかいの声が響く。


はぁ・・・変なのに引っかかってしまった。


泣き崩れるほどか弱い女でもない。

だからと言って感情的に言い返せば余計に嘲弄されるだけ。

こうも囲まれていたら逃げ出すのも難しいし・・・・。

ここは黙って彼らが飽きて去って行くのを待つしかないか・・・・。



零れ落ちそうな溜息を何とか耐えながら立っていると、思わぬ人の声が飛び込んできた。




「へぇ・・・でもそれって先輩のが小さいだけなんじゃないッスか?」




ブン太!?


そのすぐ後に仁王君まで現れて、ただ驚き立ち尽くす私。

ブン太はそんな私の腕を引き、自分の背中で私を庇うように立った。


何でここにブン太が?

まさか今の話し聞かれた!?


予期しなかった状況に頭が混乱する。


ブン太があの噂を知っているかはわからない。

でも・・・できるなら知られていなければいいと思う。


だけど先輩はそんな私の気持ちうを踏みにじるかのように、

「なに?今度は丸井と仁王に目付けてんの?」と、私に問いかけてきた。


いやだ・・・・・やめて・・・・・




「丸井も仁王も、騙されちゃダメだって。この女マジで淫乱でヤバイから。」




いやだ!!!


逃げ出したい衝動に駆られ、足がガクガクと震えた。


顔を上げる事もできなくて、怒りのような悲しみのような

よくわかんない感情が喉につかえて声も出ない。


その時、急にブン太が私の腕を取って廊下を駆け出した。



痛いくらいに腕を掴まれて、振り向きもせず黙々と前に進むブン太。


あの場を離れられた事にはホッとしたけど、

ブン太のその態度に不安が過ぎる・・・。


やっぱり・・・聞かれてしまったんだ。

どう思った?

最低で汚らわしい女だと思われただろうか?


何も言わないブン太にただ手を引かれ、震える足で着いていくと、

さっきの場所からすぐのところにある教室の中へと引っ張り込まれた。




「っ!?」




教室に入るとすぐに、振り向いたブン太の胸に抱きしめられた。




「ブン・・・・太?」

「あんなの気にすんな。」

「え・・・・?」




あんなのって・・・・さっきの事?

気にするなって・・・・ブン太はあの話を信じなかった?


ブン太はそれ以上何も言わない。


だけど不安気に見つめる私に、二カッと笑って見せて、

いたずらっぽくチュっと音を立ててキスをした。



「ブン太っ!!」
「はは。驚いてやんの。可愛い、歌織。」

「もう・・・・・。」




ブン太が私を気遣ってくれている。

その優しさを感じて、強張っていた表情も心も和らいでいく・・・・。


そんなブン太に、もう大丈夫と伝えるように私も微笑み返した。




「よし。んじゃ俺、仁王一人じゃちょっと気になるから見てくるわ。」

「でも・・・」

「すぐもどっから。ここで待ってろ。な?」




小さい子に言い聞かすように私の頭をひと撫でしてブン太は教室を出て行った。



信じてくれた・・・・・

ブン太はあんな噂を信じたりはしなかった。



まだ体に残るブン太の温もりに、涙が零れそうだった。




その時廊下をバタバタ駆けていく足音が聞こえて恐る恐る顔を出すと

さっきの先輩達の集団が走り去っていくところだった。


話が終わったんだろうか・・・?


それなら私も戻ろう。

さっきは動転して何も言えなかったけど・・・・ちゃんとお礼言わなくちゃ・・・・。


数回深呼吸をして気持ちを入れ替えた私は、さっきの場所へと戻る事にした。


ブン太と一緒にいたって事は仁王君にも聞かれてた事になるけど・・・

仁王君はどう思ったんだろう?

仁王君なら別にそういうのあまりに気にしなさそうだよね・・・・。


とぼとぼと歩きながらそんな事を考えていると、

さっきのあの場所から仁王君とブン太の話し声が聞こえてきた。


覗き込んだ曲がり角の向こうに立つブン太と仁王君。

ブン太はこちらに背を向けていて、仁王君はブン太に鋭い視線を向けている。



別に盗み聞きをするつもりはなかった。

だけどその雰囲気の中に出て行くのも躊躇われて・・・・


その一瞬の躊躇いが・・・私の心を打ち砕く事となる。




「自分も信じとった噂やのに、えらい庇いようじゃったのう。」

「はぁ?あんな噂・・・もう信じてねーし。」

「ほう。なら西崎でドーテーを捨てるって話はもうやめたんか?」

「なっ!それはお前が!!」




え・・・・・?

今・・・・・・なんて・・・・・?




自分も信じとった噂やのに―――


西崎でドーテーを捨てるって話はもうやめたんか?




何度も何度も頭の中でリーピートされる仁王君のセリフ。



ブン太はあの噂を信じてた・・・・?

私でドーテーを・・・・・・捨てる・・・・?



どういう事?

何の話?


考えちゃいけない。

これ以上考えちゃ・・・・・


心がその先の答えにたどり着くのを拒否している。

だけどそんな心とは裏腹に、思考は結論を導き出す。



ブン太がなぜ私と付き合ったのか・・・・

ブン太がなぜ絵梨ちゃんと付き合いだしても私の手を振り払わなかったのか・・・・

本当はずっとずっと不思議だった。


だけど、傍に居れるだけでいいと思ったから・・・

どんな理由であっても、かまわないと思ってた・・・・


でも・・・・・・そっか・・・・そうだったんだ・・・・・。





私は静かにその場を離れた。




ブン太の目には、私は噂通りの人間に映ってた。

だから・・・・・私と付き合った?


あの優しさは・・・・

好きだと言ってくれた言葉は・・・・


全てがドーテーを捨てる為だった?

あの時私の手を振り払わなかったのも、ドーテーを捨てる為の道具を手放すわけにはいかなかったから?



そんな人じゃない。

ブン太が私に見せた笑顔も、優しさも、言葉も・・・・・

全部がそんなものの為だなんて・・・・そんなはずがない。



そんなはず・・・・・・・・・・・ない・・・・・・?




誰もいない場所を求めて上がってきた屋上。

私は屋上に着いた瞬間、コンクリートの上に崩れ落ちた。




気づかぬ振りをして、見過ごしていた抜けたままのページ。


その空白の部分に、無理やりねじ込まれたページ。


それは本来の姿を取り戻し、一つの物語を伝える。




ずっと知りたかった・・・・・


だけど知らなければよかった・・・・




私に求められた役目。


ブン太が求める私。



それは・・・・・噂通りの私・・・・?



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うーん。難しいですな・・・。(笑)



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