~ 電話越しのHAPPY BIRTHDAY ~
「え?30日は大阪に帰ってるけど?」
なんて事ないように答えた雪に、俺は腹の奥から湧き上がる怒りを抑える事ができず
「なら勝手にすればよか!」とだけ言い残し、電話もメールも全て無視し続けて早3日。
今回だけは雪から謝ってこん限り許さんと思っとった。
だが、正直俺の方がもう耐えれん。
雪不足でおかしくなりそうだ・・・。
俺の誕生日。
雪は一緒に祝えて嬉しいと、誰より1番に「おめでとう」を言えて幸せだと言っていた。
なら、どうして俺も同じ想いだということがわからん?
俺だって雪の誕生日を誰よりも祝ってやりたい。
一緒に過ごして1番に「おめでとう」と言いたい。
そして思いっきり愛し合いたい・・・・。
そう思っとった。そしてそれは雪も同じやと思っとったのに・・・。
クリスマスが終わり26日を迎えた朝。
ベッドでイチャつきながら「次は雪の誕生日じゃな・・・。」と何気なく話題を振ってみると
「あ、忘れとった。そっかそっか・・・。」なんてのんきな事を言う雪。
「なにが欲しい?」
「え?そんなんええよ。クリスマスプレゼントも貰ろたし・・・。」
「それはそれ。誕生日は関係ないじゃろ?」
「でも・・・。」
らしくもなく遠慮する雪に軽くキスを落とし、
「俺がしてやりたいんじゃよ。いいから言うてみんしゃ?」と促す。
ここで「一緒に過ごせるだけで・・・」なんて言葉が返ってきたらカワええんじゃが・・・・。
「んじゃ電話ちょうだい。おめでとうって!」
「電話なんてせんでも直接言えばええじゃろ?」
「でも直接はムリやろ・・・。」
「ムリ?」
「雅治も大阪まで来んの?」
「は?大阪・・・・?」
「うん。」
「・・・まさか・・・30日こっちにおらんのか!?」
「え?30日は大阪に帰ってるけど?」
きょとんとした顔で俺を見上げる雪。
30日は大阪に帰ってる?
そんな話し聞いとらんし、何よりなんでそれを普通に答える?
雪の誕生日を一緒に過ごしたいと思ってたんは俺だけか?
雪は別に一緒に過ごせんでも気にせんのか!?
「誕生日一緒に過ごさんつもりか?」
「うーん。でもこういう機会やないとなかなか帰れんしな・・・。」
「なら誕生日終わってからでもええじゃろ?」
「誕生日終わってからって大晦日やで?2日には帰ってくるし別にええやん。」
「・・・・・・。」
今別にええって言うたんか?
俺と過ごせんでも別にええって?
腹の中が煮えたぎるように熱くなり怒りで腕が震える。
だがそれと反比例するように心はどんどん冷たくなっていく。
俺はベッドから降りて私服に着替え、呆然と俺を見る雪に
「なら勝手にすればよか!」と言い放ち、そのまま雪の部屋を飛び出した。
雪から携帯に何度もあった着信は全て無視し、メールは開封もぜず削除した。
家に帰っても怒りは収まらず、赤也を呼び出し色々連れまわしてみたが
それでも俺の気分が晴れる事はなかった。
俺と雪が険悪な事になっていると、なぜに知っとるのかはわからんが、
幸村から「今日雪が帰省するらしいよ。」と電話があった。
やたら嬉しそうに、「見送りに行かないのかい?ふふ。なら俺は行ってくるよ。」
なんて言う幸村にイラッとしたが、
それよりも、「本気で帰ってしまうんか?」という気持ちの方が大きくて
電話が切れた後も、しばらく呆然として動けんかった。
もしかしたら帰省をやめるんじゃないかという期待があった。
そしてやっぱり俺と過ごしたいと言うんじゃないかと・・・・・。
でもそんな思いは見事に裏切られ、俺と雪の気持ちの大きさを思い知らされた。
こんなに想っとるんは俺だけやったんか?
雪の俺への想いはそんなもんやったんか?
もう・・・雪の気持ちがわからん・・・・。
それでも別れようとは思わん辺り、情けないが俺はもう雪なしでは生きれん証拠。
何度も考えたが雪のおらん生活なんて考えられん。
逢う事もなく、声さえも聞かずにもう3日。
こんな事、付き合って以来初めてかもしれん。
何度か喧嘩した事があっても、学校に行けば顔は見れたし声だって聞くことができた。
それにどんなに喧嘩しても、すぐさま解決させたい雪は、必ず話し合いの場を設けてきた。
今回もきっと話し合おうとしとったはず。
電話もメールも無視しとったんは俺。
もしかしたら家にも来とったかもしれん。
それなのに、こんな事思うのは俺の我がままか・・・?
それでも・・・・・雪に逢いたい。
この腕に抱きしめて、雪の温もりと香りを感じたい。
せめて・・・・雪の声が聞きたい。
だが帰省したと聞いてから雪からの着信もメールもピタリと止まってしまった。
もしかしたら、もう俺に愛想を付かせてしまったかもしれん。
急に襲ってきた不安。
もし雪に別れを告げられたら?
俺は受け入れらるんか?
いや・・・・・。離さん。
何があろうと。雪がもう俺を好きやないと言ったとしても、雪を手放したりはせん。
気持ちが離れたならもう1度惚れ直させるまでの事。
俺には雪しかおらんように、雪にも俺しかおらんと思わせるまでじゃ!
机の上に投げ捨てた携帯を手に取り、雪の名前を呼び出す。
時計の針はもうすぐ長針と短針が重なろうかとしているところだが、
まだ寝てはおらんことを祈って、通話ボタンを押しかけた・・・・・・
♪~
部屋に鳴り響く爽快なメロディ。
雪が好きだと勝手に設定した雪専用のメロディ。
それは雪からの着信の知らせ・・・・・・
まさか雪からかかってくると思わんかった俺はの頭には一瞬の間に瞬く思いが駆け巡る。
俺の怒りが落ち着いたかと思って、かけてきてくれたんかもしれん。
だが、もしかすると別れ話の電話かもしれん。
自分からかけようと意気込んでいた気持ちはすっかり消えて、
さっき吹き消したはずの不安が心を覆う。
どうする・・・・?
俺がこう悩む間も、メロディは流れ続ける。
どうする?どうすればええ?俺はどうしたい!?
「もしもし?」
悩みに悩んだ結果、結局俺は通話ボタンを押した。
電話の向こうから数日ぶりに雪の声が聞こえる。
たった3日ほど聞いていないだけなのに、懐かしさと愛しさで胸に込みあげる熱い想い。
「雪・・・・。」
自然と俺の口から出た言葉は雪の名だった。
なぜかはわからんが、雪の名前を口にするだけで胸がつまり言葉が出てこん。
「雅治?」
「ん?」
「あの・・・・ごめんな?」
申し訳なさそうな雪の声に、そしてその言葉に、俺の心は一気に霧が晴れるように光りが差し
嬉しさと喜びで顔が誇らんでいく。
もう誕生日を一緒に祝えんかったとか、そんな事はどうでもよくて
ただ雪が俺から離れていかんかった事が、別れ話ではなかった事が嬉しかった。
「もう別に怒っとらんよ。」
「ほんまに?」
「ああ。それよりも雪の声が聞けて嬉しい・・・・。」
俺のあまりにストレートな言葉に、一瞬驚いたようやったが、
すぐに「私も雅治の声聞きたかった・・・。」と、俺同様珍しく素直な言葉が返ってきた。
「勝手に帰ってゴメン。」
「それはかなりショックやったのぅ。」
「ご、ごめんて!一応メールしたんやけど・・・。読んでないねやろ?」
「全部読まんと削除した。」
「やと思った。」
俺の行動がわかっとったとばかりの雪の言葉がとても嬉しい。
離れとったとしても俺の事を考えとってくれた事が何より嬉しい。
「あんな。私自分の誕生日にお祝いしてもらった事ってほとんどないねん。」
突然語りだした雪の話に相槌を打ちながら先を促す。
「年末の大晦日の前とか忙しい時期やん?だから親も正月に一緒に・・・・って感じやったし、
友達も年末は旅行行ってたり、家の手伝いとかでみんな忙しそうでさ。
だからメールでお祝いはしてくれても、一緒に祝うなんてなかってん。」
確かにこの時期どの家も忙しいだろう。
人の誕生日を祝っとる場合ではないかもしれん。
雪はそんな環境でずっと誕生日を過ごしてきたってことか・・・・。
「だから雅治もきっと忙しいやろうと思ってさ。まさか一緒に過ごしてくれるなんて考えもせんかった。」
「俺が雪の誕生日に一緒に過ごさんはずがないじゃろう?」
「そう・・・・やな・・・。言われたらそうなんやけどな・・・・。ごめん。」
「もう謝らんでもよか。・・・・・・・雪?」
「ん?」
「誕生日おめでとう。」
「え?」
携帯のアラームが鳴り出し、日付が変わり雪の誕生日になった事を知らせている。
きっと携帯の向こうで時間を確かめているのだろう。
「あぁ・・日付変わったんや・・・。」と言う声が聞こえた。
「本当なら逢って直接言いたかったんじゃがな・・・。」
「ホンマすんません・・・・。」
「まぁ1番に言えただけでもよかったぜよ。」
「うん。ありがとう。」
笑顔の雪を抱きしめる事も、キスすることもできんが、
声から伝わる感情が、俺に幸せを運んでくる。
俺の声と言葉も、雪に幸せを運べとるんじゃろうか?
「来年からは俺が傍で雪の誕生日を祝うから。だからちゃんと予定空けときんしゃい。」
「雅治・・・。」
「雪が俺の誕生日に幸せをくれたように、俺も雪を幸せにしてやりたいと思っとる。」
「うん・・・・。」
「雪。愛しとるよ。」
「私も・・・愛してるよ。」
「生まれてきてくれて・・・ありがとう。」
こんな事普通なら恥かしくて言えんかったじゃろう。
電話やから言えたセリフやのぅ・・・・。
電話越しの雪もいつもより数倍は素直じゃし、
そう考えたら、こんな誕生日もよかったんかもしれん。
それでもやっり3日分の雪不足はまだまだ解消できそうにない。
夜が明けたら、朝1の新幹線で大阪まで行くとするか?
やっぱり直接逢って「おめでとう」と言ってやりたい。
そして雪の誕生日を独り占めしたい。
それに・・・・・・こんなに俺を悩ませたお仕置きをせんといかんしのう。
数時間後の事を考えながら、俺はそっと笑みを溢す。
抱きしめて、口付けて、思いっきり啼かせながら「おめでとう」と言ってやろう。
だけどその前に・・・・来年からはもうこんな事はないはずだから。
最初で最後の電話越しでのHAPPY BIRTHDAYを・・・・・
HAPPY BIRTHDAY Yuki
****************************************
はい!!おめでとう私!!ww
今日12月30日は私の誕生日です!!
早速仁王に祝ってもらいました!
えへへ。ありがとう!!
このくそ忙しい時期の誕生日。
まじで誕生日にケーキを買ってもらった覚えがありません。
正月にまとめて一緒に・・・・って感じでした。
高校くらいになれば好き勝手やってましたけどね。
今日は私の誕生祭って事で一人盛り上がっていきたいと思います!!
皆さんの忙しいでしょうが、一休み程度に絡んでやってください。(笑)