いのちを食べる | The Sence of Wonder

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呼吸器医として、喘息・結核の診療の傍ら、卒煙支援もしています。
二児の母として、妻として、医師として・・・
日常のほんのちょっとした Sense of wonder を発信しています。

今日はたなばた。みなさんの願い事はなんでしょう・・。

小骨の多いお魚がちょっと苦手な娘の短冊・・。

 「おさかなが、たくさんたべられるようになりますように」。

「いただきます」といって食べるとき、
そこには、「いのち」が並んでいます。
この一ヶ月ぐらい、「命を食べる」ということについて、
なんとなく考えていました。

きっかけは、「ぼくは猟師になった」という一冊の本。
そして、その少し前に夫婦で見たドキュメンタリー映画
「いのちの食べかた」。

私の叔父は、鶏肉が食べられません。
小さいとき、家でにわとりを飼っていて、
屠殺のシーンを間近にみてからだそうです。

スーパーやお肉屋さんで買うとき、ただの塊である「お肉」。
元は、豚であり、鶏であり、牛ですよね・・。

映画「いのちの食べかた」はナレーションも台詞も字幕もなく、
90
分間、ひたすらあらゆる食材のルーツが映し出されます。
今、食卓にあるこれらのものは、こうやって、
食べ物としての形に作られて、やってきているのだ・・
心に突き刺さった棘のようにずっと引っかかっていました。

そして、「ぼくは猟師になった」という本で、
生き物と向き合って、狩って、食べるという生き方を知り、
あらためて「いのちを食べる」ということを考えていました。

女医・ゆきみんと先生の診察室から

祖母が若い頃、阿寒湖で民宿をしていて
アイヌの人たちとよく交流があったそうです。

「イオマンテ」という動物の魂送りの儀式をご存知ですか?
1955
年に北海道知事名により「野蛮な儀式」とされ
長く禁止されていましたが、20074月ようやく撤回されました。
現在、北海道では、アイヌ民族の日を制定しようとしています。

「イオマンテ」という絵本があります。
私の夫が大好きな本。(彼のHPより)
http://homepage3.nifty.com/hidaka/iomante.htm
もちろん、わたしも、とても好きな本です。

女医・ゆきみんと先生の診察室から

池澤夏樹の新刊(巻末の発行日は77日、今日になっています)
「熊になった少年」

女医・ゆきみんと先生の診察室から

二冊とも、命との向き合い方について、
現代に生きるわたしたちに、深いメッセージを送ってくれます。

 ひと粒のあわもひえも、ひと切れの肉も魚も、みんないのち。
 わたしたちは、いのちをたべている。
 いのちと魂との、大きなめぐりのなかにいる。
 すべては、めぐるいのちのめぐみ
 すべては、めぐるいのちのめぐみ    「イオマンテ」より

自分も生きるうえで、決して忘れてはいけないこと。
子どもたちにも、伝えていきたい、大切なこと。
命の由来を考えず、粗末に食べて、感謝もしない、
その行為こそが「野蛮」なのだと、
アイヌの人たちは、ずっと昔からわかっていたのでしょう。

 できれば声に出して読んでいただきたい。
 そして、確かめていただきたい、
 これを読む自分はトゥムンチではないと。
           「熊になった少年」巻頭「読む前に」より

「イオマンテ」の世界を深く愛する私も、そして夫も
トゥムンチにはならない、そう確信しています。

たなばたの今夜の夕飯。
子どもたちが、いつか「命」の意味がわかる大人になるように
心から願いながら・・・・

みんなで「いただきます!」と元気に言って、
命の恵みに感謝して、食べようと思います。

明るい満月のお月様に邪魔されず、
ベガ(織姫星)とアルタイル(牽牛星)が
ちゃんと出会えるといいのですが・・・。