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初めてその街を訪れたのは、台風が通り過ぎた翌日だった。

黄色い郵便ポストがある駅前から、GoogleMapが存在を教えてくれた場所を目指して歩く。

 

辿り着いたのは昔ながらの古本屋。正午の開店時間を待とうと思いきや、通い慣れた風情の高齢男性が店内に入っていく。

後に続こうとすると、今日の日付の後に「臨時休業させて頂きます」と書かれた貼り紙に気付く。あれ、どういうこと?

 

店先で本を並べている店主に訊いた。お店、開けるんですよね?

「臨時休業にするつもりだったけど、昨日大雨で店を開けられなかったから…午後三時くらいまではやろうと思ってね」

 

つまり、予告されていた臨時休業が撤回されたのだった。

何も知らずに来たけど運が良かった。ひょっとしたら今日こそ、ユッコこと岡田有希子さんがいた頃の雑誌に出逢えるかも…大いに期待したけれど、世の中そんなに甘くない。

 

密林のような店の奥に静かに眠っていた、昭和末期のアイドル誌で一番古かったのは1986年5月号。

パラパラめくると、ユッコさんが堀越学園を無事卒業したことを伝えるモノクロのグラビアが1ページ。そこに彼女自身のコメントはなかった。同年6月号の編集後記には、黒い服でユッコさんとお別れしたことが短く書かれていた。

わたしは寂しい2冊をそっと棚に戻し、別の本を手に店主の元に向かった。

 

 

photo by yukikostarlight