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ターミナル駅を出た途端、梅雨の最中なのに真夏の陽射し。
人波に揉まれてスクランブル交差点を渡り、赤いラーメン屋が待つ路地に入ったとき。
前をゆく若者の尻ポケットから、その体型から真逆に膨らんだ、黒い革財布が落ちた。
どさっ、音を立てて道端に転がる分厚い長財布。持ち主は音楽でも聴いてるのか、一大事に気付かないまま歩いていく。
「落としましたよ!」
大声で呼びかけ、拾い上げた財布を手に走り寄る。振り向いた顔は、漫画みたいに目を丸くしていた。
「ありがとうございます!」
紅顔の若者に貰った言葉は、酷暑に吹く一陣の涼風だった。
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腹満たされてターミナル駅に向かうと、スクランブル交差点の信号が赤に変わろうとしていて。思わず駆け出したわたしの頭から、被っていた黒いキャップが後ろに飛んでいった。
「落としましたよ!」
慌てて振り向くと、少し後ろを歩いていた別の若者がそれを拾い上げ、駆け寄ってくるのが見えた。
「ありがとうございます!」
大事なキャップを笑顔で手渡してくれた若者に、わたしは精一杯の感謝を伝えたのだった。
「情けは人の為ならず」が意味する〝人にした親切は、いずれは自分に戻ってくる〟ことを正しく実感した出来事でした。
幼い頃から読書家だった、ユッコこと岡田有希子さん。彼女はたぶん、世間の半数に誤解されているという、この諺の真意を知っていたでしょう。
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