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わが子が通う女子校に、OBの教育実習生がやって来た。
数年前まで在校生だった、先生の卵による授業…生徒たちの興味は、すぐ失望に変わった。
驚くほどわかりにくかったから、という。
極度の緊張からか、声が小さくて聞き取れない。
黒板の文字が小さすぎる、字が崩れすぎて読み取れない。
なにより生徒たちを見ようとしない、カンペの棒読みがバレバレだ。
授業が終わった後、クラス代表が実習生に申し入れに行ったらしい。
〝板書をもう少し、読みやすくしてもらえると助かります〟
〝もう少しハッキリ話していただけますでしょうか〟
わかりました、実習生はそう応じたけれど次の時間も変わらなかった。
二度目の授業が終わったあと、実習生が指導役のベテラン教師に注意されていた。
〝怒るときはガツンと怒らなきゃだめだぞ〟
近くでそれを耳にしたわが子は思ったという…そうじゃないでしょセンセ!
教育実習の最後はグループワークだった。
討議が盛り上がり、教室がガヤガヤ賑やかになった頃。
実習生が突然、キレたらしい。やかましい!静かにしなさい!!
彼女の怒りは、授業が終わるまで収まらなかった。
前回までの授業で得られたものは何か、と問う実習生。答えようがない生徒を、顔を真っ赤にして叱り続けたという。
本来の担任である指導役のベテラン教師が、生徒たちに尋ねた。
〝教育実習生との記念写真に入りたい者は?〟
数名を除いて、生徒の手は挙がらなかった…なんでそんなことを訊くんだろう?
先生は教育実習生にこう話したらしい。
〝教師は生徒全員に好かれることはできない、そして好かれる必要もない〟
三人の生徒に囲まれた、一枚の笑顔なき写真を残して教育実習生は母校を去った。
生徒に嫌われちゃった先生の卵が、殻を破るときは来るのだろうか。
ユッコこと岡田有希子さんは絵を本格的に習い始めた小学四年生の時に、母親にこう言ったそうです。
「一年経ったら、才能があるかどうか先生に聞いてみて。もし才能があると言われたら芸大へ行きたいから」
もしも彼女が美術の先生になったなら。生徒たちは先生の笑顔見たさに、みんな全力で課題を仕上げたのではないでしょうか。
photo by yukikostarlight