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わたしは昔、ある人から〝人を怒らせる天才〟とよばれた。

 

ちょっとした言葉の選び方にセンスがない、だから相手を無駄に怒らせてしまう。

こちらもイラっとしているからか、相手がムカつくひと言をつい選んでしまうのだ。

わたしへの怒りの沸点が異常に低い人…天敵が職場にいる。それが絡んでくるのはメンドクサイけど別にいい。心に少々傷を負うだけで済む。

 

問題は何かのきっかけでわたしに敵意を向ける、その場限りの「見知らぬ輩(やから)」だ。

肩が触れたなんて理由で、絡まれたことが何回かあって。たいてい、相手もわたしもしたたか酔っている。

そんなとき。人を怒らせる天才なはずの、わたしのアタマは妙に冷静になるのだ。

 

「すみません、申し訳ないことです」気持ちとは裏腹に、顔色も変えずに謝罪のことばを繰り出すわたし。職場ではあっけなく天敵に点火してしまうのに、外敵?を燃え上がらせたことは一度もなかった。

それは多分、亡き父が体を張って教えてくれたから。

 

父が小学校の授業参観でガキ大将の父親と並んだら、悲しくなるほど小さく見えた。中学生になったわたしの背丈は、父をあっさり超えた。

そんな父がある夜、黒ずみ膨らんだ顔で帰って来た。わたしが小学三年生、父が四十代に差し掛かった頃のことだ。

狸みたいだ、と思った。

 

布団でぐったりしていた父。しばらく営業回りができなかった父。

そうなった理由を聞くことはなかったけど、おそらくあの夜、見知らぬ相手に一方的に殴られたのだと思う。

自分より弱そうな相手にしか因縁を付けない輩。父はきっとそいつを逆上させるひと言を、咄嗟に口にしてしまったのだろう。

 

わたしが目の前のムカつく輩に頭を下げ、つまらないトラブルを回避してこれたのは。

あの日あまりにも高い代償を払った、痛々しい「狸親父」のおかげなのだ。

 

 

photo by yukikostarlight

 

岡田有希子、父を語らず

父親似だったユッコこと岡田有希子さんが、父を語ることは少なかったようです。

娘にとって父の存在なんて、すぐにちいさなものになるのでしょう。