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先日の夜、ツレさんに付き合って三十年ぶりに観劇してきた。 

いまをときめく21歳の人気女優が初めて挑んだ舞台は、わたしが昔観た小劇場の芝居と迫力が全然違う。

 

百人ものキャストを効果的に見せるために、アクティングエリアは客席側へかなりの斜度がついたスロープ状になっている…八百屋舞台と呼ぶそうだ。

その中央には斜坑みたいな奈落があり、そこからたくさんの兵士が〝溢れ出て来る〟さまは圧巻だった。そして客席の通路も使った、観客を取り囲むかのような戦闘シーンの演出も。

 

舞台の世界観にすっかり没入したあっという間の三時間、感激して帰路につく。行列に並んで買い求めた、黒いハードカバーの公演プログラムをさっそく紐解いてみる。

 

中世末期のフランス、たったひとりの少女が一国の存亡を決した伝説的な史実。

17歳で自ら戦いに身を投じ、運命に翻弄されつつ火刑の日まで駆け抜けた、19年の短い人生の物語。

 

…どうしても、わたしの中にいる〝彼女〟が重なってしまう。

 

昭和末期の日本、高校を卒業したばかりだったひとりのアイドルの悲劇

16歳で自ら芸能界に身を投じ、運命に翻弄されつつその日まで駆け抜けた、18年の短い人生を思い起こさずにはいられない。

巻末に記されたプロデューサーの言葉に、わたしは思わず彼女の名前を添えたくなった。

 

私たちは何度も問いかける、彼女の生涯に意味はあったのか、彼女の死は何なのかと。問いかけることから、死は再生される。亡くなった人の死を語る時、そこにその人の命は蘇る。その意味を何度も尋ねることで死者は生き続ける。私の岡田有希子は死なない。

 

劇中の少女は、激闘の末に切望した王太子の戴冠を叶える。王となった彼は謳う、「私の可愛いLa Pucelle(乙女)よ!」と。

 

心のなかに棲む彼女もまた、ずっと〝わたしの可愛いLa Pucelle〟でありつづけるのだろう。

 

photo by yukikostarlight