おはようございます。

カンヌ国際映画祭で

グランプリを受賞した際、

ゆ○ちゃんが観に行きたいと

言っていたのを忘れていて、

これを観たい、

と言ったら

前に観たいって言ったじゃん、

と言われた関心領域を観に行きました



※以下、ネタバレ、
人によっては
気分が優れなくなる方も
いると思いますので、
自己判断で読んでいただければと
思います

第二次世界大戦中、
大きな家にプール、
広い庭に咲く花に囲まれて
穏やかに暮らす家族の姿。
一見どこにでもありそうな日常。
隣にある
アウシュビッツ強制収容所を除いては。
史実通りに
強制収容所の隣に暮らしていた
収容所所長のルドルフ・ヘスの家族の
ドラマのない
そのままの日常を映しながら、
誰もが持ちうる
人間の残酷さや恐ろしさが
淡々と描かれています。
笑顔で暮らす家族の家の
遠くの先から聞こえる
乾いた銃声や叫び声。
美しい庭から
絶えず黒く立ち上る煙。
この作品では
一切収容所の中の様子は
描かれていないものの、
ヘスが業者と
さらにたくさんの人間を
焼却するための
焼却炉建設の話を
サラリーマンのように
商談している姿や、
きれいな川が
燃えた人間の灰を流したことで
一瞬にしてどす黒い色に変わるシーン、
家の庭の肥料に
人の遺灰を使っているところや
収容所から聞こえる数々の音。 
10年近くもかけて、
徹底して事実に基づいたリアルさ。
直接的な描写がない分
その異常さや恐ろしさに
ゾッとしてしまいました

一見
傍から見れば
ヘスや家族が異常、
と言ってしまえば簡単ですが、
何よりこの作品を見て
怖く感じたのは、
誰もがヘスや家族のように
なりうるかもしれないということ。
現在においても我々は
報道などで
世界の痛ましい戦争や
残酷な殺人、
悲惨な災害を
川岸の向こう側から見るように
平和と日常が約束されたところで
見ている。
それは差こそあれ、
ヘスや家族と変わらないのではないか。
戦争という
正義感も倫理観も歪められ、
逆らえば
命がない極限の状況の中、
その差こそあれ
それでもヘスのようにはならない、
と言い切れるかどうか。
物語の最後に
現在の博物館となった

アウシュビッツ強制収容所が

映し出され、

まるでそれをヘスが

見たかのように描かれていますが、

違った見方をすれば

ヘスがこの作品を観ている我々に、

お前らも俺と同じ、

と訴えかけているようで

観終わった後

思い返せば返すほど

気分が重くなりました。

本物のヘスが

戦後裁判にかけられ、

処刑される前の手記の最後に、

世人は冷然として

私の中に血に飢えた獣、

残虐なサディスト、

大量虐殺者を見ようとするだろう。

けだし大衆にとって

アウシュヴィッツ司令官は

そのような者としてしか

想像されないからだ。

彼らは決して理解しないだろう。

その男もまた、

心を持つ

一人の人間だったということを。

彼もまた悪人ではなかったということを。

と記したそうですが、

その言葉が

まさにこの作品そのものだと

思います。

作品としては

素晴らしい作品です。

自分自身にすら

嫌悪感を抱いてしまうような、

非常に辛く、

考えさせられた二時間でした