僕がすすめてからは

すっかり彼女が大ファンになった、

デヴィッド・クローネンバーグ監督

待望の新作



久しぶりの新作、
近年にない
初期のクローネンバーグ作品のような
独特の内的世界観と
異常な快楽追究が描かれていて、
プリンスオブホラーと呼ばれていた頃を
彷彿させます。
近未来
人間は進化によって
痛覚も感染もない身体になったため、
芸術と称した
見世物のような手術が行われていて、
そこで独特の進化を遂げた故に
身体の中で新たな臓器が作り出される度に
ショーの中で取り出すことに
快楽と芸術を見出している主人公。
別の進化を遂げた人間達も現れて、
汚染された世界の中での
人間や進化、
快楽や芸術の追究の在り方を
描いているのですが、
クローネンバーグ監督らしく
一切の説明もなく
哲学的で独特の世界観を
悪夢を見ているような感覚で
旅する107分。
個人的には
80歳という年齢の衰えを感じさせない
クローネンバーグ作品、
よかったです。
人間の深層心理や内的世界を
ああいった形で描けるのは
クローネンバーグ監督唯一だと
思っています。
ただああいう芸術や快楽の在り方は 
趣味ではないですが(笑)。
そのクローネンバーグ監督も
以前
社会のモラルは尊守すべきだけど、
作品や芸術の中では、
みたいなことをおっしゃっていました

それにしても、
何をどう考えたら
あんな座り心地の悪い椅子とか
浮かぶんですかね?
ラストシーンの主人公を
映画終わった後に
劇場で彼女に真似したら、
死んだやつの真似したかと
勘違いされました(笑)


クローネンバーグ作品は
ほとんどが
難解で哲学的な作品ばかりですが、
その中で珍しく?
普通(じゃないけど)な作品が
このエム・バタフライ。
実話を元に描かれた舞台劇の映画化で、
堕ちていくエリートを演じたら
右に出るものはいない
ジェレミー・アイアンズさんが主役。
そのジェレミー・アイアンズさんが
ジョン・ローンさん演じる女性を
男性だとは思わず愛してしまう
物語なんですが、
物語後半のシーンが
すごく切ないんです

護送車の中で
二人きりになったところで
ジョン・ローンさんは
服を脱ぎだして
これでもお前は
俺を愛せるのか、
とジェレミー・アイアンズさんに
迫ります。
それを見たくもないといった感じの
ジェレミー・アイアンズさんに
男の自分のすべてをさらけ出した上で
ジェレミー・アイアンズさんに
愛してほしいと
ジョン・ローンさんが
女性になっていた時の声色や
しぐさで伝えるのですが、
そこには女性の姿をしていた時の
ジョン・ローンさんの瞳なんです。
それを
私が愛したものはお前が作り出した幻、
とジェレミー・アイアンズさんが
拒絶して、
ジョン・ローンさんが
裸のまま護送車の端にうずくまって
嗚咽をもらすのですが、
あのシーンがあるために 
この映画はある
というくらいに素晴らしいシーンで、
学生の頃はわかりませをんでしたが、
歳を重ねて恋愛も重ねた時に
観返して泣いてしまいました

カルーセル麻紀さんは
この映画を涙なしでは観られない、 
とおっしゃっていたそうですが、
今はそのお気持ちに深く共感します

話がそれてしまいましたが…
思えばクローネンバーグ作品らしからぬ
作品ですが、
今回観た作品も
こちらも大好きです

そして…
またまた
関係ない話ですが、
昔会社の女の子を主役にした
落書き漫画が
会社のパソコンに残ってました(笑)




今日も
よい一日に
なりますように