春の新作@アシッドラシーヌ | ボヌール☆花粉 松本由紀子オフィシャルブログ


 

FB読者のお客さまが多いので、新作が登場するという情報が流れた途端、
朝一番から多くの方が並ばれる「アシッドラシーヌ」さん。
私も新作&大好きなあの子の復活情報を聞き、お伺いしてきました。

新作の「オリエントエクスプレス」は、 昔、橋本シェフが修行されていた
アルカションのマルケというお店のお菓子を、
シェフなりに再構築したお菓子なんだそう。
基本は守りつつも、橋本ismがプラスされています。

ホワイトチョコのババロア・ヴァニーユの中には、
エピスで香りつけしたイチゴのジュレ。
エピスを効かせたビスキュイ・ジョコンドを組み合わせて。

今年の橋本シェフのテーマは「油脂分を少しずつ減らして、香りを引き出す」こと。
なので、本来はババロアではなく、ムースにしたかったとのことですが・・・
イタリアンメレンゲを入れた油脂量の少ないムースよりも、
油脂量は多くなるけれども、空気が少なくツルンとした食感で、
味わいもしっかりと重いババロアの方がこの生地には合うとのこと。
ただ生クリームなどを増やすことで油脂量を増やすのではなく、
ホワイトチョコレートを少し多めにすることで油脂量を増やし、
イタリアンメレンゲも少量加えるという橋本流のババロアに仕上げられています。

食べてみるとまさに、トゥルンとした食感♪
淡く儚く消えてしまうのではなく、お口の中での滞在時間が長くいので、
しっかりと生地とコンフィチュールを受け止め、一緒に溶け消えていきます。





 
 


 

純真無垢なビジュアルながら、カットした瞬間に、エピス
(アニス、シナモン、ナツメグ)がふわりと香りたつ妖艶さ。
一瞬にして、好き♡と恋に落ちてしまいました。

まずイチゴの酸味がパーンと弾け、次に甘やかなヴァニラの香りが追いかけてきて・・・
最後はオーガンジーのストールのようにふうわりと。。。
エピスの香りの余韻に包み込まれていきます。

中に鋳込まれているイチゴのコンフィチュールは、
最初、日本のフレッシュのイチゴで試されたそうなんですが、
砕いてみると水っぽくなってしまって、なにか違う。。。
そこでチリ産イチゴの完熟冷凍ホールとピューレを合わせることで、
やや果肉感を残しつつ、甘みも酸味も凝縮したジュレに
仕上げられています。

さらにシェフが、御自分のイメージにこだわりにこだわりぬかれた生地は、
まだ改良の余地ありとのことですが・・・
いわゆるビスキュイ・ジョコンドのような生地で、ふわっ、ねちっ、ざらっとした食感。
橋本シェフ的には、油脂分をぬぐってくれる、もう少しカラッとした
テクスチャーを追及したいとのこと。

シャープながら丸みを帯びたエピスのオリエンタルな香りと、
イチゴのキュンとした酸味、ヴァニラの甘やかな香りの麗しのマリアージュ。
橋本シェフが今年目指す「香りを引き出す」というテーマを
まさに体現しつつある、春を呼ぶお菓子だなぁと感じました。
進化系も追いかけていきたいと思います!

ちなみに「オリエントエクスプレス」というネーミングの由来は、
マルケのシェフのみぞ知る・・・なんだそうですが(笑)
やはりエピスのオリエンタルな香りからきているのでは?!とのこと。
ただ単にオリエンタルよりも、オリエントエクスプレスの方が
さらに気品あふれる高貴なイメージで、このネーミングがまた
お客様のこころをとらえちゃうんでしょうね。





 
 




オープンニングの時に登場していた、私も大好きなグリオット・ピスターシュが復活!

ピスタチオの生地とクリーム、そしてグリオットチェリーのクリームとジュレが
幾重にも重なった、断面が凛と美しくそそり立つお菓子。
ピスタチオの萌黄色と、華やかに咲き誇るお花を彷彿とさせる
グリオットの鮮やかなピンク色が、まさに春のイメージにピッタリのお菓子です。

グリオットチェリーは、クレーム・ムースリーヌとジュレ。
このコンフィチュールのようなジュレ。
実は橋本シェフの失敗から生まれたもので(タタン姉妹のよう^^;)
長時間火にかけっぱなしにして水分を飛ばすことで、
コンフィチュールともまたひと味違う、コンポート・セックとも
呼ぶべき糖度・濃度に仕上げられています。
何とも言えない、グリオットが持つ滋味深い酸味と旨味が
ギュギュッと凝縮した感じ。
失敗から生まれたこの製法を、今は色々なフルーツで使われているそう。

ピスタチオのクレーム・ムースリーヌには少しメレンゲが加えられていて、
ナッティな香りがほろり…とほどけるように広がっていきます。
イタリア シシリー・ブロンテ産の最高級にピスタチオペーストに
もう1種類イタリア産のペーストをブレンドすることで、どこまでも芳醇かつ濃厚に。
奥ゆきのあるナッティなテイストと鮮やかな萌黄色を醸し出しています。

そしてこのお菓子の美味しさの主役は、ピスタチオの生地!
だと私は思うのですが・・・
この生地は、単にビスキュイ・ジョコンドにピスタチオのコンカッセが
散りばめられているのではなく・・・
パート・ド・ピスターシュを加えた生地の材料を練ることで、
ピスタチの油脂分、ひいては旨味を引き出した
まさにピスタチオ感が存分に味わえる生地なんです!
ちょっともろもろっと崩れ落ちる食感がフランス菓子らしくて、私は好き。

まったりと濃厚なクレームとぼろつき感のある生地の食感のコントラスト。
そしてグリオットの滋味深い酸味と、ピスタチオのナッティで芳醇な香りのコントラスト。
と一見真逆なベクトル上にいるように見えながらも、
最後は香りに導かれ、見事なまでに融合され、昇華していく。。。
この絶妙なバランスからの生まれる渾然一体感が、美味しさの秘密なんですね。