「ハード・トゥルース 母の日に願うこと」
を観ました。Fan’s Voiceさんの独占最速オンライン試写会が当たり観せていただきました。(@fansvoicejp)
ストーリーは、
配管工の夫と20代の無職の息子とともにロンドンで暮らすパンジー。常に何かに苛立ち、身近な人々との衝突を繰り返している。ある年の母の日、パンジーの妹・シャンテルの提案で亡き母の墓参りにしぶしぶ出かけたパンジーは、自分の秘められた気持ちと向き合うことになる。
というお話です。
パンジーは、温厚な配管工の夫カートリーと成人した息子モーゼスと暮らしています。彼女はいつも何かに苛立ち夫や息子に当たり散らしており、外に出ていけば誰此れ構わずに口論を吹っ掛け、批判したりしてしまいます。不安障害を患っているのか、外出もあまりせず、動物や花にも嫌悪感を抱いているんです。
一方、成人した二人の娘を持つシングルマザーの妹のシャンテルは美容師をしており、母パールの5回忌である母の日に墓参りに一緒に行こうとパンジーを何度も誘いますが、パンジーからの良い返事は帰ってきません。
結局、シャンテルと共に母親の墓参りに行ったパンジー。そこでパンジーは母親がシャンテルを贔屓し、自分は母親に愛されていなかったと主張します。シャンテルはそんな事は無かったというが、パンジーは自分は家族に嫌われていると思いずっと怖かったと告白。シャンテルは愛しているから大丈夫だと慰めます。
墓参りから帰宅し、シャンテルの家で母の日のお祝いをしているが、パンジーは自分が夫にも息子にも嫌われていると感じていて黙り込んでいた。しかしそこで思いがけないプレゼントがある事を知り…。後は、映画を観てくださいね。
この映画、題名は「厳しい現実」で、題名の通り、パンジーの厳しい現実が描かれています。このパンジー、マジで気分が悪くなるほど嫌な女で、絶対に関わりたくないと思うほど酷い性格でした。性格の悪い人を見ていつも思うのですが、性格が悪いから人に嫌われるのか、人に嫌われたから性格が悪くなったのか、どっちなんでしょうね。ここまで酷い性格だと精神的な病気なのではないかと思います。不安症だけではなく躁鬱もあるのかな。
そんな彼女が昔から不安に思っていたのは、妹ばかり贔屓する母親を見て自分は嫌われているということ。そしてそれが尾を引き、夫と息子も自分を嫌っているだろうと考えているんです。このパンジーの考え方は負のスパイラルになってますよね。自分は嫌われているからと思って、相手にキツく当たり遠ざけてしまう。好かれようと自分から近づくことが出来れば、嫌われないと思うんですけどね。
それにしてもパンジーの態度は酷かった。スーパーではレジの店員に「そんな顔で食料品を扱うな。」とか、家具屋では「あんたに何か教えてくれなんて言ってない。」とか、ソファを選んでいる他の客に「あんた達の汗が付いたソファなんて気持ち悪くて買えない。」とか、もうめちゃくちゃでした。あり得ないでしょ。まったく知らない人に対してですよ。カスハラを通り越して犯罪でしょ。
夫にも息子にも当たりがキツいんです。そして自分は頭が痛いとかお腹が痛いとか言って昼から寝てるんです。はっきり言って、なんで夫は離婚しないんだろうと不思議でした。夫は配管工として必死で働いているのに、文句ばかりいう妻に何も言わないんです。まぁ、何か言えば何倍にもなって返ってくるので言えませんよね。
息子のモーゼスは成人過ぎても働かずに家でゴロゴロしています。ちょっと引きこもり気味かな。パンジーはモーゼスに働きもせずにと顔を合わせる度に文句を言います。モーゼスはとても良い子のようですが、どちらかというといじめられっ子です。母親が強烈なので委縮してしまい、戦うことを放棄しちゃったんじゃないかな。
夫も息子もパンジーがあまりにも強烈なので、直接に話をすることも出来ないんです。このままではいけないと思っていながらも、どうすることも出来ない夫と息子。可愛そうでした。パンジーが少しでも人の話を聞くことが出来れば、こんな酷いことにはならないような気がするのですが、観ていると全く人の話を聞く余裕はなさそうなんですよ。ここまで酷くなると、もう修復は難しいんじゃないかな。
通常、年を取れば性格も柔らかくなりそうなもんだけど、時々、反対に酷くなる人もいますからね。いや、でも、何がそんなに怒れるのかなぁと不思議になりました。そんなに相手がどう思っているかが気になるのかしら。不安なのはわかるけど、別に嫌われていてもいいじゃんと思うのは私だけなのかしら。
街に出て、そこに居る人たちが何を思っていようがどーでもイイでしょ。自分は自分の目的だけが達成出来れば、相手がどう思おうとそれでいいんじゃないの?目的の買い物が出来ればいいじゃないですか。私には何故そこまで人を気にして目線を気にして生きなければいけないのかが解りません。
それに家族に嫌われているから怒るというのも不思議でした。嫌われようが何しようが、自分が家族を愛すればいいんじゃないの?相手から愛して貰おうと望むより、自分が愛さなきゃ始まらないでしょ。野良猫を拾ってきて、最初はシャーシャーされていても愛情を注げば懐いてくれるでしょ。それと同じなんじゃないかな。私はそう思っているので、嫌われているから文句を言うなんてことは出来ませんし、文句も出てきません。
この映画、不思議な映画で、パンジーという主人公が酷く嫌な奴で嫌い!と思うんだけど、段々と可哀想な人だなぁと思い始めるんです。結局、怖くて怖くて自分から愛することが出来ないんですよね。
周りの人々はそんなパンジーでも愛しているし助けようとしていて、夫も息子も愛情を持っていると思うんです。でも、それを信用出来ずに自分から突き放してしまう。本当に可愛そうだなぁと思いました。自分の首を絞めるというのはこういう事を言うんだろうと思います。人を信用出来ない人は人間崩壊してしまうんですね。
ちょっと今までに観たことが無いお話で、人間の本質を描いている凄い作品でした。最初はイジワルなおばさんが怒鳴り散らしているだけの映画に思えるんだけど、じわじわとその理由や人間はどうあるべきだという本質が見えてきて、周りの人がその毒に侵されて苦しんでいる様子が辛くなり、うわぁ~ってなるんです。いやぁ、凄かった。
ちなみにこの映画、2024年の26の映画賞の57部門にノミネートされ25部門で勝利しています。イギリスの巨匠マイク・リー監督作品です。
私はこの映画、超!お薦めしたいと思います。だけど賛否別れる映画だなと思いました。これダメな人は全く受け入れられないと思います。好き嫌いが分かれるでしょう。ガミガミおばさんを嫌悪するか同情するかで分かれるような気がします。私は可哀相なおばさんだなと思い、とても面白く感じました。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「ハード・トゥルース 母の日に願うこと」