「遠い山なみの光」あの戦争が原爆が壊したのは人の心でした。前を向いて進むしかない時代のお話です。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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「遠い山なみの光」

 

を観てきました。完成披露試写会(Fan's voiceさん枠)が当たり観せていただきました。(@fansvoicejp)

 

ストーリーは、

1980年代、イギリス。ロンドンで暮らすニキは、大学を中退し作家を目指している。ある日、実家を訪れる。母・悦子の半生を作品にしたいと思ったのだ。かつて長崎で原爆を経験した悦子は戦後イギリスに渡ったが、ニキは母の過去について聞いたことがない。そして母は近頃よく見るという夢の内容を語りはじめる。

というお話です。

 

 

1980年代。日本人の母とイギリス人の父を持ち、大学を中退して作家を目指すニキ。彼女は、戦後長崎から渡英してきた母悦子の半生を作品にしたいと考える。実家に戻り、母に話を聞きながら過ごしているが、今はいない義姉のことはどうしても受け入れられず、父の書斎だった部屋で寝泊まりしていた。

 

娘に乞われ、口を閉ざしてきた過の記憶を語り始める悦子。それは、戦後復興期の活気溢れる長崎で出会った、佐知子という女性とその幼い娘と過ごしたひと夏の思い出だった。最近、よく夢で見るらしい。母は戦地から戻った夫と団地で暮らしており妊娠していた。義父が福岡から訪ねてきてしばらく泊まっていた。

 

 

そんな夏に悦子は佐知子と出会ったのだ。団地から見える川辺に建つ小屋に佐知子は娘と住んでいた。彼女はアメリカに移り住むことを夢見ていて、駐留軍のアメリカ兵士と付き合っていた。娘の万里子はどこか変わった子で佐知子も手を焼いていた。

 

初めて聞く母の話に心揺さぶられるニキ。だが、何かがおかしい。彼女は悦子の語る物語に秘められた<嘘>に気付き始め、やがて思いがけない真実にたどり着く。後は、映画を観てくださいね。

 

 

この映画、凄く良かったです。戦争が終わって国は前に進み始めているけれど、住んでいた日本人たちはそう簡単に変わることは出来ず、誰もがもがいていたんだろうなということを感じられる内容で、原爆被害者の気持ちや悲しみも描かれていました。

 

一番重要なのは、悦子という女性がどんな嘘をついていたのか。何故嘘をつかなければならなかったのか。その嘘は、本当に嘘なのか、それとも彼女の中では嘘ではないのか。彼女はそれを嘘と解って話しているのか、それとも嘘とは思っていないのか。ネタバレ出来ないので内容は書きませんが、深いお話でした。

 

 

悦子は音楽教師として働いていて、学校の恩師の息子と戦前に結婚し、夫は戦争へ行き、悦子は長崎で帰りを待っていたようでした。戦争末期、長崎に原爆が落ちましたが、悦子はたまたま爆心地から遠くにいて被爆をしなかったらしいんです。そして帰ってきた夫と団地で暮らしていました。

 

団地の窓から川辺が見えて、その川辺に佐知子と万里子が住んでいたんです。最初は悦子が万里子が虐められているのを助けたことから交流が始まります。佐知子は東京で良い暮らしをしていたようですが、長崎へ来て原爆被害に遭い、今は仕事も無く小屋で暮らしていました。佐知子は悦子が紹介したうどん屋さんで働くことになります。

 

 

悦子の夫・二郎は軍人でしたが戦争から戻り、サラリーマンになったようでした。毎日ネクタイを締めて会社へ行きます。昭和ですから妻は召使と同じで、現代のように妻に気を遣うようなことは一切ありません。その関係に愛は無いように見えました。

 

義父・緒方が訪ねてきてしばらく家にいましたが、二郎と緒方の関係は悪そうでした。二郎は父親が軍国主義の教育者として崇められていたのに、戦争で負けた今は子供を洗脳教育した人間と言われて戸惑っている姿が描かれます。

 

 

それぞれの人間は悦子の過去の思い出として描かれるので、悦子から見た人々の姿なんです。本当の姿は解りません。それぞれの人物や出来事、時間を合わせていくと、どーも合わない部分が出てくるんです。そして悦子が思い出の中で漏らす言葉。すべてにヒントがあり、うーんと唸るほどでした。

 

うーん、ネタバレ出来ないから苦しいなぁ。沢山のネタフリがあり最後にネタ回収をするのですが、それが上手いんです。途中途中で至る所に、あれ??という部分があり、私はもしかしたら…と考えていました。私は原作小説を読んでいないのですが、原作本のあらすじを読んだところ、きっと映画の方が解りやすく描かれているんだろうなと思いました。

 

悦子は前の夫とではなくイギリス人と再婚をして、今現在はイギリスに住んでいます。では前夫とはいつ別れたのか。義父はどうなったのか。悦子のご両親はどうしたのか。まったく描かれない部分があるのですが、その部分が重要なんじゃないかと思うんです。

 

 

想像を膨らませると、悦子の両親は亡くなっていて、夫や義父ももしかしたら亡くなってしまい、再婚したのかもしれません。となると、いつ亡くなったのか。ここネタバレに近くなるのでぼやかしますが、悦子が思い出していた過去は時間にズレがあったんじゃないかと思うんです。そう考えると、話が繋がって理解が出来るようになるんです。

 

1950年代を悦子は思い出しているのですが、既に団地が建っていて3LDKくらいありました。4階建くらいだったけど、あの時代に既にあんな技術があったのかな。水道やガスはどう上げていたのかな。不思議でした。戦後10年は経っていない設定なので、凄い勢いで復興したんですね。驚いたよ。

 

 

そんな団地で幸せな結婚生活を送っているように見えている悦子ですが、ここで1つだけ彼女の嘘を書きます。そしてそれが一番の根源だと思いますが、彼女が原爆の日に長崎の爆心地近くにいたのか。被爆をしたのかという事です。

 

夫には被爆していないと話していたようですが、佐知子との話では被爆しているんです。そして佐知子は被爆者です。被爆しているしていないで生き方が変わり、子どもを産むこともためらわれる時代です。そんな悲しさがこの映画には描かれていました。

 

そのことが、悦子がイギリスへ渡ったことに繋がるのではないかと思います。本当に深いお話でした。観る前の舞台挨拶で、1度見ただけでは全てが理解出来ずに何度も観る映画ですと監督がおっしゃっていましたが、確かにそうだと思います。この悲しみ、哀しみは日本人が一番理解出来ることだと思いました。

 

 

私はこの映画、超!超!お薦めしたいと思います。キャストも素晴らしいのですが、特に内容が良いです。あまりにも良くて、キャストに関して書く場所が無かった。広瀬さん、二階堂さんが素晴らしい。そして周りを固める方々の絶対的安心感は揺るぎませんでした。素晴らしかった。9月5日公開ですが原爆の日を思い出して観て欲しい。私は泣けました。終わった時、声が出ませんでした。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「遠い山なみの光」