「夏の砂の上」
を観てきました。
ストーリーは、
からからに乾いた夏の長崎。幼い息子を亡くし、妻・恵子と別居している小浦治は、働いていた造船所が潰れても職を探さずふらふらしていた。そんな治のもとに、妹の阿佐子が娘を預けに来る。不器用ながらも懸命に父親代わりを務める治との暮らしになじんできた頃、優子は治と恵子が言い争う現場に遭遇する。
というお話です。
雨が一滴も降らない、からからに乾いた夏の長崎。幼い息子を亡くした喪失感から、幽霊のように坂の多い街を漂う小浦治。妻の恵子とは、別居中だ。この狭い町では、元同僚の陣野と恵子の関係に気づかないふりをするのも難しい。
働いていた造船所が潰れてから、新しい職に就く気にもならずふらふらしている治の前に、妹・阿佐子が、17歳の娘・優子を連れて訪ねてくる。おいしい儲け話にのせられた阿佐子は、1人で博多の男の元へ行くためしばらく優子を預かってくれという。こうして突然、治と姪の優子との同居生活がはじまることに。
高校へ行かずアルバイトをはじめた優子は、そこで働く先輩の立山と親しくなる。懸命に父親代わりをつとめようとする治との二人の生活に馴染んできたある日、優子は、家を訪れた恵子が治と言い争いをする現場に鉢合わせてしまう。
息子の死を受け入れられない治、そんな夫を捨てて街を出て行こうとする恵子、親に捨てられて伯父の家で暮らす優子。乾いた長崎で乾いた心の痛みを抱いた3人の運命が交錯する。後は、映画を観てくださいね。
このお話、3年前に舞台で観たんです。田中圭さんと山田杏奈さんが治と優子を演じてくださって感動だったのですが、今回のオダギリさんと髙石さんも良かったなぁ。このお話、子供を亡くした治がどうしても前に進めず、妻にも捨てられ、仕事場も潰れてしまい、この先どうするんだろうというところから始まります。
何かきっかけがないと、息子の死を受け入れられないというのはとても良く解るんです。これから育てていくっていう時に突然に居なくなったら、いきなり前の足場を外されたような状態でどうしようもないんだと思います。そしてそんな夫を見ていることで、妻は反対に冷静になっていったんじゃないかな。こういう時って、どちらかが悲しみ過ぎると、それを見て悲しめなくなるんですよね。すごくこの状況が理解出来ました。
そしてそこに預けられた優子。治の妹・阿佐子は自分の事しか頭に無くて、治や恵子の状況なんて関係なく、娘を置いていくんです。いやぁ、凄い強烈なタイプでしたが、こんな人、いますよね。で、恵子は別居して家から出て行っているので、治と優子の2人で暮らすことになるんです。
治は姪っ子ながらも、ちゃんと自分の子どものように面倒を見ようと頑張り始めるんです。優子は17歳なんだけど高校へは行っておらず、街のスーパーでアルバイトを始めます。日々の暮らしの中、優子に彼氏が出来たり、治の恩師が亡くなったり、色々な事が起きますが段々と二人に絆のようなものが出来ていきます。それが何となく伝わってきて、良かったなぁ。
それぞれがとても孤独で、誰も信用せずに生きていたんだけど、生活の中で相手の苦しみや寂しさを知り、距離が近づいていく雰囲気が良いんです。言葉で何か言う訳では無いんだけど、その視線や態度で、お互いに信用し始めているのが伝わってくるんです。
人間って、周りの人間が煩わしいと思う事も多いんだけど、いざ一人になると寂しいんですよね。誰かにそばにいて欲しいとか、頼りたいとか、そんな気持ちになるんです。映画の中で、治はもう一人でいいと思っていたんだけど、恩師が亡くなった時に突然恵子にちょっかいを出す場面があるんです。きっと自分の周りから誰もいなくなってしまうという恐怖が、恵子に残って欲しいという気持ちになり手を出したんだと思うけど、それは恵子を愛しているからではないので恵子ははっきり断るんです。うん、これはダメだよね。そして恵子は去っていくんです。
治は可哀相な人だけど、自分で立ち上がって進み始めないと誰も何もしてあげられないんですよね。そんな治に最後に寄り添ってくれたのが、優子だったんだと思うんです。優子は奔放な母親に捨てられて、一人で生きなきゃという覚悟を決めていたんだと思うけど、治が自分の親になろうとして頑張ってくれている姿を見て、やっと子供として愛されることを知ったんじゃないかな。
きっとこれからどうなろうと優子は治の味方をしてくれるだろうし、何があっても、忘れずに治伯父さんのことを思ってくれているんだと思いました。それくらい、治は優子を自分の娘のように受け入れて、ちゃんと保護者になろうと頑張ったんだと思うんです。だから優子もお返しをしたんだと思いました。
私はこの映画、お薦めしたいと思います。とっても良い映画なんだけど、楽しく騒ぐような映画ではないので、単館系映画が好きな方には好まれるかなと思います。元々が舞台で演じられている戯曲なので、そんなに大きな動きはありません。心の動きを見る映画です。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「夏の砂の上」