「かくかくしかじか」
を観てきました。
ストーリーは、
宮崎県に暮らす林明子は、幼い頃から漫画が大好きで、将来は漫画家になりたいと思っている。その夢をかなえるべく美大進学を目指し、受験のために絵画教室に通うことになった。そこで出会ったのがスパルタ絵画教師の日高先生だった。
というお話です。
宮崎県に暮らす林明子は子どもの頃から漫画が好きで、将来は漫画家になりたいという夢を持っていた。両親も明子を可愛がり、夢を応援していた。しかし何の勉強もせず高校3年になり、美術部でも絵が上手いと褒められていい気になっていたが、友人が美大受験のための絵画教室に通っていると聞き、自分も通うことに。
その絵画教室では、竹刀片手に怒号を飛ばすスパルタ絵画教師の日高先生がいた。有名な画家らしいが、安値で受験生などに絵を教えているらしい。デッサンを持っていった明子の絵を見て”下手”と言い放つ日高先生。今まで甘やかされて”上手い””天才”と言われてきた明子はカルチャーショックだった。
しかし美大に受かるためには先生に教えを乞うしかない。教室に通い始めた明子は、日高先生のスパルタ教育によって画力を付けていく。いつも”描け描け”という先生にうんざりしながらも必死で付いて行く明子だった。
無事第二希望の大学に受かった明子は宮崎から金沢に行き、段々と先生との距離が開いていく。大学では絵を描くことも減っていき、先生の”描け描け”に嘘の返事ばかりを返すようになってしまう。そして…。後は、映画を観てくださいね。
この映画、面白かったなぁ。東山先生の漫画って面白くて、いくつもドラマ化されたりアニメ化されたりしてますよね。その先生にこんな歴史があることを知りませんでした。この「かくかくしかじか」は読んだことが無かったんです。
いやぁ、この日高先生が強烈でした。良い先生ですね。本当に絵が好きで、人も好きだから先生をやってらっしゃるんでしょうね。こういう人物は現代ではいなくなったんだろうなぁ。何でもお金という世界になってきてしまって、絵だってAIが描く時代になってしまい、本当に悲しいです。絵だけは人間が創造して描くものなのにね。
私も恥ずかしながら美大出身なので、受験前は絵画教室に行きました。週2回くらい行っていたかな。デッサンばかりをやらされて大変でしたが、確かに描けば描くほど上手くはなっていくんです。なので日高先生が描け描けと言っていたのは凄くよく理解が出来ました。でもこの映画では、上手くなるよりも絵を描くのが好きというのが根底にあったんでしょうね。
主人公の明子は、絵を描くのは好きだけど漫画が描きたいのであって、絵を描きたいんじゃなかったというのが問題だったのかな。でも絵は好きだったと思うんですけどね。それにこんなに情熱的な先生に描け描けって言われていたら、知らず知らずの内にデッサンを描くのも好きになっていたんじゃないかな。
大学に入学してからは、女子大生を満喫してしまい全く絵を描いていないようでした。ま、これはみんな同じですよ。入学までは頑張るけど、入っちゃったら勉強しないという日本の大学の悪いところです。もっと簡単に入学出来るようにして、勉強しないと卒業出来ないように変えていくべきだと思うんですけどね。そうなれば大学中退は評価されなくなり、卒業がとても重要になるはずでしょ。ま、それには日本の奨学金制度も考えるべきなんですけどね。それについては、また今度にしましょう。
大学卒業してから宮崎に戻ってきた明子は、また先生の教室に手伝いに行くようになるのですが、ニート生活は許されず、会社にも通うようになります。なんか、この明子のルートって、私と同じなんですよぉ。きっと明子は大学で教職も取っていたんじゃないかな。
日高先生から先生の仕事をあっせんされたりもあったので、あー、私と一緒だなと思っちゃった。私は美大を出て就職したけど教員免許も取っていたので、明子と同じ感じ。ふらふらしながらどうしようかなと考えて、結局私は建築を始めてしまったけど、明子は漫画家。いいなぁ、漫画家になれたなんて。私は絵が下手だったからなぁ。(笑)
こんなスパルタ教師の日高先生に出会えたのは宝物のような思い出ですよね。本当に羨ましい。こんなに関わった生徒のことを思ってくださる先生ってそういませんから。そして本当に絵が好きというのが溢れている先生でしょ。こんなに絵が好きな先生に描けと言われたら、描きませんとは言えないよね。だから描いていないのに描いていると言う気持ちは解ります。先生を傷つけたくないもん。先生はお前も絵を描くのが好きだろとずっと語り掛けていたんだと思うんです。だから嘘でも描くというしかなかったんだと思います。
きっと、先生は解っていたんじゃないかな。沢山の生徒を教えているから、この子は絵が好きで描いているんだと感じていたんだと思うんです。それが漫画でも何でも、絵を描くことが大切だということなんじゃないかな。好きな絵を描いていられることがしあわせなんだと教えてくれたんじゃないかな。
そして明子は有名な漫画家に成長している。先生は亡くなってしまったけど、先生の言葉はずっと明子の中に生きているんだと思います。その言葉があるからこそ、明子はいつまでも漫画を描くことを楽しめるし、続けていけるんじゃないかと思います。
この映画、永野さんと大泉さんが凄く良かった。永野さん、ちょっと変な事で話題になっちゃっているけど、これだけ演技が上手いんだからくだらないことで話題にならないで仕事に集中した方がよいです。少し書かせてもらうと、彼女はこの容姿でこういう性格だから、どうしても少女漫画の可愛い顔して悪どい女のイメージが重なっちゃうんだと思います。何もしてなくてもしていたとしても、神妙な顔をして誤解させてごめんなさいと一言で終わる女優さんもいるのに彼女は疑われちゃうんだろうな。可哀想に。
大泉さんは相変わらずどんな役もこなす、素晴らしい役者さんですね。日高先生の気持ちが痛いほど伝わってきて哀しくなりましたもん。永野さんと大泉さんのやり取りが上手いです。これだけテンポよくやってくれると、どんな感動作でもしんみりせずにしあわせな気持ちになって帰って来れるので嬉しいです。
私はこの映画、超!お薦めしたいと思います。これは誰が観ても楽しめて、気持ちがほっこりするんじゃないかな。良い映画でした。私はこういう映画好きです。東村アキコ先生も好きです。東村先生の作品も好きです。この映画の原作は読んでいませんでしたが。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「かくかくしかじか」