「ガール・ウィズ・ニードル」戦後の混沌とした時代に貧困女性がどうやって生きていたのかが解ります。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
スミマセンが、ペタの受付を一時中断しています。ごめんなさい。

 

「ガール・ウィズ・ニードル」

 

を観ました。Fan’s Voiceさんの独占最速オンライン試写会が当たり観せていただきました。(@fansvoicejp)

 

ストーリーは、

第1次世界大戦後のデンマーク、コペンハーゲン。お針子として働く女性カロリーネは、恋人に裏切られて捨てられ、お腹に赤ちゃんを抱えたまま取り残されてしまう。彼女はダウマという秘密の養子縁組機関を運営する女性と出会い、乳母として働くことに。ダウマに親しみを感じ、2人の間には絆も生まれていくが、カロリーネはやがて恐ろしい真実を知ってしまう。

というお話です。

 

 

第一次世界大戦後のコペンハーゲン。お針子として働くカロリーネはアパートの家賃が支払えずに困窮していた。戦争に行った夫の生死は解らず、未亡人の手当を貰おうと会社に申請するも死亡通知書がなければ貰えないと言われてしまう。

夫の調査をしてくれた勤め先の工場長と恋に落ち妊娠し、結婚しようと言われて自宅へと招かれる。工場長の母親と挨拶をし、妊娠を確認されるも、結婚するなら二人で家を出て母親の目の届かない場所へ行くようにと言われ、工場長は遊びのつもりだったと告白し、カロリーネは捨てられてしまう。おまけに工場も解雇されてしまう。

 

 

すでに妊娠していた彼女は困り、自力で堕胎をしようと針で突こうとするが公衆浴場で止められてしまう。砂糖菓子屋のダウマという女性と出会い、彼女の裏の仕事であるもぐりの養子縁組斡旋所を教えられ、望まれない子どもたちの里親探しを有料ですると言われる。生まれたら連れておいでと言われて別れる。

 

死んだと思われた夫が帰ってきたが、顔が半分えぐれており、子供を一緒に育てると言われるが、カロリーネは生まれてすぐに子供を連れて家を出てダウマに子供を渡し、足りない料金は乳母として働くと交渉し、ダウマの店で働くことになる。二人の間には強い絆が生まれていくが、やがて彼女は悪夢のような真実に直面することになる。後は、映画を観てくださいね。

 

 

この映画、衝撃的な内容でした。全てモノクロで撮影されていてコントラストが強く、暗い画面なんだけど、段々と内容を観ているとグロテスクな赤が見えてくるんですよねぇ。鑑賞後のアフタートークで映画評論家の高橋さんもおっしゃっていたけど、フランシス・ベーコンの絵を思い出すのよ。あのグログロした感じの怖い感触が赤を想像させるんだと思うんです。この事件は実話を元に作られたフィクションだそうです。

 

第一次世界大戦末期、カロリーネの夫は消息が分からず戦死したとの連絡もないので彼女は困っているんです。1年前くらいに手紙も出したんだけど何の返事もなく、生きているのか死んでいるのか分からない。縫製工場のお給料だけではやって行けず、家賃も滞納してしまい、家を追い出されてしまいます。

 

工場に未亡人の手当を貰いたいと訴えても夫の死亡届が無いと出せないと言われ、八方塞がりなんです。困っている彼女に手を差し伸べたのが工場長ヤアアン。カロリーネの夫の行方を探すという口実でカロリーネに近づき恋仲に。妊娠したカロリーネにカッコよく結婚しようと言いますが、工場経営者のヤアアンの母親が結婚するなら工場から二人で出ていくように言うと、意思を変えて遊びだったという事で結婚は取止め、カロリーネは工場も解雇されてしまいます。

 

 

現代なら、いくらでも訴えるとかやり方があるんだけど、この時代は女性の地位が低く、まして貧困層の女性が妊娠したって平気でほおりだすんです。酷い男なんだけど、お金持ちには誰も文句が言えず泣き寝入りなんですよ。酷いでしょ。

 

でもカロリーネも工場長と結婚出来るなんて思っていたなら、相当に頭が悪いとしか思えませんでした。この時代にシンデレラストーリーなんてある訳がないでしょ。どう見ても遊ばれているようにしか見えず、豪華なドレスを着てヤアアンの実家に行ったときは、マジか??と思っちゃった。

 

そして思った通りに撃沈され、仕方なく家に帰って妊娠している子供を堕胎しようと公衆浴場に行き、水に浸かりながら針で堕胎をしようとするんです。何で針で刺そうとするのよ。凄く痛そうでしょ。この時代、このやり方しかなかったのかな。あまりにも残酷で驚きました。そして、ダウマという女性に助けられるんです。

 

 

ダウマに出会って、生まれたら養子に出せばいいと言われて産むことにするんです。人身売買は違法だと言っていたけど、妊娠させた男に罪はないのかってことですよ。女性は貧困で生きていくのもやっとなのに、子供なんて育てられないでしょ。

 

ホント、現代の日本でも一緒だけど、子供を放置して死なせたら母親逮捕とか、産んですぐに捨てたから母親逮捕とか、どうして女性だけ苦しまなきゃいけないの?妊娠させたのは男性でしょ。どう考えても妊娠させた男も逮捕しなきゃおかしいよね。だって育てられないって解っていて妊娠させられてるんだから。

 

じゃぁ、堕ろせばというけど、堕ろすのだってタダじゃないし、貧困だと妊娠したことさえ確認出来ない人だっているかもしれない。DNA鑑定が直ぐに出来るようにして、妊娠させた父親も逮捕しなければ平等じゃないよね。ま、直ぐにDNA鑑定が出来るようになると困る母親もいるだろうけどね。托卵する男もいるようだから。でもすぐに鑑定出来るようになれば、男性も自分の子じゃない子を育てることも無くなるだろうけど。

 

 

話を戻して、カロリーネは生んだ子を直ぐにダウマの所に連れて行き、養子としてくれるように頼みます。ダウマは引き取って、裕福な家の方に縁組するからというんです。でもカロリーネは養子代金を全額払えず、足りない分を働いて返すと言い、ダウマの店で暮らすようになります。

 

カロリーネが妊娠してワタワタしている間に夫が戦地から帰ってきて、顔が半分無くなっていることが解ります。マスクで隠しているけど、それはもう酷い状態でした。カロリーネは自分の事で精一杯で夫に出ていけと言い、夫はその酷い顔を見世物にしてサーカスで働き始めるんです。

 

これ凄い描き方だと思ったのですが、戦争で国のために戦って顔を吹き飛ばされた男が、帰ってきてサーカスの見世物小屋で人に笑われてお金を稼ぐって凄くないですか?笑っている人々をのために戦ったんでしょ。戦争に行かなかった人々は何の感謝もしていないってことですよ。戦争に行った人間はバカを見るってことです。だから戦争なんてやるべきじゃないってことを描きたかったのかなと思いました。

 

 

カロリーナは自分の子供を養子に出し、ダウマの店に連れてこられる子供たちを養子に出すまで面倒をみる仕事をしていました。ダウマの店に、ダウマの娘じゃないと思うけど8歳くらいの女の子エレナがいて、エレナが母乳を欲しがるのでその子にも母乳を上げていました。

 

何故8歳にもなっておっぱいを吸うのか不思議でしたが、ダウマはエレナにいつまでも自分の赤ちゃんでいて欲しかったのかなと思いました。他の子供は預かっては出しということをしているので、手放す寂しさや悲しさを埋めるためにエレナを赤ちゃんのように扱っていたのかなと思います。最後まで観ていただければ、この映画の真実がわかっていただけると思います。

 

 

この映画は悲しい作品でした。どう考えても女性がモノのように扱われていて、子供が産まれても男は責任を取らず、勝手に産んで育てろと言われているように思えるんです。戦後、社会全体がよどんでいて貧困だった時代なので、男が責任を取れなかったと言い訳をするだろうけど、それはいい訳じゃないです。妊娠させたら責任を取れという事です。何があろうとも。現代でも同じことが繰り返されていて、はらわた煮えくりかえります。

 

カロリーナが最後にどうなるのか。ダウマはエレナは、そして夫のペーターはどうなるのか。映画で確認してください。そういえば、映画の最初に流れる、工場から女性たちが出てくる映像が、リュミエールが初めての映画を撮った時の映像と同じように撮影されていました。他の映画でも似たような場面があるだろうけど、「リュミエール!リュミエール!」を思い出しました。

 

 

私はこの映画、超!お薦めしたいと思います。戦後混乱期のヒューマンドラマではあるのですが、どう考えてもホラー映画に見えてしまいました。恐ろしい場面が出る訳じゃないのですが、恐ろしい場面を想像出来てしまうように作られているんです。グロテスクな芸術を見せられているような感覚でした。ヒューマンドラマだけどサスペンスホラーになっていて、レベルの高い映画に観えました。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「ガール・ウィズ・ニードル」