「クィア QUEER」戦後の混乱期。同性愛は病気だと思われていた頃に一人の男を愛した男性の話です | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
スミマセンが、ペタの受付を一時中断しています。ごめんなさい。

 

「クィア QUEER」

 

を観ました。Fan’s Voiceさんの独占最速オンライン試写会が当たり観せていただきました。(@fansvoicejp)

 

ストーリーは、

1950年代、メキシコシティ。アメリカ人駐在員ウィリアム・リーは青年ユージーン・アラートンと出会い、ひと目で恋に落ちる。リーの心はアラートンを渇望し、ユージーンもそれに気まぐれに応えるが、リーの孤独は募っていく。リーはアラートンを幻想的な南米の旅に誘い出すが。

というお話です。

 

 

1950年、ウィリアム・リーはアメリカ人駐在員としてメキシコに住んでいた。バーを渡り歩き、若い男性を見つけては一夜のバカンスを楽しんでいた。ある日、行きつけのバーで軍兵士のユージン・アラートンを見かけ、一目惚れをしてしまう。毎日のように彼を探してバーを周り、勇気を出して声をかけたが上手く行かずに失敗してしまう。そんなリーに好感を持ったユージンはリーと一杯飲むことに。

その時から2人は友人となりよく飲むようになる。アラートンは夜になると女性とチェスを打ちにバーに訪れることが多く、リー同様に自分はゲイではないと主張していた。リーも「自分はクィア(ゲイ)ではない。」と主張しており、リーとアラートンは一定の距離を保っていた。しかしリーはアラートンに触れたくてたまらない。



 

ある日、リーはアラートンに一緒に南米に旅行に行かないかと誘う。アラートンは気が進まないようだったが、リーがテレパシー能力を身に付けられるかもしれないという薬草ヤヘを探しに行くことを伝えると一緒に行くことを了承する。

南米でリーがアヘン中毒であることを知ったアラートンは迷惑に思いリーと距離を置くようになって行きます。そんな時、南米奥地にコッター博士という人物がいて、その人ならヤヘのことを知っているだろうという情報を手に入れます。二人はジャングルへ分け入り、コッター博士を見つけてヤヘを探すのですが…。後は、映画を観てくださいね。


 

あの007を演じたダニエル・クレイグがとってもみっともなく男の後を追いかけるお話で、モテモテだったボンドとは雲泥の差でした。どこでも振られっぱなしで孤独に暮らしているんです。ちょっと姿はヨレヨレしていて、原作者のウィリアム・S・バロウズの自伝的本を映画化なので、彼に似せていたようでした。ウィリアム・S・バロウズの本を翻訳されている山形浩生先生はバロウズに似ていると思うとおっしゃっていました。

 

まず「クィア」という言葉ですが、この映画の時代には同性愛などは一般的ではなく病気だと思われていたような時代で、ゲイの人たちを侮蔑する言葉だったようです。主人公のリーは自分は「クィア」ではないと主張していながら、男性と何度も関係を持っていました。

 

 

でもアラートンへのリーの言い分としては、マスのかきあいっこは愛のある性行為とは違って性欲処理だけですよってことなのかなと思いました。だからクィアではないし、アラートンには触れないってことだったのかなと思いました。

 

そんな2人の関係ですが、ヤヘという薬草を探しに行き、その薬草を吸ったことにより、2人の身体が溶け合うような感覚を体験します。この薬草、幻覚作用を起こすようで、一種の麻薬ですよね。ドラックで異次元体験をした二人がその後にどうなるのかは映画で確認してください。

 

 

それにしてもリーは本当にアラートンが好きで、クィアではないと言いながらも、彼に触れたそうだったし、一緒にいるだけでも幸せそうでした。でもアラートンの方は、怪しげなオヤジだし、お金を出してくれるから良いけど、出来れば距離を取りたいと思っているのが見え見えなんです。でも彼は同性愛者だと思うんだけどね。

 

リーはアヘン中毒で旅行先でもアヘンが欲しくて、病院いに行き赤痢だと嘘をついて治療薬であるアヘンを貰おうとします。その時のアラートンの軽蔑に満ちた目が印象的だったなぁ。彼は自分は麻薬をやらないので、アヘン中毒のリーを軽蔑したのだと思います。

 

 

だけど1950年でしょ。戦争が終わってまだ5年ですから、戦時中に色々な用途に使われていたアヘンの中毒が続いている人も沢山いたんじゃないかな。若いアラートンには解らないかもしれないけど、リーにとっては戦争時の悪夢を忘れるためだったり、仕方なかったんじゃないかな。よく戦争映画ではアヘン窟なんかの映像がありますもんね。

 

ネタバレ出来ないので詳しくは書けないけど、リーがテレパシー能力が欲しいと思ったのは、きっと好きな人と口先だけの話ではなくて、心からの会話がしたかったんじゃないかな。テレパシー=精神感応が出来れば、嘘偽りなく、相手への思いが伝えられるし、相手の本当の気持ちも知ることが出来る。より深く相手と一つになれると考えたのだと思います。リーは本当に孤独で寂しかったんじゃないかな。

 

 

そしてヤヘを手に入れ、それを口にしたことで、テレパシー能力ではないけど同じような感覚を味わえたのだと思います。これをもっと研究して続けていけば、次元の違う感覚をも手に入れることが出来たかもしれず、テレパシー以上になったかもしれないけど、どうしたんでしょうね。

 

最後まで観ると、これはファンタジー映画だったのかもしれないなと思ったりしました。このお話は、いつの日かリーが年を取って少しづつ思い出した良い夢だったかもしれないし、本当にあったことで今もその感覚を思い出すこともあるということかもしれない。アラートンという美しい青年は本当にリーと一緒に旅行に行ったのか行かなかったのか。色々と考えると凄く面白いなと思いました。

 

今まで観たことが無いほど情けない年寄りを演じたダニエル・クレイグは素晴らしいと思いました。007の殻を破れたんじゃないかな。誘っても振られ続けるダニエル・クレイグ、楽しいでしょ。面白かったですよ。

 

 

私はこの映画、お薦めしたいと思います。但し解釈によって色々に観れるので、賛否が分かれるかもしれません。だけど、好きなモノは好きだし、同性だろうが異性だろうが好きな人がいれば触れたいと思うだろうし、その人と全てを交えることが出来るのなら怪しげな薬でも探してしまう気持ちは解らないではないと思いました。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「クィア QUEER」