「リアル・ペイン 心の旅」
を観てきました。
ストーリーは、
ニューヨークに住むユダヤ人のデヴィッドと従兄弟ベンジー。現在は疎遠になっていたが、亡くなった祖母の遺言によって、ポーランドのツアー旅行に参加することに。正反対な性格のデヴィッドとベンジーは時に騒動を起こしながらも、同じツアーに参加した個性的な人たちとの交流や、家族のルーツであるポーランドの地を巡るなかで、40代を迎えた自身の生きづらさに向きあう力を見いだしていく。
というお話です。
ニューヨークに住むユダヤ人のデヴィッドとベンジー。子供の頃は仲が良かったが、ここ数年は疎遠になっていた。亡くなった最愛の祖母の遺言で、ポーランドに住んでいた頃の家を見てきて欲しいというのでポーランドのツアー旅行に参加することにする。
従兄弟同士でありながら正反対の性格なデヴィッドとベンジー。デヴィッドは結婚し子供も出来て経済的にも裕福な生活を送っているようだが、ベンジーは両親と共に暮らしているようだ。
二人は旅行中、時に騒動を起こしながらも、ツアーに参加したユニークな人々との交流、そして祖母に縁あるポーランドの地を巡る中で、歴史的な問題や祖母の気持ちを考えながら、今の自分たちのあるべき姿を見つめなおす。そして40代を迎えた彼ら自身の“生きるシンドさ”に向き合う力を得ていく。後は、映画を観てくださいね。
この映画、軽く描かれているように見えますが考えて観ていくと深い思いが見えてくる作品でした。デヴィッドとベンジーは空港で待ち合わせてツアーに参加するのですが、ベンジーは数時間前から空港に来ていて、ずっと人々を観ているようなんです。そう、見るではなく観るなんです。
デヴィッドはそんなベンジーを不思議に思いながらも飛行機に急ぎます。そしてポーランドへ着いてツアーに参加します。戦争で被害を受けた地やホロコースト、記念碑などを周っていくツアーでした。ふたりは祖母の家を見る目的ですが、歴史的な事も知るためにツアーに参加したようでした。
予約は全てデヴィッドが行って計画を練ったようでした。性格的にデヴィッドはきっちりしていて良い子タイプの人間です。しっかりしているけど、人に何か言われると遠慮をして譲ったり、意見を引っ込めたり、対人的には弱いようでした。その対角にいるのがベンジーで、計画無しに動き、人には遠慮せずにずけずけと言うことが出来ますが繊細なタイプです。
どう考えても合わなさそうな2人ですが、まぁ、従弟同士で子供の頃から一緒にいるので、仕方なく付き合っているという感じかしら。きっとデヴィッドは、ちょっと面倒な従弟と思っていて、それが題名になっている”A Real Pain”=面倒なヤツ という意味になっているようでした。
確かに一緒にいたらイライラするだろうなぁと思いました。私もデヴィッドに近い性格なので、自分勝手に動くベンジーはとても面倒だなと思いました。私は一人の時は自由に動くし計画なんてしませんが、人と一緒に何かする場合はしっかりと計画します。でないと終わりませんからね。基本、私は一人で行動するのが好きなので、その場合はベンジータイプになっていると思うけど、人と一緒の時は誰かが引っ張らないとね。
この映画の中のデヴィッドは、何を計画してもベンジーに壊されるので苦労していました。観ていて可哀想でしたもん。でもベンジーは何も考えていない訳では無く、その場で考えて最善の方法を見つけているのだと思うんです。なのでデヴィッドは凄く悩ましかっただろうなと思いました。言っていることは間違っていないけど、それでも計画通りに進んで欲しいんです。
最初はベンジーって面倒臭くてデヴィッドが可哀相だなと思っていたのですが、途中からベンジーが言っていることが凄く深く考えての言葉だということが解ってきて、この人は人の心を理解して話しているんだなと感動したんです。観光して記念碑で写真を撮って楽しむのは良いんだけど、そこでは人が生き死にして、色々な思いを残している場所ですよね。特にポーランドはユダヤ人虐殺のあった場所で、ふたりのおばあさんも必死で生き延びた場所です。
そんな場所で思いを巡らせていた2人でしたが、ある時に2人が言い合いになり、ベンジーが薬を飲み過ぎてオーバードーズで運ばれたことをデヴィッドが責めるんです。ベンジーは少し引き籠り気味になっていて自宅で薬を飲んだらしいのですが、デヴィッドは命を粗末にする行為が許せなかったんだと思うんです。
でもね、きっとどうしても逃げたくなるようなことがあったんじゃないかな。人間って人前では虚勢をはっても、一人になると自信を無くして全てが嫌になっちゃう時があるのよ。人とコミュニケーションを取っていれば、何かが引っかかって思い留まることがあると思うけど、ずっと一人でいるとそのストッパーが無くなっちゃうのよね。ベンジーにとってお祖母ちゃんがストッパーになっていたんじゃないかな。
そんなベンジーの気持ちが観ているこちらにもこぼれてきて、ジーンとしました。デヴィッドもキツく言ってしまったけど、あとから悪かったなと思ったんじゃないかな。ベンジーの気持ちを理解してそっと寄り添ったのだと思います。
でも旅行が終われば2人は別々の家に帰ることになり、デヴィッドは家族がいるのでベンジーのことは忘れ気味になっちゃうのかな。仕事も忙しそうだし子供もいるし、きっと自分のことで精一杯になっちゃうと思うのよ。一方ベンジーはきっとずーっと旅行のことを思い、色々な人を眺めながら静かに生活をするんじゃないかな。
きっとこの旅行を一緒にしたことで、以前より2人の距離は縮まっただろうし連絡も取りやすくなったんじゃないかな。どちらが先に連絡するかは分からないけど、もう少し年を取ったら、あんなとこに旅行に行ったよねとか笑い合える日が来るかもしれない。そうなるといいね。
そういえば、私が感想を書き渋っている内にアカデミー賞の発表があり、この映画のベンジーを演じたキーラン・カルキンさんが助演男優賞を受賞しました。病んでいるベンジー役、上手かったですからね。脚本賞は惜しくもノミネートだけでしたが。選ばれるだけでも凄いのですから、この映画が深い映画だってわかるでしょ。
私はこの映画、お薦めしたいと思います。とても良い映画なのですが静かで解り難い内容なので、単館系映画が好きな方にはお薦めです。生きづらい社会の中で何とか誤魔化して泳ぐデヴィッドと、上手く泳げずにつまづいているベンジー。2人の姿を観て考えてみてください。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「リアル・ペイン 心の旅」
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