「死に損なった男」あの”メランコリック”の田中監督の新作です。笑えて成長出来るような映画でした。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
スミマセンが、ペタの受付を一時中断しています。ごめんなさい。

 

「死に損なった男」

 

を観ました。Fan’s Voiceさんの独占最速オンライン試写会が当たり観せていただきました。(@fansvoicejp)

 

ストーリーは、

お笑いの道にあこがれて構成作家になったものの、疲弊してしまった関谷一平は、駅のホームから飛び降りる決意をする。しかし、隣の駅で人身事故が起こり、一平の状況が一変。死に損なった一平の前に男の幽霊が現れ、「娘に付きまとっている男を殺してくれないか?」と、一平に殺人依頼を持ちかける。しかも、男を殺すまで幽霊は一平にとり憑くという。

というお話です。

 

 

構成作家の関谷一平は、お笑いの道に憧れ、夢が叶った半ば、殺伐とした社会と報われない日々に疲弊していた。駅のホームから飛び降りてしまおうと考えたが、隣の駅で人身事故が発生して電車が止まってしまう。タイミング悪く死に損なった一平は、隣駅で亡くなった人のことが気になり調べて、亡くなった男性の葬式に出向いてみた。

 

何となく考えがまとまらず、家に帰ると知らない男性が「お前は誰だ。」と訪ねてくる。何故知らない男が?と慌てる一平に「何故俺の葬式にいた?」と聞いてきて、やっと亡くなった男性の遺影を思い出す。一平の前に亡くなった男の幽霊が現れたのだ。男は「娘に付きまとっている男を殺してくれないか?」と一平に依頼する。

 

 

その男を殺すまで取り憑いて離れないぞ、といわれてしまい仕方なく死んだ男・森口の自宅に行くと、森口の娘が家をかたずけており、そこに娘の元夫で付きまとっている若松が現れる。森口の娘・綾にしつこく言い寄る若松が標的の男なのだ。とりあえず一平が2人の間に割り込み、綾を助けることに成功。森口は一平に若松を殺すための訓練を始めることに。

 

幽霊に離れて貰うために人を殺すことになった一平。綾には父親の状況を話す訳にはいかず、生前の知人ということで親交を深めつつ若松の動きを探る一平だが、若松の方も一平の存在に気が付き始め…。後は、映画を観てくださいね。

 

 

この映画、面白かったぁ~!あの「メランコリック」の田中征爾監督の新作です。メランコリックが2019年だったのでちょっと時間がかかったけど、やっと新作が観れました。この作品は田中監督の商業映画デビュー作になります。メランコリックは自主映画でしたからね。

 

お笑いの構成作家をしている一平は、誠実に仕事をしているにも関わらず、芸人に文句を言われたり、後輩に先を越されてしまったりと上手く行かない日々が続いています。要領良く幾つもの事がこなせれば良いのですが、一平はどちらかというと要領の悪いタイプでコツコツとやる人間なんです。

 

周りの動きに必死で併せてはいますが、どんどんストレスが溜まり精神的な疲れがMAXになってしまったんです。そして、つい電車に飛び込もうという気持ちになるのですが、その日に限って人身事故のために電車が止まってしまうんです。電車が来ないなら飛び込みは出来ないなと思い、自殺を思い留まるところからこの映画は始まります。

 

 

自殺をしようとする人って、どうしても今死にたいという必死な人と、何となく死にたいという人と2種類いると思うんですけど、一平は何となくというタイプでした。なので飛び込みが出来ないなら他の方法でということには結びつかなかったようです。それでも自分の飛び込みを止めた事件は何だったんだろうと言う興味はあって、直ぐに調べ始めるんです。

 

そして森口友宏のお葬式の場所を知り出かけるんです。生前は学校の先生だったようで、大きめなお葬式でした。そして家に帰ると何故か森口が家に居るんです。もちろん幽霊ですけどね。そりゃ驚くでしょ。遺影の人がいるんですから。で、話をしたことで、一平は死に損なったことで森口が見えるようになってしまったらしいという事が解ってきます。

 

森口が一平に何で自殺しようと思ったんだと聞くのですが、一平は答えません。というか答えられなかったんじゃないかな。ちょうど中堅の年齢って、仕事は忙しくなってきているけどどこか物足りなさを感じたり、このままこの仕事を続けていくのかなと思って虚しくなったり、もやもやする年代だと思うんです。私もそうでしたから。そうなると、もう全部辞めちゃおうかなという気持ちが湧いてくるんですよね。どこからともなく。

 

 

一平は鬱状態ではないけどその年代の落とし穴にハマって、飛び込もうかなって気持ちになったんじゃないかと思うんです。こうなる人って、能力があるんだけど自分にまだ自信が持てていないんですよね。この時期を抜けると自信が出てきて良い方向に行くんじゃないかな。こんな風に悩む人は将来有望だと思います。まったくならない人は何も考えていないので将来も大して成功しませんよね。

 

森口は教師をやっていたと言っていたから、そんな一平の状態が解ったんじゃないかな。だからもちろん娘の元夫はムカついて許せないけど、マジで殺させようとは思っていなかったのかもしれない。究極の選択をさせることにより、自分の磨き方を教えたのかもしれません。

 

そうそう森口が、一平がお笑いの脚本を書いていることを知ってアイデアを色々とだして、2人で脚本を書いていくところが面白かったなぁ。こんなオッサンの話なんて面白くないと思っているんだけど聞いていく内に面白いことに気が付いて、一平が前のめりになって行く姿が良かったです。オッサンの言う日常ってお笑いにしたら面白いと思うんだよね。若い人には未知の世界でしょ。そりゃ面白いよ。そしてそれを面白く脚本に書ける一平って、やっぱり才能があったんだと思うのよ。

 

 

それにしても幽霊が殺しの依頼をして取り憑くって笑っちゃいました。それも幽霊役を正名さんですよ。もう笑えるでしょ。いいキャスティングだなぁと思いました。一平役の水川さんもピッタリだったけど、そこに正名さんの森口って、これ以上のキャスティングないでしょ。2人並ばせると、”ぼんやりした隣に住む親子”にしか見えないもん。

 

でね、この映画を観ていて気が付いた事が一つ。歩いていても、カフェにいても、独り言を言っている人っているでしょ。それって、もしかしたら幽霊が一緒にいるのかもしれないと思う事にしたんです。変な人がいると思うんじゃなくて、誰かがそこに居て話しているんだなと。

 

その人にだけ見える人がいて何か相談をしているならそれで良いでしょ。そういう事を優しく見れる社会であることって大切じゃないかな。現代社会は心がガサガサしている人が多くてぶつかることばかりでしょ。もう少し柔らかくしたいですよね。無差別殺人が起きるような社会は治していかなくちゃ。

 

 

森田の娘役で唐田さんが出演されていました。どうしてもスキャンダルの事が頭に浮かんでしまいうがった目で見てしまいますが、今回の役は良かったと思います。昔観た映画と同じで演技が上手いタイプではないですが、影があるような役なのでおどおどした感じは良かったと思います。綺麗な女優さんですしね。

 

田中監督のメランコリックは、普通の日常と呼ばれるところに死体解体業という未知の世界が入ってくることにより展開が予想つかなくなっていきましたが、今回の作品も、普通の社会人が幽霊と暮らすことになり、殺しまで依頼されるという奇想天外な展開で凄く面白くなっています。田中監督作品、待っていた甲斐があったよぉ。

 

うーん、このポスターも笑ってしまいます。ぼんやりした男の後ろにオッサンがぁ~って感じで、怖さよりも笑いが先に出てきてしまいます。楽しい、ホント楽しいです。

 

 

私はこの映画、超!超!お薦めしたいと思います。ああー、また「メランコリック」の時のように、何度も映画館で観てしまうかもしれません。また観たら新しいことに気が付きそうなんですもん。うーん楽しみです。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「死に損なった男」