「キノ・ライカ 小さな町の映画館」
を観てきました。
ドキュメンタリー映画なので内容は、
北欧フィンランドの鉄鋼の町カルッキラ。深い森と湖と、今は使われなくなった鋳物工場しかなかった人口9000人の小さなその町に、はじめての映画館“キノ・ライカ”がまもなく誕生する。元工場の一角で自らの手で釘を打ち、椅子を取りつけ、スクリーンを張るのは映画監督のアキ・カウリスマキと仲間たち。キャデラックにバイク、ビールと音楽。まるでカウリスマキの映画から抜けでたようなその町で、住人たちは映画館への期待に胸をふくらませ、口々に映画について話しだす。
これは豊かな自然のなかで芸術を愛して暮らす人々の、映画とカルッキラという町への想いをめぐる物語。そこにはカウリスマキの理想の映画館キノ・ライカが町にもたらした変化の兆し、これからの映画館の可能性がとらえられている。
監督は本作が初の長編となるクロアチア出身のアーティスト、ヴェリコ・ヴィダク。妻と生後8カ月の娘を連れてカルッキラに1年間滞在し、キノ・ライカ開館までの作業を手伝いながら、映画館の誕生にわき立つ人びとの声を拾いあげた。
このドキュメンタリーの主人公はカルッキラの住人たち。そのなかにはキノ・ライカの共同経営者ミカ・ラッティ、『枯れ葉』のヌップ・コイヴ、サイモン・アル・バズーンに姉妹ポップデュオのマウステテュトット、『ラヴィ・ド・ボエーム』のエンディング曲「雪の降る町を」等を歌った篠原敏武、『コンパートメント No.6』のユホ・クオスマネン監督など、カウリスマキ組の俳優やスタッフも顔をのぞかせ、映画の思い出をユーモラスに語る。もちろんアキ・カウリスマキも登場し、さらにはカウリスマキの盟友ジム・ジャームッシュもとっておきの秘話を披露している。
(公式HPより)というお話です。
この映画、カウリスマキ監督がフィンランドのカルッキラという小さな町に映画館を作ったというドキュメンタリー映画です。作ったというから、お金を出しただけかと思ったら、なんとカウリスマキ監督がトンカチ持って釘を打ってました。本当に手作りなんです。
カウリスマキ監督って、自分で映画祭を立ち上げたり、映画館を作るのもこれが初めてではないらしいんです。以前もヘルシンキに映画館を作ったらしいのですが、そちらは立ち退きで閉館したらしく、その後、このキノ・ライカを作ったらしいんです。もう映画好きを越えて、映画が生活になっているような方のようです。
日本では、若松孝二監督が名古屋にシネマスコーレという映画館を立ち上げられましたよね。「青春ジャック 止められるか、俺たちを」で描かれましたが、日本で映画館を作ったって若松監督が初めてじゃないの?本当に映画を愛していた監督でした。同じように、このカウリスマキ監督も映画を心から愛してているんでしょう。
なんていうのかなぁ、映画館の原点って椅子があってスクリーンがあれば、それで映画館なんですよね。雨が降ったら嫌だからもちろん屋根も欲しいけどって思い始めると、空調が効いて音が静かでと要望も出てくるんだけど、基本はスクリーンと椅子だけですよね。小さな町では、工場の稼働時間が過ぎれば凄く静かなんじゃないかな。そんな場所で、ビールを飲みながら映画を観るって素敵だなと思いました。そんな時間を監督が提供してくれたというのは、本当にしあわせだと思います。
日本だとそうはいきません。映画館=興行場となり、建築基準法、消防法、風営法などなど沢山の法律があって、シネコンのように大手の会社が基本システムを組んで作るしかないんですよ。単館系と呼ばれるミニシアターも、簡単に作っているように見えて面倒な法律をクリアしているんです。安全のためには仕方ありませんけどね。
ホント、このキノ・ライカ、いいなぁと思いました。こんな映画館を作ろうと言って、自分で作り始めるなんて夢のようだろうな。この行動力に驚くし、カウリスマキ監督には沢山の同じような気持ちを持つお友達がいて、一緒に作っているというのが素敵でした。そして皆さんがとても楽しそうに作っているのが印象的でした。
もちろん町の人たちも楽しみにしているようで、ワイワイして期待している気持ちが伝わってきました。いいなぁ、こんなことがしてみたいなぁ。でね、フィンランドの雰囲気が良いのよ。建築のデザインが良いんです。周りに溶け込んだ建物をデザインし、収容人数とか効率とか、そういうお金の計算ばかりしている日本の建築とは違うんです。
日本はお金のことばかり。特に近年そうなってきています。パッと見は良くても安い材料を使っていて、長い間使おうなんて気持ちが全く無いんです。省エネとか言いながら短期間しか使えないなら廃棄や労力の事を考えるとマイナスになるのに今の事しか考えてない法律なんです。ソーラーパネルがいい例でしょ。あんな安くて軽いパネルじゃ直ぐに壊れます。補助金狙いの海外企業ばかり。
そんな環境の事などを考えると、なんて贅沢な映画館何だろうと思いました。昔ながらの建物でバーを併設して、みんなで楽しみながら映画を観るというのは本当に羨ましいなと思いました。それに、映画館に行ったらカウリスマキ監督が待っているのかもしれない。そう思うと、映画ファンにはたまらないですよね。
横浜の「ジャック&ベティ」というミニシアターに私は通っているのですが、この映画館も素敵なんですよ。こじんまりしていて、どの映画館に行くよりも温かい感じがするんです。もう古くて建物の建て替え時期なんじゃないかと思うけど、存続して欲しいなぁ。椅子などは入れ替えをしてくれているのでとても座りやすくなっています。大切な地域の映画館です。
皆さんの町にも小さな映画館ありますか?シネコンもよいけど、小さな映画を上映してくれるミニシアターって大切ですよね。いつまでも残って欲しいし大切にしたい。本当は映画監督が少ない予算で撮った映画でも上映してあげて欲しいな。有名監督でも自分の好きな映画を撮りたいと思う事もあるだろうから、商業的な映画だけじゃなく、小さな映画も上映して欲しい。こういう映画館にこそ国や地域が支援すべきじゃないのかしら。
この映画を観たら、今の日本の映画業界の問題が見えてきてしまいました。もっと自由な映画をみんなが楽しめるようになると良いな。今は配信が増えてきているけど、大画面で映画館の椅子に座って観るのって、しあわせなのよ。家で観る方が簡単だし楽だけど、そうじゃないしあわせが映画館にはあるんです。
私はこの映画、超!お薦めしたいと思います。ドキュメンタリー映画なので、何か起こって凄く面白いという訳じゃないし、途中でウトウトしちゃうかもしれないけど、それも映画館での楽しみの1つです。映画好きな方々の色々な思いが詰まった映画なので、ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「キノ・ライカ 小さな町の映画館」
私の好きな映画館 ー 横浜「シネマ ジャック&ベティ」