【演劇】「桜の園」天海さんのラネーフスカヤは美しく品があって”桜の園”そのもののようでした。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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舞台「桜の園」

 

を観てきました。何度も舞台化されている古典ともいわれるチェーホフの「桜の園」。ケラリーノ・サンドロヴィッチさん演出でシス・カンパニーによる「チェーホフ四大戯曲」として2013年から上演されていて、「かもめ」「三人姉妹」「ワーニャ伯父さん」と3作は観させていただいて、今回は4作目の「桜の園」でした。

 

他の方の演出で何度も「桜の園」は観ているのですが、ケラリーノ・サンドロヴィッチさんの演出は初めてです。主人公のラネーフスカヤ夫人を天海さんが演じられていて、こちらも初めてでした。実はこの公演、2020年頃に大竹しのぶさん主演で企画されていたのですが、コロナ過で全て公演が中止となったんです。そして再度企画され、上演となりました。

 

 

ストーリーは、

南ロシアの5月,美しく咲いた桜の園に5年ぶりに帰ってきた当主ラネーフスカヤ夫人。思い出に浸る彼女を喜び迎える屋敷の人びと。しかし、広大な領地はすでに抵当に入り、まもなく競売にかけられる運命にあった。さまざまな思いの交錯するなか、いよいよその日がやって来た。

というお話です。

 

主人公のラネーフスカヤ夫人は夫を亡くし、この家を出て外国暮らしをしていたんです。新しい恋人と暮らしていたのですが、彼女のお金を食いつぶすだけ食いつぶし、他の女性の元に行ってしまったらしいんです。そしてラネーフスカヤ夫人は娘のアーニャに連れられて実家に帰ってくるんです。

 

実家は子供のころから暮らしていた大きな屋敷。上流階級で育ちお金に困ったことが無いラネーフスカヤは、お金を乞われるとつい持ち金を渡してしまい、家が火の車なのに状況を解っていません。ある程度は理解しているのですが、昔から染みついた彼女の”常識”を曲げることが出来ないんです。

 

 

それは彼女の兄であるガーエフも同じで、何か仕事をしてお金を稼いで土地を維持するということが全く出来ない人間で、ただ遺産を食いつぶすだけなのでした。なので、”桜の園”と呼ばれるお屋敷とその周りの桜並木を維持することが出来なくなったんです。全て差押えをされて、競売にかけられることになっていました。

 

何度もこのお話は観ているのですが、何も生み出さない人間は悲しいなぁと思うお話です。よく”親ガチャの当たり外れ”の話をする人がいるでしょ。お金持ちの家に生まれたら親ガチャが当りとかいうけど、お金持ちの家に生まれたからって自分に能力が無ければ食いつぶすだけで最後は落ちぶれるだけなんですよね。

 

親ガチャの当たり外れは”お金”ではなく、その頭脳だと思います。能力があれば、親ガチャに当たろうが外れようが成功するんです。このお話でも、悪者のように描かれるロパーヒンは農奴の家に生まれましたが、その能力で大金持ちになります。そして会話劇の中でも、マトモな事を言っているのは、このロパーヒンだけなんです。

 

ロパーヒンだけは、この土地を維持したければ桜の園を別荘地として売り出せば直ぐに買い手がついて借金を返すことが出来るから、この家に住み続けることが出来ることを訴えているんですよ。だって、お金は湧いてくる訳では無いので、何かを売らなければ借金は返せないでしょ。

 

 

なのにガーエフもラネーフスカヤも、どこかからお金が出てくるんじゃないかと思っていて、全くとりあおうとしないんです。アホだなぁと思うけど、何でもお付きの人がやってくれるし、テーブルにつけば食事が出てくる生活を送ってきた人には理解出来ないんでしょう。理解出来ても、どう行動をしたらよいのか分からないのだと思います。

 

この話、何度観ても人間のアホさ加減が見えて、笑っていいのか悲しんでいいのか分かりません。でも、いつも絶対にこんな人たちのようにはなるまいと思います。子供の時に小説を読んだときもそう思ったのですが、チェーホフはなんでこんな喜劇というか悲劇というかという物語を何作も書いたんでしょうね。「かもめ」「三人姉妹」「ワーニャ伯父さん」も同じようにめでたしめでたしとはなりません。ロシアの重苦しい環境がそうさせたのかしら。

 

天海さんのラネーフスカヤ夫人は美しくてオーラがあって高貴な生まれだということが一目でわかるんです。今は落ちぶれてしまったけどそのオーラは消えることが無く、周りの人間はいつまで経っても彼女のところにはお金があると思ってしまったんじゃないかな。だから彼女に真実をしっかりと伝えず、楽しいことばかりを話してしまう。でもロパーヒンだけは現実を伝えていたんです。彼の言葉に耳を傾けていたなら、これからもしあわせが続いたと思うんですけどね。

 

 

本当は兄のガーエフが一家を支えなければいけなかったんじゃないかな。どう見ても見栄ばかり張る少し頭の悪そうなオッサンという感じでした。よくいますよね。”オレがオレが!”っていうオッサン。お前の話なんて聞いてないんだよって思うけど、こういう人って治らないですよね。成功しない人って必ずこういう人だもん。

 

娘のアーニャも養女のワーリャも、それぞれ一人で生きていけるようにみえました。家のお金をあてにせず、自分で働いて道を切り開いていくんじゃないかな。

 

やっぱりチェーホフの作品は何度観ても面白いです。何度観ても、それぞれに特徴が出ていて、演じる人によっても違っていて楽しめますね。今回はロパーヒンを荒川さんが演じていて、一番マトモな人なんだけど荒川さんが演じると、ちょっと大丈夫?って思っちゃって笑いました。以前、原田美枝子さんが主演の時には八嶋さんが演じていて、頭は良さそうなんだけどズルしそうに見えてそちらも良かったです。

 

私が思うに新しい演劇を観るのはとても楽しいけど、やっぱり演劇の古典と呼ばれるシェークスピアやチェーホフなどの作品も必ず観るようにすると、演技の良さや演出の違いなど演劇の深い部分も見えてくるような気がします。

 

 

私はこの舞台、超!お薦めしたいと思います。でも、立見席も満杯だったのでチケットが買えないかな。配信やWOWOWなどで観ることが出来たら、ぜひ、観てみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「桜の園」