「きみの色」
を観てきました。
ストーリーは、
ミッションスクールに通うトツ子は、楽しい色、穏やかな色など、幼いころから人が「色」として見える。そんなトツ子は、同じ学校に通っていた少女・きみ、古書店で出会った少年・ルイの3人でバンドを組むことに。離島の古い教会を練習場所に3人は音楽によって心を通わせ、いつしか友情とほのかな恋のような感情が芽生え始める。
というお話です。
ミッションスクールに通う高校生のトツ子は、人が「色」で見える。嬉しい色、楽しい色、穏やかな色。そして自分の好きな色。幼い頃からトツ子の見え方は他の人とは違っていて、その気持ちを上手く伝えることが出来ないでいた。
そんなある日、同じ学校に通っていた美しい色を放つ少女・きみの姿が突然に見えなくなる。気になったトツ子はきみと一緒にいた女子に聞いてみると、きみは学校を辞めたらしい。きみの美しいブルーが大好きだったトツ子は、なんとか”きみ”に逢うことが出来ないかと探っていると、きみを街の書店で見たという情報を得る。
放課後に街へ出て、片っ端から書店を回るのだがどこにもきみはいない。諦めかけたころ、白猫がトツ子に近づいてきて誘うように歩いて行く。ぼんやりとついていくと裏道の奥に古書店を見つける。入ってみるとそこできみが店番をしていた。トツ子が話しかけると、後ろからも声がかかる。音楽好きの少年・ルイだった。トツ子ときみとルイ、初めて逢ったというのに何故かトツ子は”一緒にバンドをやりませんか?”と話しかける。あっけにとられた2人だったが、きみもルイもやりたいと言い、3人でバンドを組むことに。
周りに合わせ過ぎたり、ひとりで傷ついたり、自分を偽ったり。
勝手に退学したことを家族に打ち明けられないきみ。母親からの将来の期待に反して、隠れて音楽活動をしているルイ。そして自分の色だけは見ることができないトツ子。それぞれが誰にも言えない悩みを抱えていた。
バンドの練習場所は離島の古教会。音楽で心を通わせていく三人の間に、友情とほのかな恋のような感情が生まれ始める。やがて訪れる学園祭、初めてのライブ。観客の前で見せた三人の「色」とは。後は、映画を観てくださいね。
なんかとっても優しい映画でした。何か凄いことが起きるわけではないんだけど、青春時代の何とも言えない息苦しさを抱えた3人が出会って、お互いをいたわりながらも先に進むことを考え始める映画で心がぽかぽかしました。主人公のトツ子ちゃんは「共感覚」の持ち主で人を見ると色が見えるんです。
この「共感覚」とは、まだよく解明されていないようですが精神的な障害ではなく脳の機能によるもののようで、成長に伴い脳の結合変化によってこの感覚が失われていくことが多いようです。大人になっても共感覚が残っている人は脳の結合が違ったまま保存されてしまった可能性があるそうです。
今から20年前の映画で「ギミーヘブン」という共感覚を扱った映画がありまして、不思議な映画でした。あの頃はあまり受け入れられませんでしたが、今なら解る人も増えたんじゃないかな。宮崎あおいさんと松田龍平さんが印象的で、忘れられない映画です。
話を戻して、この共感覚を持ったトツ子はとても穏やかな子で共感覚を嫌なモノとして捉えておらず、みんなが綺麗な色で見えるんだと話すんです。トツ子に見えている絵も出てきますが、ふんわりして優しくて柔らかい色なんです。きっと、怖い人とか嫌いな人はドロドロした色で見えるんだろうけど、彼女の周りにはいませんでした。
きみちゃんはとっても優等生なんだけど突然に学校を辞めてしまうんです。祖母と住んでいて両親の姿は無かったので、何か家庭の事情も抱えているのでしょう。お祖母ちゃんに迷惑をかけたくないと思いながらも、周りに合わせて優等生をするのに疲れてしまったんじゃないかな。バンドを始める前は辛そうに見えました。
ルイくんは離島に住んでいて、そこで開業医をしている母親と暮らしています。ゆくゆくは母親の病院を継いで、医者のいない離島の助けをしていかなければいけないと言われていて、卒業したら医大に行くことにしているようでした。本当は音楽も大好きで、好きな音楽もやってみたいという気持ちがあるんだけど、医者になることを背負わされていて、息苦しそうでした。お母さんに医者にはなるけど、音楽もやってみたいと言えればよいんだけどね。
トツ子はそんな心配はなく、普通のちょっとのんびりした女の子なんですが、きみちゃんとルイくんの姿を見て、解放してあげられないかなと考えたんじゃないかな。だってトツ子は全然楽器も弾けず、その昔にピアノをちょっと習っただけと言っているくらいだから、自分のためのバンドづくりではなかったような気がしました。優しい子ですよね。
この共感覚の持ち主は、きっと相手の気持ちも色で見えるんだろうから、きみちゃんの綺麗なブルーがちょっと濃くなっていたり、ルイくんのグリーンがくすんで見えたりしたんじゃないかしら。だから綺麗な色が見たい、綺麗な色にしてあげたいと思ったのかもしれません。
そしてバンド練習を始めると、トツ子はミッションスクールに通っているし、きみちゃんも元々は同じ学校だったし、ルイくんがバンド練習場として提供してくれたのは古い教会だったので、賛美歌がベースになっているようなメロディも多い様に感じました。賛美歌って、ビックリするくらい色々な日常の曲になっていて、私たちが知らない内に歌っているような曲も元は賛美歌だったりするんですよね。
美しいメロディ、美しい風景、綺麗な色、頑張っている3人、こんなに揃っているので、段々と惹きこまれて一緒に音楽を楽しんじゃっている自分がいました。何とも言えない感覚でしたね。それこそ共感覚を観ているこちらにも与えてくれているような、そんな気持ちになりました。
トツ子はミッションスクールの寮に入っているのですが、ある日、猛吹雪になって離島の練習場から帰れなくなってしまいます。シスター日吉子に電話をして何とか許して貰うのですが、このシスター、素敵な先生なんです。トツ子が教会にいるといつもやってきて、何となく助けてくれるんです。声を新垣結衣さんが演じていて、とっても良かったです。
誰もがこのキラキラした青春時代を越えて新しいステージへと行かなければいけませんが、この一瞬の時間を素敵と思えたら、新しいステージでも頑張れるんじゃないかな。いや、頑張らなくても良いけど、気持ちよく生きていけるんじゃないだろうかと感じました。うん、素敵な映画でした。
私はこの映画、超!お薦めしたいと思います。私は好きな映画です。優しい映画って、何本観てもイイですよね。色使いも凄く優しくて、幸せな気持ちになりました。楽器でテルミンが出てくるんだけど、幽霊の音と思っていたテルミンがこの映画では柔らかい雲の上のような音に聞こえて素敵でした。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「きみの色」