「東京ランドマーク」
を観てきました。
ストーリーは、
コンビニのアルバイトで生活をする稔の家にいつものように遊びにきたタケは、桜子という名の家出少女を稔が匿っていることを知る。未成年である桜子を早く家に帰そうとするタケだが、桜子はどうしても帰ろうとしない。そこでタケは稔とともに桜子を匿うことを決め、そこから3人の不思議な関係が始まるが。
というお話です。
コンビニのバイトをしている稔は、ある日、ビールを買おうとした未成年にそのまま売ろうとして同僚に止められる。未成年に売るなと言われ素直に従うが、その少女が気になっていた。
どういう巡り合わせがあったのか解らないが、その未成年・桜子が稔のアパートにいる。訪ねてきたタケが未成年を匿うなんて、誘拐と思われて逮捕されるぞと心配するが、帰る気のない桜子に困ってしまう。稔もマズいと思いながら、桜子の好きにさせているのだった。桜子は近くに自宅があるようだが、家族と折り合いが悪く、家出をしたようだが高校には行っている。
稔は東京に一人で住んでいる。両親は離婚したようで、母親とは連絡をとっているようだが、再婚した父親とは全く連絡を取っていないようだ。タケは実家住まいで、父親に働けと言われているが一向に働く様子はない。優しい父親がこっそりとお小遣いを渡してくれて、仕事を紹介して貰おうかと心配して口を出すが、タクは耳を向けない。
桜子と稔とタケは不思議な関係で成り立っており、微妙に思いながらも楽しく暮らしていた。稔は娘が帰らなくても電話もしてこない警察にも届けないという桜子の父親に腹が立ってきて、桜子を誘拐したことにして身代金を要求しようという。いくら請求するというと1000万とかではなく何故か5万円とする。しかし、いつ受け渡しをするのか、全く決められない。
そんな中、稔の父親が病気で亡くなったというハガキが来ていることに気づく。稔は急遽、その住所に父親を訪ねていくと、父の再婚相手が稔の昔の写真を出して、いつも父親が持っていた写真だと聞く。稔は父親を気にも留めていなかったが、父親はずっと稔の事を思っていたのだろう。稔は知らなかった父の一面を見ることになった。後は、映画を観てくださいね。
何というか、優しいヒューマンドラマでした。藤原さんのデビュー作だそうです。人生って誰もが同じ量のしあわせを持っているのに、何故か自分だけ不幸だよなと思っている人っていませんか?それって、自分が幸せな事に気が付いていないだけじゃないのかな。この映画を観ていると、ちょっとした幸せをお互いに与えあっているんです。
桜子の誕生日を知っても知らないふりをして祝おうとしたり、お腹が空いたと言えば自分のスパゲティを分けたり、稔の父親の死をハガキで知っても知らないふりをして稔が気が付くのを待つとか、さりげない優しさがたくさん詰まっているんです。
例えばエレベーターで開くボタンを押してくれている人がいてお礼を言うとか、落とし物を届けるとか、ドアを開けておいてくれるとか、ちょっとした優しさってあるでしょ。でも、それを当たり前だというような傲慢な態度を取る人もいますよね。思うんですけど、こういう場面で少し優しさを出すと人間関係って柔らかくなるし、自分も気持ちが良くなるじゃないですか。少しの優しさが人々を救うと私は思っているんだけどそう思いませんか?
人生をポイント制と思うとしたら、傲慢な人はどこかでその分不幸になるだろうし、ボタンを押したりドアを開けたりしてあげた人にはその分幸せポイントが溜まると思うのよ。ポイントのために優しくするのかと言われるかもしれないけど、そんな風に打算的に考えて優しさを増やすんで良いと思うんです。少しでも優しくすることで、周りもみんな優しくなれるでしょ。いつも自分だけ損してるって思ったら辛いけど、ポイント溜まってると思えば、いっぱい優しく出来るもん。
この映画では、そんな打算的なことは考えず、素直に少しづつの優しさが心を溶かしていくし、成長させていくと描いているように見えました。でも、桜子は父親と上手く行かないのよね。私は上手く行かないなら、冷静になれるまで少し離れて暮らしていくというのも選択肢だと思います。親子だからって、いつも一緒にいなきゃいけない訳じゃないですから。でも、稔の所に桜子がずっといるのは問題だと思うけどね。
そんな稔と桜子とは対照的に、タケは優しい両親と暮らしているのかなと思いました。でも、彼には彼なりの苦しみもあって、両親が優しければ優しいほど、そこから抜け出したら両親が悲しむという気持ちで離れられないということもあるのかなと思いました。それぞれに苦しみはあるんです。言わないだけよね。
観ていて、桜子の我儘さにイラっとする場面がいくつかありました。帰れと言っても帰らないのは迷惑ですよね。それに食事に文句を言うとか、面倒を見て貰っているのに悪態をつくとか、クソガキと思いました。この年齢までは可愛がられて甘やかされていたんでしょう。じゃなきゃ、面倒を見てくれている他人に、あんな悪態はつけないハズです。
3人3様の経験をして、この後、どうなっていくのか。それは映画では描かれていないので解りませんが、自分にとってのしあわせとは何なのか、沢山の人と知り合うことで成長して自分のしあわせを見つけていくことになるのでしょう。しあわせになりたいと思ったら、まず自分の周りの人をしあわせにしないとね。我先にと、周りと蹴散らして自分だけ前に出ようとすると、墓穴を掘ることになります。自分は不幸だと思ってしまったら、本当にそうなってしまいますからね。
私、横浜のジャック&ベティが会員デーだったので観に行ったら、舞台挨拶があるとのことで、監督さんと俳優さんがいらしていました。お話も聞けて嬉しかったな。俳優の大西さんがいらしていて感動しました。その昔、”キャタピラー”という映画の先行上映に行きまして、若松監督とお会いした時、大西さんが凄いですねとお話をしたら、監督はとても好きな俳優さんだそうで、彼が戻ってくるまで待っていたんだとおっしゃっていて、やっと撮影出来たんだよと嬉しそうに話してらっしゃいました。若松監督に”この人”と言わしめた大西さん、カッコ良かったです。
上映後にパンフレットに皆さんにサインをしていただきました。嬉しかったです。予期せぬプレゼントでした。
私はこの映画、超!お薦めしたいと思います。ちょっとぼんやりしているように思える映画ですが、じんわりと良さが沸いてきて、後から観て良かったなぁ~と感動出来る作品でした。珍しい映画でして、2018年に作って5年越しで公開されました。小さい集団が集まりインディーズとして動いてきたので、メジャー路線には乗っていませんが、良い味が出ています。雰囲気が良いし、気持ちが伝わってくるような内容でした。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「東京ランドマーク」