「密輸 1970」
を観てきました。Fan’s Voiceさんの独占最速試写会が当たり観せていただきました。(@fansvoicejp)
ストーリーは、
1970年代半ば。韓国の漁村クンチョンでは海が汚染され、海女たちは失業の危機に瀕していた。ジンスクは仲間たちの生活を守るため、海底から密輸品を引きあげる仕事を請け負う。しかし作業中に税関の摘発に遭ってジンスクは逮捕され、親友チュンジャだけが現場から逃亡する。そして2年後。
というお話です。
1970年代半ば、韓国の漁村クンチョン。海が化学工場の廃棄物で汚染され、魚介類は死ぬか汚染されてしまい売り物にならなくなってしまい、地元の海女さんチームは失職の危機に直面してしまう。
リーダーのジンスクは仲間の生活を守るため、海底から密輸品を引き上げるという裏の仕事を請け負うことにする。1971年から韓国からの要請で日本が公民合わせて7200億ドルの融資を行い韓国も裕福になりつつあった。
1970年代後半には日本との貿易自由化が始まるが、半ばはまだ日本からは自由に物を輸入出来ず、お金はあるが物が無い時代が続き、密輸でも良いから海外の商品を買いたいという需要が増えていたのだ。
ところが海底から荷物を引き上げる作業中に税関の摘発に遭い、ジンスクは刑務所送りとなり、父親と兄が死亡する。彼女の親友チュンジャだけが現場から逃亡した。
その2年後、ソウルからクンチョンに舞い戻ってきたチュンジャは、出所したジンスクに新たな密輸のもうけ話を持ちかけるが、ジンスクはチュンジャへの不信感を拭えない。
密輸王クォン、チンピラのドリ、税関のジャンチュンの思惑が絡むなか、苦境に陥った海女さんチームは人生の再起を懸けた大勝負に身を投じていくのだった。後は、映画を観てくださいね。
この時代の韓国って日本からのお金で経済成長し、近代化が急速に進んだので、汚染水などで海が汚れていたんです。日本は韓国より10年くらい早く近代化で公害問題が沢山出たんじゃないかな。なので、この映画の中はすんごい昭和っぽい雰囲気で、演歌的なものがずっと流れていたりするんです。ちょうどチョー・ヨンピルとかが歌ってた時代なんじゃないかな。
私が知っている昭和より古い感じかなぁ。今から55年くらい前ですから、65歳以上の方は少し雰囲気が解るのかなと思います。なんか、ビートルズが来ていたようなチェックのジャケットとか、おかっぱ頭とか、ファラフォーセットのようなふわふわした頭の女性とか、レトロで素敵なファッションが沢山出てきて、面白いなぁと楽しめました。
主演の女優2人がすんごくカッコいいんですよ。キム・ヘスさんとヨム・ジョンアさんなのですが、お二人とも50代なのに若々しくて妖艶でビックリしちゃいます。こんなカッコいい年の取り方をしたいなぁ。陸でもアクションで活躍しますが、水の中で殺しに来た男たちと闘うって凄いでしょ。スタントの人もいるんだろうけど、海女さんの役なので水の中での動きが普通の人と全然違うんです。練習したんだろうなぁ。
もちろんアクション以外も面白いですよ。この時代の騙し騙されの攻防で、どれだけ先に情報を手に入れて準備が出来るかで勝負が決まってくるんです。それに身内だと思っていたら酷い裏切り者だったり、一番悪い奴かと思っていたら凄くイイ奴だったりするんですよ。その入れ替わりが面白かったな。
この映画の面白いところは、親友だった主人公の2人が密輸事件に関わったことで別れることになってしまい、ひとりは刑務所に入れられ、ひとりは逃げて手広く密輸で儲けていて、2年後に再会したところから本当の戦いが始まります。
刑務所に入ったジンスクは、何故自分たちの船が税関に見つかり逮捕されることになったのかと考え、誰かが裏切って密告したことにたどり着きます。でも、誰が密告したか解らないんです。状況からみると、一人だけ逃げられたチュンジャが怪しいですよね。ジンスクはストレートにチュンジャが密告したんじゃないかと疑います。そして彼女を信用出来なくなります。
2年後にジンスクの前に現れたチュンジャは、羽振りが良く都会的になっているんです。もっと怪しく見えちゃうよね。でも、実はというのが良かったな。男の友情より女の友情の方が、思いが深いような気がしました。最後の方、感動作になっていました。泣けましたよ。
この映画を観る時、この1970年代が韓国にとって目まぐるしく変わった時期だと知ってから観た方が、面白さが倍増すると思います。何故、こんなに密輸が横行していたのか。何故、誰もがお金に群がっていたのか。その前の10年はまだまだ貧困で近代化も進んでいなかったのに、米国からの資金にプラスして日本の資金が入ってくることになるんです。
それに田中角栄という政治家が中国との国交正常化をうたって精力的に動いていて、韓国は中国と日本が仲良くなってしまうと北朝鮮との関係がどうなるのかと心配していて、それで日本ともあーだこーだとあったのだと思います。そんな国の動きの裏で、密輸をすると儲かるということが解りバンバンやっていたと思うんです。だって、荷物の中に日本のテレビとか、色々と入ってましたもん。
そんな密輸の王であるクォン軍曹、いや社長がカッコ良かったなぁ。ベトナム戦争から帰ってきてから密輸を始め、釜山の港での密輸を彼が掌握したんだけど、取り締まりが強化されて、他の港を探していてチュンジャと出会って、彼女と仕事を始めるんです。
最初は冷たい男で、チュンジャは殺されそうになったりするんだけど、いざとなると女性はちゃんと守ってくれるし、優しいしイケメンなのよ。やっぱり大きな力を手に入れる人は、どこか芯があって筋が通った事をするんです。見直しました。
この時代は1ドルが360円だったんですよ。それが1ドル240円くらいに落ちてきてということなので、韓国へ日本が資金を入れたのがどれくらい凄い金額か解りますよね。そりゃ、韓国も経済成長しますよねぇ。資金提供なので、ほとんど返してもらってないんですから。それを考えると密輸でダイヤとか金塊を動かしていたのも納得いくでしょ。
いくらでも感想が書けちゃうけど、とりあえずこの辺でまとめようかな。この映画、面白いです。より楽しみたいと思ったら、韓国の1970年代付近の歴史を調べてから観ると、映像に出てくる大きな工場だったり、賄賂天国だったりする背景が解ると思います。きっとこの後、海女さんたちも幸せになれたと思いますよ。
私はこの映画、お薦めしたいと思います。先に歴史をサラッと勉強してから観ていたら、超を付けれたと思うんだけど、観た後に歴史を知ったのでとっても残念でした。それでも面白かったですよ。凄く楽しめて、笑って泣けました。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「密輸 1970」