「湖の女たち」
を観てきました。
ストーリーは、
湖畔に建つ介護施設で、100歳の老人が何者かに殺害された。人工呼吸器が外されたのだ。通常なら外れた途端に緊急音が鳴るのだが、誰かが故意に止めたらしい。これは事故ではなく殺人だと断定されたのだ。
事件の捜査を担当する西湖署の若手刑事・濱中圭介とベテラン刑事・伊佐美佑は、施設関係者の中から容疑者を挙げて執拗に取り調べを行なっていく。介護士と看護師が容疑者と考えられ、伊佐美は1人の介護士に容疑を絞り、追い詰めていく。
事件が混迷を極めるなか、圭介は捜査で出会った介護士・豊田佳代に対して歪んだ支配欲を抱くように。事件のあった明け方、仕事を抜け出して湖の近くで自慰行為をしている豊田を圭介は見つけ、その時から気になっていたのだった。
一方、事件を追う週刊誌記者・池田由季は、この殺人事件と署が隠蔽してきたある薬害事件に関係があることを突き止めていくが、捜査の先に浮かび上がったのは過去から隠蔽されてきた恐るべき真実。それは、我々の想像を超えた過去の闇を引き摺り出すものだった。そして現代に起きている恐ろしい過去とのリンクも見つけることとなる。
もう一つ、後戻りできない欲望に目覚めてしまった、刑事の男と容疑者の女の行方とは。後は、映画を観てくださいね。
この映画、吉田修一先生の原作を映画化したものです。私は原作を読んでいないのですが、原作通りなのかしら。吉田先生の作品は、”悪人”や”怒り”、”横道世之介””パレード”などなど多く映画化されていますよね。私は好きな作品が多いんです。でも、この映画は難しかったかな。
ある介護施設で老人が死ぬのですが、殺人のようだということが解り、容疑者を探し始めるんです。強引な取り調べで介護士を無理やりに犯人にしようとしたりするのですが、伊佐美が強引すぎて何かあるのかなと思うと、昔の因縁が出てくるんです。
20年前に薬害事件があり沢山の被害者が出ていて、伊佐美はその事件をあと一歩まで追い詰めるのですが、当時の厚生大臣によりもみ消され捜査は打ち切りとなってしまいます。伊佐美は荒れて、その時から強引な捜査をするようになったようでした。
その薬害事件を現在追っている池田という記者がある写真を見つけます。今回殺された老人・京大教授だった市島と医療法人の会長と銀行頭取が写っており、3人は戦時中に731部隊に所属しており非人道的な生体実験などを行っていたらしいんです。その流れから、この薬害事件が起こっていたようでした。
ということは復讐の為に老人を殺したのかというと、それは違います。今回の事件はまったく違うところで起こっていたのですが、因縁めいているんです。過去にハルピンに住んでいた市島たちはそこで実験を行っていたのですが、それを少年たちが覗いていて、父親たちを真似して白衣を着て実験と言って男女の子供を殺したという事件がありました。市島の妻はそれにいち早く気が付いたようで、池田に話してくれたんです。
大人の行動や言葉は子供に影響し、大人は経験から分別があるけど子供は素直に受け取って、それをそのまま実行してしまう。それがいつの時代でも、どんな場所でも行われ続けているのだということが描かれていました。大人が正しいことをしなければ、此の世は暗黒になってしまう。どんなに綺麗ごとを言ったって、子供の目には真実が写ってしまうんです。
「生産性が無い人間は生きる価値が無い。」という言葉が出てくるのですが、きっと介護士たちが話していたのを子供たちが聞いていたのでしょうね。この言葉「やまゆり園事件」を思い出しました。本当のところ、私にも解りません。
生産性って何なんでしょう。そこに居てくれるだけで私も生きられるという人が隣に居たなら、その老人は生きる為の糧を与えている=生産性があるとはならないんだろうか。たとえ寝たきりでも生きているなら年金が貰えるとかもあるかもしれない。他人にとっては生産性は無いように見えるけど、家族には生産性がありますよね。一概に寝たきりだから、意識が無いから、理解出来ていないからといって、生産性が無いと決めつけることは出来ないと思うのですけど。難しい話です。
一方、圭介は捜査上で溜まったストレスを、佳代を弄ぶことで解消していきます。佳代はそれまで父親と暮らしており父親の為に生きていたのですが、父親が再婚することになり家を出ていき、生きる意味を失くしていたんです。そこへ圭介が現れ、彼の命令に従うことで生きる意味を見つけるんです。
二人の関係は歪んでいて、私には理解不能でした。佳代は命令されることで何も考えずに生きられると感じていたようでした。圭介は自分の思い通りに動く佳代がいることで、自分の思い通りに進まない周りの状態を緩和しているように見えました。
老人の殺人事件と薬害事件、戦時中の731部隊の人体実験についてはミステリーで面白い構成になっていると思いましたが、そこに絡んでくる圭介と佳代の異様な関係は、よく理解が出来ませんでした。
もしかしたら、命令される方が楽だということが、実は戦時中に人体実験をしてしまった人々や、血液製剤が悪いと解っていてもそのまま患者に使い続けた薬害事件にかかわった人々、誰もが言われるがまま従ったままにやったことで責任は無いと言いたいのかな。いやいや、それは責任ありますからね。それを命令した人間にも責任はありますけど、行った人にだって責任はありますから。拒めばよかっただけなんです。ま、拒んだら殺されていたのかもしれませんが。
演じられていた俳優さんたちは、それぞれに良いのですが、ストーリーを追うので精一杯で、俳優さんの良い部分を観ている暇がありませんでした。ごめんなさい。
うーん、私はこの映画、お薦めしたいと思います。話がどう繋がっているのか、理解するのがとても難しい映画でした。原作を読めば解るのかしら。人間の業というか、性質というか、そういうドロドロした部分を描いていたような気がします。難しいけど、私は面白いなぁと思いました。この感想を書きながらも、色々と考察が出てきてしまうほどでした。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「湖の女たち」